朝日新聞 2014年04月09日
ウクライナ緊迫 ロシアは介入をやめよ
ロシアは緊張をあおる愚行を繰り返してはならない。
ウクライナ東部で不穏な動きが強まっている。親ロシア派勢力が州政府庁舎などを占拠し、ロシア編入を叫んでいる。
クリミア半島がロシアに併合された時と同じ構図である。一方的に「共和国」設立まで宣言した州もある。
実態には不明な点も多い。だが、ロシアがウクライナの暫定政権に圧力をかけ続けているのは事実だ。
軍事衝突すら誘引しかねない情勢に陥りつつある。ロシアは事態を悪化させる介入行動から手を引くべきである。
ロシアによる締めつけは露骨に強められている。経済面では天然ガスの大幅な値上げを通告した。国境には引き続き大規模な軍部隊を展開している。
東部3州で親ロシア派の分離独立活動が激化しているのは、そうしたロシアの後ろ盾があることが深く関係している。
暫定政権は今のところ冷静な姿勢を保っている。だが、親ロシア派勢力にロシアの平和維持部隊派遣を求める動きもあることは深刻な懸念材料だろう。
このまま混乱が深まれば、ロシア軍によるウクライナ領への侵攻も現実味を帯びる。
ロシアは早急に軍部隊を撤収させねばならない。プーチン政権は、東部の分離独立の動きを支持しないことを明確に打ち出す必要がある。それがなければ事態は沈静化できない。
ロシアは、東部に多いロシア語を母語とする住民の権利擁護と、多くの権限を東部に与える「連邦化」などを求めている。だが、それを決めるのは、あくまでウクライナ国民自身だ。
新たなリーダーを決める大統領選は5月に予定されている。むしろロシアは、その公正な実施を米欧とともに保証し、正統性をそなえた政権を誕生させることに努めるべきだろう。
ウクライナ側の責任も重い。東西和解の課題に加え、700億ドル以上もの政府債務を抱え、経済は破綻(はたん)の瀬戸際にある。
国際通貨基金(IMF)などの支援は決まったが、公務員給与の引き下げなど痛みを伴う改革を断行できるか。さらなる混乱の火種は尽きない。
米国と欧州連合(EU)は、ロシアとウクライナを含む4者会談の開催を探っている。外交交渉に時間の余裕はない。
クリミアに続き、東部まで領土が侵される事態となれば、世界の安保秩序はいよいよ不安定化する。それは国内に深刻な分離独立問題を抱えてきたロシアにも不安を生むはずだ。
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毎日新聞 2014年04月09日
ウクライナ混乱 ロシアは介入自制せよ
ウクライナで、ロシアによるクリミア半島の一方的な編入に続き、新たな混乱の種が浮上した。ロシア系住民が多い東部3州で親ロシア勢力が州政府庁舎などを占拠し、うち2州では独自の「共和国」創設が宣言された。2月の政変で権力を握った中央の親欧米派政権に揺さぶりをかけ、5月25日に予定される大統領選を阻止したい狙いが感じられる。
だがウクライナが正常化に踏み出すためには大統領選の実施が不可欠だ。そのためにも政権は、国際監視団と協力して混乱の拡大阻止に全力を挙げてほしい。
トゥルチノフ大統領代行ら現政権は、政変でヤヌコビッチ前大統領を解任した旧野党勢力が中核だ。政変には過激な反露ウクライナ民族主義勢力も加わった。このためロシアは「非合法な権力奪取」だとして政権の正統性を認めていない。だが大統領選を経て新政権が発足すれば、ロシアの立場は苦しくなる。
大統領選はポロシェンコ元外相、ティモシェンコ元首相ら親欧米派の候補が有力だ。このためロシアは、東部のロシア系住民の声を反映させる仕組みとして、ウクライナの国家体制を連邦制にして地方の発言権を強化するよう提起し、大統領選の前に憲法を改正して連邦制を導入すべきだと主張している。ウクライナの軍事的中立の確約も求めている。
ロシアの懸念は、親欧米派が政権を握ったウクライナが米主導の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)加盟へと動くことだ。中立の約束と連邦制の導入は、それに歯止めをかける「保証」とも言える。
しかし、こうした国家の基本方針はあくまでウクライナの国民が決める問題だという大前提を忘れてはならない。ウクライナの国家主権を無視して、その命運を頭越しに決めようとするのは時代錯誤だ。
ロシアはウクライナ東部との国境地帯に軍を集結させ、混乱が拡大すれば介入も辞さない姿勢で圧力をかけている。これでは国際社会の懸念は高まるばかりだ。ロシアには迅速な軍撤収と介入自制を求めたい。
ウクライナの現政権や欧米など国際社会にも、東部のロシア系住民の不安に注意を払ってこなかった責任はある。同じ国民としてその声を国政に反映させる配慮が必要だ。
破綻寸前の財政再建や汚職撲滅などウクライナの課題は山積だ。過激な民族主義勢力の暴走を抑え込む必要もある。
だが、まずは国民の意思を反映した新政権作りから始めなければならない。かじ取りを誤って国が分裂するような事態になれば、欧州のみならず大きな紛争の火種を抱えることになりかねない。
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読売新聞 2014年04月17日
ウクライナ緊迫 露は軍事的圧力を強めるな
ウクライナ情勢が極めて緊迫してきた。混乱の拡大を阻止できるかどうか、重大な局面だ。
ウクライナ暫定政府は親ロシア派武装勢力が地方政府や警察の庁舎などを次々と違法に占拠している東部に軍を投入し、武装勢力の強制排除に乗り出した。まず、ドネツク州の空港を奪還した。
暫定政府による軍の治安維持活動は初めてである。ロシアが南部クリミア半島を編入した際、暫定政府は軍の行動を自制したが、東部での混乱をもはや放置できないと判断したのだろう。
親露派は、東部各地で違法占拠を拡大し、「人民共和国」樹立を宣言するなど、暫定政府に反旗を翻している。
暫定政府が強制排除を国家分裂を防ぐための「反テロ作戦」と位置づけたのはやむを得まい。
米国政府も「暫定政府は法と秩序を守る責任がある」と表明した。東部が無政府状態になることを懸念したからだろう。
これに対し、プーチン露大統領はメルケル独首相との電話会談で「ウクライナは内戦の瀬戸際だ」と述べ、暫定政府を批判した。
だが、混乱を招いた最大の要因は、ロシア自身にある。クリミア編入と同様、親露派武装勢力による一連の行動にロシアが関与しているとみられるからだ。
親露派はロシア製の武器を携行し、組織立って行動している。米国政府は、ウクライナ国内でロシア情報機関要員が拘束されるなど、ロシア関与を裏付ける「証拠」も公表した。
ロシアが東部との国境沿いに、数万人規模の軍部隊を集結させている事実も確認された。
ロシア政府は、一貫して関与を否定しているが、それらの部隊を撤収し、軍事的緊張緩和に努力するのが先決と言える。
混乱を沈静化させるには、欧米など国際社会が経済制裁を始めとする非軍事的手段でロシアへの圧力を高めることが肝要だ。
暫定政府が戦闘ヘリコプターのエンジンなど武器関連製品の対ロシア輸出停止の方針を決めたのも、圧力の一環となる。
ラブロフ露外相は訪中し、15日に習近平国家主席らと協調関係を確認した。国際的孤立を回避し、米欧からの圧力に対抗する狙いがあるのだろう。
ジュネーブでは17日に米国、欧州連合(EU)、暫定政府にロシアを加えた4者会談が行われる予定だ。協議開始を事態打開の一歩としなければならない。
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産経新聞 2014年04月17日
ウクライナ緊迫 露への圧力強化で結束を
ウクライナ暫定政権が、東部各地で州庁舎や警察署などを占拠している親ロシア武装勢力の強制排除に着手した。
武装勢力は拠点を増やし、混乱を拡大させている。秩序回復のため、やむを得ない軍事行動といえるだろう。
ロシアのプーチン政権は、空港奪還作戦で武装勢力側に死傷者が出たとし、「内戦の瀬戸際だ」と暫定政権を強く非難した。
ロシアは国境地帯に大規模な兵力を張り付けている。強制排除を口実とする軍事介入は、絶対にあってはならない。
米欧をはじめとする国際社会はロシアに対し、経済制裁の強化などで「力を背景とする現状の変更は許さない」という明確な意思を結束して伝えるべきだ。
米政府は、武装勢力の背後にロシアがいると度々批判してきた。パワー米国連大使は「このような組織的でプロフェッショナルな軍事行動ができるのはロシアだけだ」と指摘した。
17日には、スイス・ジュネーブで米露と欧州連合(EU)、暫定政権による外相級の4者協議が予定されている。「内戦の瀬戸際」を脱するためになすべきは、プーチン政権が東部の親ロシア住民への扇動をやめ、武装勢力を撤収させることだ。
ウクライナ南部のクリミア半島を「併合」以前の状態に戻すようロシアに要求することも忘れてはならない。クリミア併合は国際秩序への重大な挑戦だ。断じて容認できない。
米欧は渡航禁止や資産凍結の対象拡大に加え、エネルギー、鉱物資源、防衛、金融分野など、露経済の主要部門への制裁を具体的に示し、一層の圧力とすべきだ。
気がかりなのは、プーチン政権がエネルギー供給でロシアへの依存度が高い欧州を揺さぶっていることだ。
ウクライナ向けガスの供給停止の示唆は、その先にある欧州への牽制(けんせい)に他ならない。
そうした経済的報復も視野に入れ、覚悟をもって制裁強化に踏み切るべきときだ。経済制裁に効果をもたらすのは、国際社会の強固な結束である。
岸田文雄外相は今月末、訪露を予定している。米欧による制裁と協調し、日本の立場を明確にするためにも、この時期の訪露の中止も含めて検討すべきだろう。
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