農業とエネルギー分野の大国である豪州との間で、高いレベルの貿易や投資の自由化を実現する意義は大きい。
安倍首相とアボット豪首相の首脳会談で、7年に及ぶ日豪経済連携協定(EPA)交渉がようやく大筋合意した。
日本が豪州産牛肉に課している輸入関税を現行38・5%から20%程度に引き下げる。豪州は日本車に対する関税5%を撤廃する。これが最大の柱である。
加工用に使う冷凍牛肉を18年かけて19%台に下げる一方、国産と競合しやすい冷蔵牛肉は15年で23%台にするという。
合意に至った背景には、日本の輸入牛肉のうち、約5割のシェアを持つ豪州産を約3割の米国産が追い上げている事情がある。
豪州は米国との競争を有利にしようと、関税撤廃は日本に求めず、長期間での引き下げも容認した。合意を優先したのだろう。
日本の消費者はより安価な豪州産牛肉を購入できるようになる。豪州は米国に次ぐ日本車の輸出先であり、車の関税撤廃は日本メーカーに追い風と言える。
焦点は、今回の合意が、難航している環太平洋経済連携協定(TPP)交渉にどんな影響を与えるかである。強硬姿勢を続ける米国との交渉を加速し、膠着状態を打破するきっかけにすべきだ。
今月下旬のオバマ大統領来日に向けて、日米協議が再開した。甘利TPP相とフロマン米通商代表が9日から東京で協議する。
自民党がコメ、牛肉・豚肉など重要5項目を関税撤廃の例外扱いとするよう求めている問題では、米国は撤廃を主張して強硬だ。
TPPは自由貿易推進でアジアの成長に弾みを付ける狙いがある。日本は日豪合意に安堵せず、一層の市場開放へ、米国と現実的な妥協点を探らねばならない。
日豪両首脳は、防衛装備品の共同開発について交渉を開始することで合意した。まずは、船舶の流体力学分野に関して共同研究を進めることになった。
ともに米国を同盟国とする両国が安全保障分野で協力を深めることは、アジア太平洋地域全体の安定にも寄与すると評価できる。
新しい「防衛装備移転3原則」を踏まえ、防衛技術の向上や開発費の抑制にもつなげたい。
安倍首相は今回、国家安全保障会議(日本版NSC)の特別会合にアボット首相を招いた。首脳同士の信頼関係を醸成することは、日豪や日米豪の安保協力をより強固なものにするだろう。
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