毎日新聞 2014年04月03日
渡辺氏の8億円 開き直りは許されない
まるで裸の王様である。みんなの党の渡辺喜美代表が化粧品会社会長から8億円を借り入れていた問題をめぐり、与野党から批判や説明を求める声が広がっている。
巨額のカネの流れを十分説明しない段階で「一点の曇りもない」と言い切り、責任論を否定する渡辺氏の姿勢は到底、理解できない。納得がいく説明ができないようでは、政治家としてのけじめが問われる。
「理不尽なスケープゴート祭りは必ず、潮目が変わる」「騒動の本質は江田憲司氏の結いの党が仕掛けた権力抗争」。この問題があたかも謀略まがいの政争によるものだとして渡辺氏が公表したコメントからは、開き直りすら感じられる。
「ディーエイチシー(DHC)」の吉田嘉明会長が借入金を公表して以来、波紋は広がるばかりだ。吉田氏によると、同氏は渡辺氏からの申し出で、2010年の参院選前に3億円、12年の衆院選前に5億円を渡辺氏の個人口座に振り込んだ。
これまでの渡辺氏の説明はつまるところ8億円は「純粋に個人として借りた」との主張に尽きている。だが、吉田氏は先の衆院選前、渡辺氏が選挙情勢を説明しつつ融資を依頼したメールを公表、選挙資金目当ての借金だったと断言している。
渡辺氏が言う「党首が個人の活動に使った」とは何を指すのか。党への貸し付け以外、「酉(とり)の市の熊手」くらいしか具体的に言及しないようではとても疑念はぬぐえまい。
渡辺氏は「(吉田氏へのメールが)本物であったとしても法律違反は生じない」とも主張する。党首の活動に絡み、8億円ものカネが公にされず動いていたこと自体が不信を招いているのだ。公職選挙法や政治資金規正法違反にあたらないと言い張るのなら、なおのこと借入金の性格や使い道の詳細な説明が必要だ。
党の体質もますます問われる。江口克彦最高顧問が代表辞任を要求したのが目立つくらいで、渡辺氏の責任を問う声はそれほど広がっていないようだ。まともな党運営ができるとも思えない状況で「だんまり」を決め込むようでは、渡辺氏の「私党」状態を認めるようなものだ。
昨年の臨時国会で渡辺氏は特定秘密保護法をめぐり安倍晋三首相との会食の席で修正案を持ちだし合意に走るなど党の亀裂を広げ、分裂に発展した。トップダウンというより、ワンマン運営で周囲が見えなくなっているのではないか。
既成勢力と一線を引き、しがらみのない改革を実現するのが党の原点だったはずだ。これでは政治全体の信用に関わる。党として責任ある対応はもちろん、与野党も国会での実態解明に動くべきだ。
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読売新聞 2014年04月05日
渡辺氏の8億円 「策略」とは論点のすり替えだ
公党の党首としての自覚を欠いているのではないか。8億円の借入金問題で責任逃れのような態度を続ける、みんなの党の渡辺代表のことだ。
化粧品製造販売会社の会長から参院選直前に3億円、衆院選の直前に5億円を借り、使途に疑惑が持たれていながら、「体調不良」を理由に国会にも姿を見せず、説明を拒んでいる。
渡辺氏が党に提出した文書で「問題の本質は権力闘争だ」と指摘し、離党した江田憲司・結いの党代表による「策略」だと主張していることも理解しがたい。
問題を歪曲し、論点をすり替えようとする姿勢は見苦しい。
渡辺氏は、3月27日の記者会見で、借入金は選挙資金や政治資金に使わず、会議費や旅費などに充てたと弁明した。「酉の市で大きい熊手を買った」とも語った。
その後、文書で「個人の政治活動、議員活動に使った」と微妙に説明を変えたのはなぜなのか。
会社会長は、衆院選直前に渡辺氏から、選挙情勢の説明に続けて融資を求めるメールが届いた、と証言している。この点も渡辺氏は十分語っていない。
選挙に使ったのなら、公職選挙法に触れる。そのため、言い逃れを重ねているように見える。
みんなの党の江口克彦最高顧問や数人の若手議員が代表辞任を求めているのもうなずける。このままでは、来春の統一地方選を戦えないという危機感もあろう。
浅尾幹事長ら党執行部は借入金の使途について党内で調査するとしている。だが、身内による調査で、説得力のある結果が出るかどうかは疑問だ。
年間20億円余の政党交付金を受け取る公党の党首である。渡辺氏は自ら進んで衆院政治倫理審査会で弁明してはどうか。
こうした構図は、猪瀬直樹・前東京都知事の公選法違反事件と極めて似ている。猪瀬氏は、都知事選の前に「徳洲会」側から5000万円を受け取ったことに関し、「選挙資金でなく、個人的な借り入れだ」と主張していた。
ところが、東京地検の取り調べに前言を翻し、「選挙資金の側面もあった」と認めた。虚偽の説明を繰り返して、都民や都議会を欺き続けた猪瀬氏の罪は、50万円の罰金だけで済まされるのか。
略式起訴のため、法廷で公判が開かれず、事件の経緯や背景が判明しなかったのも残念だ。
政治とカネの問題で透明性をいかに高めるか。政党や政治家が真剣に取り組むべき課題である。
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