習氏南京発言 事実をもって反論重ねよ

読売新聞 2014年04月01日

習氏「南京」発言 一方的な主張は看過できない

中国の習近平国家主席が、日中で見解の異なる歴史問題を巡り、自らの一方的主張を客観的事実であるかのように第三国で訴えた。看過できない行為である。

習氏はドイツでの講演で、旧日本軍による1937年の南京事件について、「30万人以上が虐殺された」と述べた。中国政府の主張する数字だけを示して、中国の「被害者」としての立場を国際社会に強調したものだ。

日本政府は、南京事件で非戦闘員の殺害などがあったことを認めている。だが、犠牲者数の確定は難しいとしている。

習氏の発言は、こうした日本の立場を無視しており、日本のイメージダウンを狙ったプロパガンダと言われても仕方あるまい。

菅官房長官が「(南京事件の)犠牲者数などで意見が分かれている中、中国の指導者が第三国で、あのような発言をしたことは極めて非生産的だ」と批判したのは、当然である。

日本では、中国政府の言う「30万人以上」は、当時の南京の人口動態などから、実際の犠牲者数とはかけ離れているのではないかとの見方が支配的だ。

日中両政府の合意で発足した日中歴史共同研究委員会が2010年に発表した報告書でも、日本側は「20万人を上限として、4万人、2万人などの様々な推計がなされている」と指摘している。

南京事件当時、避難民を保護したとして、習氏から称賛されたドイツ人ジョン・ラーベ氏も、ヒトラーへの上申書に、犠牲者は「5万~6万人」と記している。

習氏は「日本軍国主義による侵略戦争で中国人3500万人以上が死傷した」とも述べたが、明確なり所は示されていない。

習氏の強硬姿勢は、反日的言動を繰り返し、対日関係を悪化させた、かつての江沢民国家主席を上回るものと言えよう。

今回、ドイツ政府は、習氏のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念碑への訪問を断ったと伝えられている。日中間の対立に巻き込まれることを警戒したのだろう。

歴史認識に関する誤った情報が国際社会に流布するのは阻止せねばならない。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は最近、安倍首相が南京事件は起きなかったと主張しているとの社説を掲載した。

こうした誤解を広めないためにも、日本政府は、歴史認識問題への真摯しんしな姿勢をアピールするとともに、中国の反日宣伝に毅然きぜんと反論し続けることが肝要だ。

産経新聞 2014年04月01日

習氏南京発言 事実をもって反論重ねよ

中国の習近平国家主席が訪問先ドイツでの講演で、「日本の軍国主義により3500万人の中国人死傷者が出た」とし、南京事件の犠牲者についても「30万人以上」と誇大な数字を並べ立て、日本を激しく批判した。

いわれなき非難であり、断じて受け入れられない。菅義偉官房長官が「第三国でこのような発言をするのは極めて遺憾だ」と中国に対し抗議したのは、当然である。

南京事件は昭和12(1937)年暮れから13年にかけ、旧日本軍が南京で多くの中国軍捕虜や市民を殺害したとされる事件だ。

習氏は独政治家、外交官を前に事件に関し「(旧日本軍が)30万人以上の兵士や民間人を殺害する凶悪な罪を犯した」と述べた。

だが、日本側の研究や調査により、「南京大虐殺」は中国の一方的な宣伝にすぎず、あり得なかったことだと判明している。

「3500万人」も、反日教育を推進した江沢民元国家主席が、1995年にモスクワで行った演説で言い出した数字である。

中国軍事博物館はそれ以前、中国軍民死傷者を「2168万人」としていた。数字を根拠なく膨らませて日本を不当に貶(おとし)める政治宣伝は、絶対に許せない。

習氏は今回、ベルリンのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念施設訪問を打診し、ドイツ側に拒否されたという。誤った日独比較に基づき日本をやり玉に挙げようとしたのだろうが、ナチスの過去を蒸し返されたくないという訪問先の迷惑すら顧みなかったのか。

習氏の批判に対し、外務省は翌日、在京中国大使館に抗議を申し入れたが、今後も不当な非難には、決して看過することなく反論を重ねていってほしい。

自民党は中韓両国による反日宣伝に対抗する組織を立ち上げる。政府全体の情報発信を統括する組織や在外拠点強化の検討など攻めの対外発信は待ったなしだ。

史明徳駐ドイツ中国大使はこの1月、独主要紙への寄稿で、「日本の軍国主義は戦後秩序への明白な挑戦だ」と述べた。中根猛駐独日本大使が「中国側の軍拡や東、南シナ海での行為こそが現状への挑戦で、周辺国の懸念」と反論したように、戦後秩序を崩そうとしているのは中国の方である。

ゆえなき批判には客観的な事実をもって逐一、即座に反論していく。それに勝る対抗策はない。

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