渡辺代表に8億円 党の存在が問われる

毎日新聞 2014年03月28日

渡辺代表に8億円 党の存在が問われる

みんなの党の渡辺喜美代表が8億円もの巨額資金を大手化粧品会社会長から借り入れていた問題が発覚した。渡辺氏は「個人的な借り入れで違法性の認識は持ってない」と語っているが、説明は不十分だ。

かねてみんなの党は「渡辺氏の個人商店」と指摘されてきた。だが、今回は渡辺氏だけの問題にとどまらない。党の財政はどう運営されてきたのか。政党としての存在自体が問われる事態である。そんな自覚も乏しいように思われる。

「ディーエイチシー(DHC)」の吉田嘉明会長によれば、借金は渡辺氏からの申し出で、2010年の参院選前に3億円、12年の衆院選前に5億円を渡辺氏の個人口座に振り込んだ。一部は返済されたが、約5億5000万円が未返済という。

吉田会長は12年の衆院選前、みんなの党が日本維新の会との選挙協力を模索していた時期に渡辺氏が「20億円必要だ」と要請してきたとも証言し、「選挙資金以外の使い道はあり得ない」と語っている。

渡辺氏の選挙運動費用収支報告書や政治資金収支報告書には、この8億円の記載はない。このため借入金であっても、選挙活動に使われていれば公職選挙法の、政治活動用であれば政治資金規正法の違反(虚偽記載)にあたる可能性がある。

東京都の猪瀬直樹前知事が医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った問題を思い出す人も多いだろう。猪瀬氏も「個人の借り入れ」と釈明したが、説得力を著しく欠き、辞職に追い込まれた。

渡辺氏は27日、衆院に提出した資産報告書に記載した借入金の額と食い違っている点は「事務的ミスだ」と訂正する考えを示した。ただし資産報告書の記載に関しては罰則規定はない。同時に代表辞任は否定し、説明を尽くすのが責任だとも語った。選挙資金や政治資金ではないというのなら、個人的に何にどう使ったのか、どう返済してきたのか、もっと具体的に説明する必要がある。

渡辺氏にはみんなの党は自分ひとりでスタートさせたというオーナー意識があるようだ。昨年末には江田憲司前幹事長らが大量離党し、結いの党を結成した。安倍政権と急接近する渡辺氏との路線争いだけでなく、政党交付金をはじめ党資金を渡辺氏が差配している不満が分裂の背景にあったといわれる。

分裂後、ますます「個人商店」になってしまったのだろうか。みんなの党の中からは「もっと説明を」との声は出ているが、真相の究明や代表としての責任を求める意見がほとんど聞こえてこないのも理解に苦しむ。これでは「公党」ではなく「私党」といわれても仕方がない。

産経新聞 2014年03月29日

渡辺氏に8億円 まず熊手を見せてほしい

8億円は大金である。参院選直前に3億円、衆院選直前に5億円を借り入れたが、選挙資金ではない。約5億5千万円が未返済だが、借入金は「手元に残っていない」といい、使い道は「もろもろ」なのだそうだ。

具体的に挙げた一例は「酉の市でかなり大きな熊手を買った」。この説明は、国民を愚弄していないか。どれほど高価で大きな熊手であったのか、見てみたいものだ。

みんなの党の渡辺喜美代表が化粧品会社会長から巨額資金を借り入れていたことが明らかになり、「個人的借り入れで違法性の認識はない」と釈明した。一方の会社会長は「選挙資金として貸した」と明言している。5億円については借用書もない。

選挙運動費用、政治資金収支報告書に8億円の記載はなく、公職選挙法や政治資金規正法に抵触する可能性がある。資産報告書の借入金残高も食い違っているのは「事務的ミス」なのだという。いちいち、納得がいかない。熊手代を含む8億円の使途を正確につまびらかにすることが必要だ。

猪瀬直樹前東京都知事が知事選を前に医療法人徳洲会側から現金5千万円を受領し、辞職に追い込まれた事件と構図は酷似し、金額は実に16倍である。

東京地検は28日、猪瀬氏を公選法違反(収支報告書の不記載)の罪で略式起訴した。猪瀬氏は現金の趣旨が選挙資金であったことを大筋で認め、公判が開かれることはない。不起訴処分の事案ではないため、検察審査会への審査申し立て対象にもならない。

それでは、都政を長期に混乱させた、あの弁明は何だったのか。現金受領が明らかになって以降、都議会などで、時に大汗をかきながら「生活不安のため個人的に借り入れたもので、選挙資金ではない」と繰り返した。

しどろもどろの弁明に終始する間、都政も、2020年東京五輪の準備も立ち往生した。

事件の幕引きを図るために一転して容疑を認めたのであれば、政治家の言葉はあまりに軽い。

主張が正しいと信じるのであれば公判で争うべきだし、言を百八十度翻すのなら、都民にきちんと説明すべきだ。

渡辺氏にも、重い説明責任がある。8億円について誰もが納得できる説明ができなければ、公党の代表者である資格はない。

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