巨大地震・津波対策は待ったなしだ。自治体が本腰を入れて取り組む一歩としたい。
南海トラフ巨大地震、首都直下地震について、中央防災会議は、対策を強化する地域として、32都府県の延べ1017市区町村を指定した。
南海トラフ地震では、死者が30万人以上、被害額は200兆円超と予測されている。首都直下地震の死者は2万人以上とされ、首都機能の維持が危ぶまれている。防災・減災対策は、日本の根幹に関わる重要課題と言えよう。
対象の市区町村は、昨年末に施行された両地震の特別措置法に基づき、今後、地域の防災計画を策定し、対策を進める。
ただ、財政基盤の弱い市町村は単独での対策推進に限界がある。事業に優先順位をつけ、政府が効率的に支援することが大切だ。
特措法の規定では、南海トラフ地震の対象市町村が津波避難施設を整備する際、政府が費用の3分の2を補助する。小中学校の移転については、用地取得費の4分の3が政府負担になる。
首都直下地震の被害が想定される都心部でも、道路拡幅や公園整備の認可が簡素化されている。
こうした政府の支援策を有効に活用してもらいたい。
取り組むべき課題は山積している。例えば、津波対策が必要な地域で、ハザードマップを作成している市町村は1割強に過ぎない。防災行政無線も、指定された地域の2割近くで未整備だ。
予測される被害が大き過ぎるため、対策の立てようがないと、取り組みに消極的な地域があることも深刻な問題である。
津波による広域浸水が予測されている名古屋市では、住宅の耐震化が進まない。住民の間には「津波で流されると分かっていて改修費は出せない」との声がある。
最短4分後に津波が襲来し、最高30メートル超になると予測される四国の一部地域では、「逃げられない」とあきらめる住民もいる。
着実な対策の実行が、万が一の際の生死を分ける。政府と自治体は防災の基本原則を住民に説明し、協力を得る必要がある。
中央防災会議は今回、南海トラフ、首都直下地震を含め、各地で起こり得る巨大地震の対策を網羅した大綱もまとめた。
交通網のマヒを防ぐ対策、帰宅困難者への対応、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた関連施設の耐震性確保などを挙げている。政府と自治体が連携し、しっかりと対処せねばならない。
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