小沢氏会見 説明責任の放棄では

朝日新聞 2010年01月22日

国会 政策論争の土俵を整えよ

衆院予算委員会の論戦初日は、事実上、鳩山由紀夫首相と小沢一郎民主党幹事長の政治資金にかかわる事件をめぐる集中審議となった。

最大野党の自民党の谷垣禎一総裁は90分の持ち時間の半分近くを割き、後に続いた2議員と合わせ、半日を費やしてこの問題で首相を追及した。

虚偽献金の原資となった母親からの資金提供を全く知らなかったという首相の説明。検察と全面対決を宣言した小沢氏の姿勢。報道各社の世論調査で軒並み、批判的な見方が大勢となっていることが追い風だ。

疑惑がある以上、徹底して説明を求めるのは野党として当然の責務だ。政治的、道義的責任についても、もっと追及してほしい。

しかし、それにしてもこの国会、政府と野党による論戦が政治とカネ一色に染まっていいのだろうか。

景気や雇用対策、社会保障の将来像、外交・安全保障など、政権交代後の本格論戦として、取り組むべきテーマはたくさんある。

その点で、首相と谷垣氏による論戦には落胆を禁じ得ない。

政権交代から4カ月たってようやく実現した、実質的には初の党首討論である。持ち時間はいつもの討論の2倍。2大政党のトップによる骨太の論争を期待したが、政治とカネの問題と、中国の習近平国家副主席の天皇会見問題が大半を占め、他のテーマはいずれも尻切れトンボに終わった。

党首による議論は、政治理念や国家ビジョンなど、政権交代の時代に入った2大政党の対立軸を、国民にわかりやすく示すチャンスである。谷垣氏は自民党に割り当てられた4時間すべてを使ってでも、首相に切り込む気迫を見せてもよかった。

初日の論戦を見る限り、政治とカネの問題にからめとられて、政策論争が深まらないのではないかという危惧(きぐ)が現実のものとなった。これでは与野党が入れ替わっただけで、政権交代前の国会とほとんど変わらない。

与野党は、有権者が期待する中身の濃い政策論争ができるよう、国会論戦の仕組みを変えることをもっと真剣に考えなければならない。

予算審議と疑惑解明の場を切り離すのも一案だ。与党は、野党側が求める集中審議や小沢氏を含む関係者の参考人招致から逃げないこと。それを前提に、野党も予算審議では政策を中心に深い議論をすることだ。

日程をめぐる駆け引きのあげく、満足な審議もないまま最後は与党の数の力で採決強行という展開では、政治全体の刷新を期待して政権交代を選択した有権者を裏切ることになる。党首討論も、テーマを決めて毎週でも実現させたい。旧態依然の国会をいつまでも見ていたくない。

毎日新聞 2010年01月22日

閣僚の報道批判 軽率な発言ではないか

小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の土地購入を巡る事件の報道に関連し、鳩山内閣のメンバー2人が記者会見で相次いで発言した。

原口一博総務相と平野博文官房長官である。いずれも、情報源を「関係者によると」とした記事について疑問を呈したものだ。閣僚が記事の書き方にまで踏み込んで批判するのは極めて異例である。適切さを欠く軽率な発言だと指摘しておきたい。

それぞれの発言を振り返る。

原口総務相は「関係者によると」とした記事やテレビニュースについて「何の関係者か分からない。そこを明確にしなければ、電波という公共のものを使ってやるには不適だ」などと述べた。平野官房長官も「関係者によると」について「すべてとは言わないが、記事の中身によっては公平でないものがある」と話した。批判の矛先が検察からメディアにも向かったかのようだ。

まず、お断りしたい。裁判員制度が始まるのを機に、毎日新聞は、事件・事故報道の記事スタイルの一部を見直した。「情報の出所」をできる限り明示し「関係者によると」の表現もできるだけ避けることを原則とした。多くの報道機関も同様の見直しをしている。

事件の取材先は、捜査関係者に限らず多岐にわたる。情報の出所を明示することで取材源を守れない恐れがある場合は、「取材源の秘匿」が優先することも確認した。それが、国民の「知る権利」に応えるため、適切な方法だと考えたためだ。

記事のスタイルを含めた自由な報道は、憲法で保障された表現の自由に基づく。もちろん、その前提は「事実の報道」であり、それが覆った場合、報道側は責任をとる。

だが、2人の発言は、事実か否かではなく、情報源の表現方法に介入したものと受け取れる。

特に原口総務相は、放送の免許権を持つ立場だ。21日には、報道批判の意図はないと発言したが、実はテレビ報道をけん制したように映る。自民党政権下、放送行政への政治側の介入を民主党が批判してきたことを思い起こしてほしい。

報道の最大の役割は、時の政権、最高権力を監視することだ。民主主義社会において、政権当事者が厳しい批判にさらされるのは常である。その点からも「監視される側」の権力の中枢が、監視する役割を担うメディアに、事細かく注文を出すような発言はいかがなものだろうか。

小沢氏の事件への民主党の対応は、いかにも冷静さを欠いている。「捜査情報の漏えい問題対策チーム」を作るより前に、まず、真相解明のチームを党内に作り、世間の疑問に答えるべきではないか。

読売新聞 2010年01月21日

民主党捜査批判 「圧勝」の意味をはき違えるな

小沢民主党幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐる事件の捜査について、民主党が検察当局を批判し、牽制(けんせい)する動きを強めている。

検察が報道機関に捜査情報を意図的に漏らしているのではないか、石川知裕衆院議員の逮捕は行き過ぎではないか、とする調査チームや同期生の議員による会などが、党内に作られた。

「政治家が検察に正当な理由なく抹殺されていいのか」という感情的な反発などから、石川議員の釈放を求める声まである。

もちろん、検察の判断や捜査手法が常に正しいというわけではない。捜査が適正かどうかを監視すること自体に、問題はない。

だが、政権与党の議員が捜査に政治的圧力をかけるかのような動きは、民主主義の基盤を揺るがしかねず、看過できない。

衆院選に圧勝し、政権交代を果たしたのだから、捜査機関を思い通り動かせるというおごりがあるなら、民意を曲解している。

小沢氏は「法に触れることをしたつもりはない。国民も理解してくれるはずだ。だからこそ政権を我々に与えてくれた」と述べた。鳩山首相も、一時は同じ趣旨の発言をしていた。

土地購入疑惑の発覚は衆院選後だ。選挙で疑惑が払拭(ふっしょく)され、(みそ)ぎが済んだというのは筋が違う。世論調査でも、小沢氏の幹事長辞任まで求める声が圧倒的に多い。

こうした声に民主党が耳を傾けず、逆に検察を揺さぶろうとする動きは、ほかにもある。議員立法で取り調べの全面可視化法案を成立させるべきだとする意見が聞かれるのも、その一つだ。

今回の捜査に絡めて性急に事を運ぼうとする姿勢は、あまりに不見識である。

原口総務相が「検察の関係者なのか、被疑者の関係者なのか、少なくともそこは明確にしなければ電波という公共のものを使ってやるにしては不適だ」と述べた。

「関係者」を情報源にした捜査報道が多いことを問題にした発言だが、これも見逃せない。

情報源の秘匿は報道機関の鉄則だ。放送局を監督する総務省の責任者として、報道内容にまで立ち入る発言は厳に慎むべきだ。

民主党が今すべきことは、自ら小沢氏の疑惑を解明し、党としての自浄能力を示すことだろう。

ところが民主党からは、捜査批判を控え、冷静に対応しようという声が盛り上がらない。小沢氏の力を恐れているとしたら「民主」の看板が泣こうというものだ。

産経新聞 2010年01月20日

民主調査チーム 疑惑解明を妨害する気か

民主党は小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入事件に対し、事実関係の解明に努力する調査チームではなく、報道機関への検察のリークがあるのかどうかを調べる「捜査情報の漏洩(ろうえい)問題対策チーム」を発足させた。

対策チームは小川敏夫党広報委員長ら弁護士資格を持つ議員で構成され、「漏洩が法的にどうなのか検証したい」としている。

検察の捜査や民主党に批判的な報道を牽制(けんせい)する狙いがあるようだが、本末転倒だ。言論・報道の自由を侵害し、検閲する意図すらあると指摘せざるを得ない。民主主義の根幹を揺るがしかねず、とうてい容認できない。

民主党は政治の透明性や公開性をうたいながら、都合の悪い情報は統制しようとする傾向がある。昨年、西松建設の違法献金事件を受けて民主党が設置した第三者委員会の報告書は、政治資金規正法違反事件をめぐる小沢氏の責任そのものより、「検察権力の行使が野党第一党に大きな打撃を与えた」などと検察の捜査手法を厳しく批判するものだった。

同時に、「巨額献金事件という決めつけ」や「有罪視報道の展開」など、報道のあり方に対する批判にも力点が置かれていた。

検察側の強制捜査に対し、産経新聞社とFNNの合同世論調査では「適切」が75%に上っている。そうした世論に耳を貸さず、「政治とカネ」をめぐる重大な政治不信について、検察とマスコミの問題にすり替えようとすることは許されない。

こうした機関の設置について、党内で反対意見がまったく出ないのは異常だ。「小沢擁護論」で身動きが取れないのだろうか。

事件は同党所属議員の逮捕に及んでいる。民主党が真っ先に行うべきは、小沢氏に詳細な説明を求めるなど、事実関係の調査を通じた自浄能力の発揮である。

小沢氏は東京地検特捜部の参考人聴取の要請に、応じる意向を示しているという。土地代金の原資など多くの疑問点が出ている。小沢氏は「形式的なミス」などと話しているが、検察は疑惑を徹底して解明してほしい。

19日の衆院代表質問で、自民党の大島理森幹事長は、土地購入をめぐる複雑な資金操作について調査や資料提出を要求した。国会での解明にも、小沢氏や民主党は率先して応じる責務がある。

朝日新聞 2010年01月20日

国会論戦 暗い民主主義はいらない

政権交代して初の通常国会で論戦が始まった。小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐる捜査が進むなか、荒れ模様の幕開けである。

小沢氏は東京地検の事情聴取を受ける方向という。国会論戦でも当面は、この問題や鳩山由紀夫首相の偽装献金問題が焦点とならざるをえない。

「政治とカネ」をめぐる与野党の泥仕合はおなじみの光景かもしれない。しかし、今回の一件が持つ意味合いは、これまでとは大いに違う。

有権者が初めて自ら政権交代を実現させた直後である。多くの有権者は、かつての「金権腐敗」政治はもうご免だと願い、民主党に投票したはずだ。なのにまた同じことが繰り返されるなら、何のための政権交代だったのか。政党政治そのものへの失望が、今度こそ癒やしがたく深まりかねない。

その危険を首相以下、政府与党の面々がしっかり感じているのかどうか、はなはだ心もとない。

典型は首相が小沢氏に語った「どうぞ戦ってください」との発言だろう。

自民党の大島理森幹事長は、19日の代表質問で「一国の首相の発言とは信じられない。誰と『戦う』ことを念頭に置いていたのか」とただした。検察の捜査に介入するつもりなのかという、至極もっともな問いである。

首相は「私は行政の長であり、検察の公正な捜査を信じている」と答えたが、言葉の選び方や置かれた状況への感度が鈍すぎる。

ほかにも首をひねるような動きが相次ぐ。民主党は一昨日「捜査情報の漏洩(ろうえい)問題対策チーム」を党内に設けることを決めた。検察による報道機関に対する情報操作の有無を調べるという。原口一博総務相も昨日、一連の報道に関し、情報源を明確にすべきだとの考えを述べた。逮捕された石川知裕衆院議員と当選が同期の議員らは「石川代議士の逮捕を考える会」をつくった。

いずれも、小沢氏の「全面対決」路線に歩調を合わせようとするもののようだ。異様な光景の広がりである。

総選挙での圧倒的な民意の支持を、はき違えているのではないか。検察も無謬(むびゅう)ではないだろうが、政権与党も万能ではない。様々な力が互いに抑制、均衡しつつ丁寧にことを進めていくのが、まともな民主主義社会である。

小沢氏が検察を批判する際に語った「これがまかり通るなら日本の民主主義は暗澹(あんたん)たるものになる」という言葉は、むしろいまのような状況にこそ当てはまるのではないか。

最優先すべきなのは、国会論戦を空費させないことである。小沢氏らは国会で事実関係の説明をすべきだ。

そのうえで予算案審議や政策論争を本格化させる。政権交代後、「国会審議の活性化」論議を先頭に立って進めたのは、小沢氏だったはずである。

毎日新聞 2010年01月20日

国会代表質問 首相が打開に動かねば

通常国会は衆院本会議で各党による代表質問が行われ、与野党論戦の火ぶたが切られた。野党側は鳩山由紀夫首相の偽装献金事件や民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体による土地取得をめぐる事件など「政治とカネ」の問題をそろって取り上げ、首相は守勢の答弁を強いられた。

土地取得問題に関し首相は小沢氏の「潔白の主張」を信じ、続投を支持する考えを改めて示した。ならばなおのこと、小沢氏や党による国民への説明を主導し政治不信を払しょくすべきだが、そうした決意は答弁から感じられなかった。事態打開への自覚を疑わざるを得ない。

首相にとって、忸怩(じくじ)たる思いの初日の論戦だったに違いない。政権交代後、初の本予算編成を経た政策論争の場となるはずが、自身と党の要の小沢氏を巻き込んだ「政治とカネ」に多くの答弁は費やされた。

しかも、局面を自ら転換する意気込みが残念ながら首相からは感じられなかった。自身の実母からの献金の偽装事件について決着済みと強調したが、資金の使途の公表については言葉を濁した。

小沢氏の団体の政治資金規正法違反事件に関しては、事態をどう認識しているのかという疑念すら、これまでの発言から抱いてしまう。首相は小沢氏の続投を支持した際、「戦ってください」と検察批判と取られかねない発言をした。さすがにこの日は「政治の変革に向け共に戦う」意味と説明、「検察の捜査が公正に行われることを信じたい」と述べ、捜査当局への指揮権発動も否定した。だが、捜査批判との見方が出る言動自体、行政の長として不注意だ。

自民党の大島理森幹事長が質問で求めた国会での事実関係の解明や民主党の独自調査についても、捜査中であることなどを理由に答弁では踏み込まずじまいだった。小沢氏が説明することについても事実上、自主判断に委ねた。党代表がこれでは、自浄能力発揮を求める声が党内から起きにくかろう。

今回の捜査を小沢氏らは批判している。検察当局にも一定の説明責任が課せられることは事実だ。だが、国民の視線の厳しさを十分に民主党は自覚すべきだ。各種世論調査で約7割の人が小沢氏は幹事長を辞職すべきだ、と答えている。首相が小沢氏の続投を支持し「一蓮托生(いちれんたくしょう)」となった以上、国民への説明を主導する責任があるはずだ。

一方で自民党も追及一色では、2大政党として責任に欠ける。国会での集中審議や小沢氏の参考人招致要求をめぐり、審議拒否などの戦術は用いるべきでない。政治資金規正法改正問題など自らの姿勢が問われる課題からも逃げてはならない。

読売新聞 2010年01月20日

代表質問 カネの問題に正面から答えよ

政権中枢の「政治とカネ」をめぐる問題に、鳩山首相はきちんと答えていない。

衆院代表質問で国会論戦がスタートした。

自民、公明、共産の野党各党からは、鳩山首相の偽装献金事件と小沢民主党幹事長の資金管理団体による土地購入疑惑についての質問が相次いだ。

首相は偽装献金に関して、検察の捜査終結を理由に「決着」済みとの姿勢に終始した。母親から提供された巨額資金の使途も「検察から違法な支出は指摘されなかった」と述べるにとどまった。

贈与税逃れとの追及にも、「資金の提供を知らなかったので、贈与税を逃れようという発想自体ありえない。脱税の認識はない」と否定した。

まったく説明になっていない。事実関係を丁寧に説明する姿勢を欠くようでは、在宅・略式起訴された元秘書など、関係者の国会招致を要求する野党側に勢いを与えるだけだろう。

小沢氏の資金管理団体の問題で首相は「小沢氏の潔白を信じるのは、同志として当然の姿」と強調し、小沢氏の立場を擁護した。

だが、「同志」と言うなら、東京地検の聴取に応じるのはもちろん、国民の前で積極的に説明するよう小沢氏に促すべきだろう。

ロッキード事件の反省から、1985年に制定された政治倫理綱領には、「疑惑を持たれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにする」よう明記されている。

首相も小沢氏も、この綱領に従って行動してはどうか。

首相は、法相による「指揮権発動は考えていない」と明言した。当然である。捜査への政治介入はあってはならない。

政治とカネの問題は重要な論戦のテーマだ。ただ、予算審議がこの問題一色になれば、難点のある予算案自体の議論がしわ寄せを受ける。与党は、野党側の主張している政治とカネをめぐる集中審議に応じるべきだろう。

対決ムードの論戦で異例だったのは、自民党が北朝鮮船舶などの貨物検査を可能にする特別措置法案、公明党が今年度第2次補正予算案の早期成立を各党にそれぞれ呼びかけたことだ。

政治資金疑惑や内政・外交の問題点については政府・与党を厳しく追及するが、国際責務や国民生活に直結する課題では協力する、ということだろう。党派を超えて協力すべきは協力する態度を堅持してほしい。

産経新聞 2010年01月19日

首相の「検察批判」 不適切であり撤回求める

土地購入をめぐり元秘書ら3人が逮捕された小沢一郎民主党幹事長に対し、「どうぞ戦ってください」と述べた鳩山由紀夫首相の発言が波紋を広げている。

首相は18日、「検察介入ではない」と釈明したが、首相発言は検察の捜査に注文をつけたと受け止められる。行政の長である首相の検察批判は不適切であり、撤回を求めたい。

小沢氏も民主党大会で検察当局と全面的に対決していく考えを示した。両氏の発言は、司法権の独立と公正さをゆがめ、三権分立の否定につながりかねない。「法の統治」が問われている。

政府は平野博文官房長官が「幹事長職にとどまる小沢氏への激励だ」と説明した。菅直人副総理・財務相も「私も納得できる」と述べるなど、問題視しない姿勢をみせている。

一方、野党側は「首相の立場を逸脱した」「不穏当」と反発している。何よりも懸念されるのは、小沢氏側への捜査に対して、政府が指揮権を発動することだ。

指揮権発動について、検察庁法は個別事件の捜査や処分への指揮権に関して、法相は検事総長を通じて指揮できると定める。政から官へのチェック機能だ。

だが、昭和29年の造船疑獄で吉田内閣の犬養健法相が指揮権を発動して以来、一度も使われていない。内閣が倒れる一因にもなったように、政治家捜査への政治の介入に批判が強かったからだ。

政府としてきわめて慎重に扱うべき問題だ。だが、千葉景子法相は昨年の就任後に「指揮権という権限があるから、あり得るということではないか。それに尽きる」と踏み込んだ発言をしている。

小沢氏の公設第1秘書の逮捕を受けて、民主党が設置した西松建設の違法献金事件に関する第三者委員会は、「法相は高度の政治的配慮から指揮権を発動し、あえて国民の判断にゆだねる選択肢もあり得た」と報告書で指摘した。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査によると、土地購入事件での強制捜査を74%の人が適切だと判断している。小沢氏の幹事長辞任を求める人が70%に上り、48%は議員辞職まで求めている。

国民は事件をきわめて厳しくとらえている。検察との対決ではなく、政治責任を明確にすることが求められていることを、首相と小沢氏は重く受け止めるべきだ。

朝日新聞 2010年01月17日

小沢幹事長続投 首相も党も一丸の異様

土地取引をめぐる政治資金規正法違反の疑いで元秘書の衆院議員ら3人が逮捕された小沢一郎・民主党幹事長が、辞任しないと表明した。鳩山由紀夫首相もこれを了承した。

一切の説明を避けてきた小沢氏は、きのうの民主党大会でようやく疑惑について公に語った。土地購入に充てた4億円は個人資金を積み立てたもので、不正なお金ではないと述べた。

さらに検察の捜査手法を批判し、「日本の民主主義は暗澹(あんたん)たるものになってしまう」「断固戦う」と対決姿勢をあらわにした。

そんな小沢氏に、鳩山首相は「信じています。どうぞ戦ってください」と話したという。党大会では、汚職事件の被告となっている鈴木宗男・新党大地代表が来賓としてあいさつし、持論の「国策捜査」批判をぶちあげ、会場から大きな拍手を浴びた。

小沢氏が一個人として、一政治家として、検察と「戦う」のは自由だ。だが、首相や党が挙げて応援するかのような一枚岩ぶりは何とも異様だ。

しかも、小沢氏から納得できる説明が尽くされたとは到底言い難い。

4億円という個人資産はどうやって形成されたのか。不正な資金でないなら、なぜ偽装工作とも疑われるような複雑な会計処理をしたのか。ダム工事の下請け受注に絡んで、中堅ゼネコンの元幹部が供述しているという5千万円のヤミ献金疑惑についても、納得できる説明はなかった。小沢氏は改めて記者会見を開き、もっと具体的に説明すべきだ。

首相も党の幹部たちも、疑惑の中身がきちんと解明されないのに、なぜ手放しで小沢氏を支援するのか。

何より、小沢氏が鳩山政権の最高実力者であるためだろう。政権交代の立役者だ。批判すれば、選挙で不利なことにならないか。安定した政権運営や夏の参院選での勝利には、小沢氏の力が欠かせないという思いもあるにちがいない。

だが、そうした内向きの論理や思惑を有権者が納得してくれると考えているとすれば、ひどい思い違いではなかろうか。

国会開会直前というタイミングで現職議員を含む小沢氏の側近3人を逮捕した検察の手法は確かに異例だ。検察当局にも国民への説明責任がある。しかし、首相と政権党が一丸となってその検察と「対決」するかのような構図は、国民の理解をはるかに超える。

鳩山首相は、この異様さをどう考えているのだろうか。捜査の進展次第で政権が、党が重大な影響を受ける恐れがあるだけではない。事件はあくまで司法の場で決着をつけるべきことである。一方的に肩入れするかのような軽い姿勢は許されない。首相はこのけじめをはっきりさせるべきだ。

毎日新聞 2010年01月19日

通常国会開会 民主の対応は筋違いだ

これほど厳しい状況の下で与野党論戦を迎える覚悟が鳩山由紀夫首相、そして民主党全体にあったのだろうか。政権交代後、初の通常国会が18日召集された。

小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体による土地購入を巡り元秘書らが逮捕されたことに対し、小沢氏が東京地検特捜部と全面対決する姿勢を示し、首相も早々に幹事長続投を支持した中で始まった国会だ。首相本人の偽装献金問題も併せ、「政治とカネ」が大きな焦点になるのは避けられない。

国民には不幸な状況だというほかない。本来、この国会は鳩山政権が初めて編成した予算案などの審議を通じて政権交代で何がどう変わったのかを確認する重要な場だ。税金の無駄遣いは解消されたか。マニフェストの一部を早くも変更したのは許されるのか。今の経済対策で本当に景気は大丈夫か。沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題など外交・安保の課題も山積している。

こうしたテーマがなおざりになっていいはずはない。だが、いかなる政策論より前に大切なのは政治に対する信頼だ。その点、今の民主党の対応はまるで理解できない。

小沢氏はやましいことはないと断言している。ならば民主党は、自民党などが求めている小沢氏の参考人招致にとどまらず、偽証すれば訴追される国会の証人喚問に進んで応じ、その場で小沢氏が堂々と疑惑を晴らせばいいではないか。小沢氏のこれまでの説明ではまったく不十分で、説明を欠いたままの幹事長続投は認められないと再度指摘しておく。民主党が早期の予算成立を主張するのなら、なおさら、早くこの問題にけじめをつけるべきだ。

民主党は特捜部が報道機関に捜査情報をリーク、漏えいした疑いがあるとして調査チームを作り、報道の情報源も調べるという。捜査に厳正、公平性が必要なのは言うまでもない。しかし、仮に今後の捜査や報道に圧力をかける狙いが、調査チームにあるとすればそれは筋違いだ。

一方、自民党も小沢氏と首相の資金問題を徹底追及するというが、予算案審議を遅らせて抵抗するというのであれば、これまで与党時代に批判していた野党の戦術と同じだ。新しい野党像を示してほしい。

今の政権が安定するのか、再度衆参がねじれて政治は混迷するのかが焦点となる夏の参院選に直結する国会でもある。まず、与野党ともに昨年の総選挙で有権者の多くがなぜ、政権交代に期待したのかを今一度、確認してもらいたい。このままでは「やはり政治は変わらない」と国民の間に不信感ばかりが募るだけだ。それを恐れる。

読売新聞 2010年01月18日

通常国会召集 予算案の問題点を洗い出せ

鳩山内閣が編成した予算案が、初めて()(じょう)に載せられる。与野党の徹底審議で、問題点を洗い出してもらいたい。

通常国会が、18日召集される。冒頭から波乱含みの展開が予想されているのは、小沢民主党幹事長の資金管理団体による土地購入疑惑が、石川知裕衆院議員の逮捕に発展したためだ。

「政治とカネ」の問題は、これにとどまらない。

小沢氏の場合、党首を務めていた自由党が解散時、政党交付金を国庫に返還しなかった問題も指摘されている。

鳩山首相の偽装献金事件も落着していない。母親からの巨額資金提供について、首相は「承知していなかった」としているが、そのまま信じる人は少なかろう。

事実関係の解明のためには、関係者の国会招致も必要だ。だが、野党の招致要求で紛糾し、あげく与党による採決強行、という不毛な対決劇は困る。

国会に最も求められる仕事は、政治資金の透明化や政党交付金の扱いの適正化へ向け、必要な法改正を図って政治不信に歯止めをかけることだ。

日本の景気は、二番底が懸念されている。その現状を考えれば、「政治とカネ」をめぐる論戦に終始してはなるまい。

2010年度予算案では、民主党が、衆院選の政権公約(マニフェスト)にこだわるあまり、歳出規模は92兆円に膨らんだ。

子ども手当は、所得制限を設けずに実施されるが、これでいいのか。公共事業の2割削減は、景気の足を引っ張らないか。消費税率引き上げ論議をいつまで先延ばしするつもりなのか。

政策論争は、こうした国民の疑問に応えるものであってほしい。その結果、財源や制度設計に無理があることがわかれば、政府・与党は大胆に修正すべきだ。

野党・自民党も、単に「公約違反」と攻め立てるよりも、ガソリン税の暫定税率維持といった政策転換は歓迎したらいい。

米軍普天間飛行場の移設問題でも、現行計画で決着するよう強く促すことが、前政権政党としての責任だろう。

与党は、政治家主導で国会審議を進めるため、官僚の答弁禁止を柱とする国会法改正案などの成立を図りたいとしている。

各閣僚は、法改正を待たずにこれを率先垂範してほしい。首相も前国会のように党首討論から逃げることなく、審議活性化の先頭に立つべきだ。

産経新聞 2010年01月18日

通常国会召集 疑惑解明に国政調査権を

小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入事件が鳩山内閣を激しく揺さぶる中で政権交代後、初の通常国会が召集される。

焦点は、現職の国会議員を含む3人の側近が逮捕されても、幹事長続投の意向を表明した小沢氏の疑惑などの「政治とカネ」の問題だ。鳩山由紀夫首相の偽装献金問題も、中心テーマである。

民主党はこれらの問題を解明しようという自浄努力を示そうとしていない。そうである以上、国会は国政調査権に基づき、証人喚問や参考人招致などを通じて真相究明を果たさねばならない。

自民党は小沢氏ら関係者の参考人招致や「政治とカネ」の集中審議を要求している。与党は応じないようだが、数の力で疑惑解明を封じることは許されまい。

与党の最高実力者の小沢氏と鳩山首相の2人が、政治不信の元凶となっている事態に、国会がどう対処するかが問われている。

自民党は集中審議の開催を補正予算審議入りの条件に挙げ、公明党も「国会が自浄作用を発揮せずに漫然と予算審議を進めるわけにはいかない」と同調している。

民主党が野党時代に政策よりも政局を重視し、審議拒否を重ねたような対応はとるべきではなかろう。しかし、一連の疑惑は政策論争に先立ってただしておくべきものではないか。

日本経済の「二番底」回避に向けた施策の議論も急がれる。疑惑解明をめぐる国会の混乱を長引かせれば、国民生活や景気への悪影響をもたらしかねない。

一方、今国会では政治家同士の本格的な論戦が実現できるかどうかも重要なテーマだ。具体的には、官僚答弁の禁止に向けた国会論戦のルール作りだ。

平野博文官房長官は法改正を待たず、内閣法制局長官に答弁させない方針をとった。集団的自衛権の行使の問題など国益にかかわる政策の憲法判断を、内閣法制局に任せていたことを改めようというものだ。

日米同盟の強化につながる集団的自衛権の行使容認に向け、行使を阻んできた法制局長官答弁の枠を離れた議論を歓迎したい。

「通年国会」への転換が与党の改革案に入っていないのは不十分だ。会期を決めた後は、政策の中身より法案審議の日程闘争に重きが置かれる従来のやり方から、早急に脱しなければならない。

朝日新聞 2010年01月16日

石川議員逮捕 小沢氏に進退を問う

小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体の土地購入疑惑をめぐり、石川知裕衆院議員が東京地検特捜部に政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。ほかの元秘書も逮捕された。

国会開会中に国会議員を逮捕するには、許諾請求の手続きが必要だ。捜査当局とすれば、週明けの通常国会開会の前に石川議員の逮捕に踏み切ったということだろう。

民主党政権の真価が問われる初めての通常国会を直前に控え、政権一の実力者である小沢氏の側近だった現職の国会議員らが逮捕された。まさに異常事態である。

きょう開かれる民主党大会は、夏の参院選に向けて結束を示すはずだったのに、それどころではなくなった。

小沢氏をめぐっては、西松建設の違法献金事件で、公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で逮捕・起訴され、東京地裁で公判中だ。秘書は無罪を訴えている。今回の土地取引疑惑でも、小沢氏は「意図的に法律に反する行為はしていない」と語り、検察の任意の事情聴取要請にも応じていない。

しかし、側近から3人もの逮捕者を出した政治的、道義的責任は極めて重いと言わざるをえない。

小沢氏の資金管理団体は、5年前に東京都内の宅地を購入した。購入資金に充てた約4億円を「収入」として収支報告書に記載しなかったことなどが、石川議員の逮捕容疑だ。

疑惑の核心は、4億円の原資がどこから出てきたかだ。その一部が、同じ時期に岩手県内のダム工事を下請け受注した中堅ゼネコンから、石川議員に渡された5千万円ではないかとのヤミ献金疑惑が浮かんでいる。

小沢氏はこれまで、捜査中であることを理由に、この4億円の出どころや不自然な経理操作の理由などについて、一切説明をしていない。

しかし、もはや説明を拒み続けることは許されまい。検察の事情聴取に応じ、国民に対しても納得のいく説明をすべきだ。それができないのであれば、「やましい金だった」と思われても仕方ない。

民主党では、鳩山由紀夫首相の元公設第1秘書も違法献金事件で起訴され、公判を待つ身だ。

通常国会は冒頭から、野党の厳しい追及が予想され、混乱は必至だ。小沢氏に対し、説明責任を果たすよう求める動きがほとんどなかった民主党内でも、ようやく小沢氏の責任論が言われだした。

このままでは、政権交代をしたのにカネまみれの政治の姿は何も変わらないと、国民の失望は深まる。

刑事責任の有無とは別に、小沢氏が負うべき政治責任はそこにあるのではないか。小沢氏は自らの出処進退を決断すべきだ。

毎日新聞 2010年01月17日

小沢民主党幹事長 説明欠く続投は許さぬ

民主党の小沢一郎幹事長は16日の党大会で政治資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる事件に関し、幹事長職の続投を表明した。東京地検特捜部が私設秘書だった石川知裕衆院議員らを政治資金規正法違反容疑で逮捕したことに小沢氏は「断固として戦う決意だ」と検察当局との全面対決を宣言するという異例の事態に発展、鳩山内閣の屋台骨が揺らいでいる。

党の要である小沢氏自身の疑惑が側近議員らの逮捕に発展したことは、さきの衆院選で国民が民主党に与えた信任を揺るがしかねない深刻な状況である。鳩山由紀夫首相は「小沢氏を信じている」と述べ、続投を了承した。このため、事件の推移が首相の政治責任と直結する構図となってきた。

事件をめぐる小沢氏のこれまでの説明は説得力に乏しく不十分であり、このまま幹事長職にとどまろうとしても、国民の理解は得られまい。潔白を主張するのであれば、国会などの場で自ら進んで説明する責任をまずは最低限、果たすべきである。

もともと次期参院選に向けた決起大会と位置づけられていた党大会は現職議員逮捕の衝撃で、異様なものとなった。小沢氏は検察当局とのあくなき対決姿勢と闘争心をあらわにし、「党大会に合わせたかのように逮捕が行われ、到底、容認できない」とまで言い切った。一方で、首相も早々に小沢氏の続投支持を大会で表明した。政治的に小沢氏と運命を共にする意向を示したにも等しい、重い発言である。

検察当局との全面対決に政治生命をかけた小沢氏と、次期参院選を控え、小沢氏抜きの政権運営は立ち行かないと判断したとみられる首相が結束を強調した形である。しかし、このまま小沢氏が続投するにはあまりにも多くの疑問が解明されておらず、小沢氏の説明も不足していると言わざるを得ない。

石川議員らの逮捕容疑は土地取得資金の4億円を報告書に記載しなかったことなどだ。だが、重要なのはその原資が「胆沢(いさわ)ダム」下請け工事受注をめぐるゼネコンからの裏献金ではないか、との疑惑が持たれている点にある。「陸山会」をめぐり、中堅ゼネコン「水谷建設」元幹部が「1億円を小沢氏側に渡した」と供述したとされている。家宅捜索を受けた大手ゼネコン「鹿島」はダム工事の元請けだ。

小沢氏は16日、記載をしなかったことについて「形式的ミス」としたうえで4億円の原資について「積み立てた個人の資金」と説明、裏献金疑惑を全面否定した。だが、石川議員は意図的な虚偽記載である点は捜査当局に認めているという。仮に「積み立てた」資金とすれば、どのように形成されたかの説明も小沢氏からはされていない。取得経緯をめぐり、多くの疑問がつきまとう。

それだけに、小沢氏自らが国民が納得できるよう、説明する責任がある。そもそもこれまでも、機会は十分にあったはずだ。あれだけ検察を批判しながら捜査に配慮して説明を拒むこともあるまい。18日召集の通常国会では、むしろ進んで国会で証人喚問にのぞむべきであろう。

一方で問われるのは、首相の姿勢だ。自身の政治献金虚偽記載問題で元秘書が起訴され、野党からの厳しい追及が予想される身だ。にもかかわらず、十分な党内調査も経ないまま「信じている」とあっさり小沢氏の続投を了承した対応は、安易に過ぎるのではないか。小沢氏に自発的な説明を促すことはもちろん、事態究明について自らが指導力を発揮すべき局面である。

民主党内の議論も焦点だ。小沢氏の資金問題に関してはこれまでも党内の動きが鈍く、国民へ説明を求める声すらあまり聞かれなかったことは異常である。党大会でも首相、小沢氏に異を唱える声はほとんど聞かれなかった。実権を掌握する小沢氏の意向をおもんぱかり国会議員が一様に口を閉ざし、それが党の空気を一層、重苦しくする悪循環に陥っているのではないか。どれだけ自浄機能を発揮できるか、政権政党の体質が問われよう。

党大会で民主党は次期参院選に向け、単独過半数の獲得を目指す活動方針を採択した。同党は自民党の組織票の切り崩しや候補の発掘に全力を注ぎ、各種世論調査で民主党支持率は自民党を大きく上回る。小沢氏は幹事長業務の多くを輿石東参院議員会長に委ねることで、収拾を図ろうとしている。

だが、このまま正面突破が可能と首相らが考えているのであれば、あまりにも危機感に乏しい。政権交代を実現し、政治の刷新を国民から期待される鳩山内閣がゼネコン絡みの旧態依然の疑惑の渦中にあることを、首相らはより深刻に受け止める必要がある。事件をめぐり通常国会が混乱し予算案などの審議に支障を来すことがあれば、結果的に影響を被るのは国民の生活である。

同時に、検察当局も捜査に関する小沢氏らの批判にこたえる必要があるのではないか。捜査の節目では一定の説明を国民に対し行うことを、改めて求めたい。

読売新聞 2010年01月17日

小沢幹事長発言 検察批判の前に説明を尽くせ

民主党大会で小沢幹事長は、自らの資金管理団体による土地取引疑惑について潔白を強調し、検察当局と全面対決すると表明した。

しかし、問題の土地購入の原資など事実関係については依然として不明なままだ。

小沢氏は検察批判の前に、具体的な根拠を示して国民に説明を尽くすべきだ。また、潔白だと言うなら、東京地検の聴取にも堂々と応じればよい。

地検は、小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員らに続いて、昨年の西松建設事件で逮捕した公設第1秘書を政治資金規正法違反容疑で再び逮捕した。

小沢氏は党大会で、資金管理団体をめぐる事件について「記載の間違い」「形式的ミス」として、東京地検の捜査手法を厳しく批判した。その上で、「断固としてこのようなやり方について闘っていく決意だ」と述べた。

自らの進退については、「何も職を辞する必要はない」と幹事長続投を表明した。だが、疑惑を晴らす努力をしない限り、国民の理解は得られまい。

鳩山首相は党大会のあいさつで「小沢幹事長を信じている。職務に全力を挙げるよう要請する」と述べた。強制捜査直後には、昨年の総選挙でみそぎが済んだと言わんばかりの発言までして、小沢氏を擁護している。

自らの偽装献金事件に続いて、幹事長にかかわる疑惑で所属国会議員の逮捕者まで出したことに対し、首相の認識は甘過ぎる。

大会前に会談した小沢氏に対しては、「どうぞ闘ってください」と述べたという。小沢氏におもねったとしか思えない。行政府の長として極めて不適切な発言だ。

党大会では、政権発足以来、最も困難な状況を迎えながら、国会議員や地方代議員からは、「政治とカネ」をめぐる問題について、批判は出なかったという。

昨年の西松建設事件では、有識者による第三者委員会を設置し、独自に真相究明に取り組む姿勢を見せた。ところが、今回はそんな動きもまったく出ていない。

首相と幹事長の政権トップ2人に政治資金にかかわる疑惑が指摘されている重大事を前に、民主党は黙したままでよいのか。

このままでは、政治とカネの問題で自浄能力を示すことのできない政党とみなされるだろう。

あすから始まる国会でも、予算審議促進を口実に、疑惑解明に後ろ向きな姿勢を取り続けることは許されない。

産経新聞 2010年01月17日

小沢幹事長 続投は受け入れられない

資金管理団体「陸山会」の土地購入事件で側近3人が逮捕された民主党の小沢一郎幹事長が「自分は法令に違反していない」と、幹事長続投の意向を表明した。

土地取引をめぐる複雑な資金操作に対する小沢氏本人の関与が疑惑の核心だ。会計責任者らの逮捕は、政治的かつ道義的責任が明白であり重大であることを示している。

それをまったく認めようとせず、開き直る姿勢は受け入れられない。政治的生命を失うと判断したためなのだろうが、情けないとしかいいようがない。

小沢氏は16日の党大会のあいさつで、「この日に合わせたかのような逮捕が行われた。到底このようなやり方を容認できない」と、検察当局と全面対決する考えを表明した。政権党の幹事長ともあろう人物が自らに嫌疑をかけられたことに対し、検察を真っ向から批判した例はないのではないか。

鳩山由紀夫首相も小沢氏との会談で「(検察と)どうぞ戦ってください」と理解を示した。行政府のトップである首相が、検察と対決する小沢氏を激励するかのような姿勢はきわめて異常である。

小沢氏はこの日も「裏献金をもらったり隠したり、ウソの報告は一切していない」と記者団に語った。これに対し、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕された石川知裕衆院議員は、土地購入に充てた資金について「わざと記載しなかった」と犯意を認めていることが報じられている。

これは小沢氏の説明が虚偽であることを示しているのではないか。検察当局は自らの存在をかけて今回の土地疑惑を徹底して解明しなければならない。

党大会で、小沢氏の続投方針に反対意見が出なかったのもきわめて残念だ。政治責任を不問に付していることは、党が自浄能力を欠くばかりか、政権運営に当たっての健全かつ正常な判断力を失っていることをさらけ出している。

渡部恒三元衆院副議長は「国民のために身を引く判断もあるだろう」と述べた。首相も党大会で小沢氏の説明責任に言及したが、形ばかりの感をぬぐえない。

事件を受けて小沢氏が幹事長の職務を輿石東参院議員会長に代行させる考えを示しているのも不可解だ。これまで同様、影響力を行使しようという考えのようだが、国民の反発を甘くみているとしかいいようがない。

朝日新聞 2010年01月15日

小沢幹事長 なぜ聴取に応じないのか

小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体、陸山会の土地購入疑惑に対する捜査が新たな段階を迎えた。

東京地検特捜部が陸山会や小沢氏の個人事務所、ゼネコン関係者の家宅捜索に踏み切った。小沢氏が任意の事情聴取に応じないため、捜査方針を切り替えたとみられる。

疑惑の内容を整理してみよう。

陸山会は2004年に秘書寮を建てるために宅地を買った。この土地代にあてるため、小沢氏が4億円を現金で、当時陸山会の担当秘書だった石川知裕衆院議員に渡したという。

政治資金規正法に従えば、この金は政治資金収支報告書に「収入」として記載しなければならない。しかし、その記載がなかったため、石川議員に規正法違反の疑いがもたれている。

小沢氏が4億円を出したことが事実とすれば、その出どころについては小沢氏が説明するしかない。それにもかかわらず、小沢氏は「私どもはけっして法に触れるようなことをしたつもりはありません」と述べるだけで、一切の具体的な説明をしていない。

法に触れることがないのなら、なぜ検察の聴取に応じないのか、解せない。積極的に応じた方が、自らにも民主党にも利益になるのではないか。

検察は中堅ゼネコンの元幹部から、ダム建設工事の受注に絡んで小沢氏側に現金5千万円を渡したとの供述を得ているという。この裏献金が裏付けられれば、その時期から見て土地購入と絡んでいた可能性も出てこよう。

捜査はいまだ途中であり、違法性を決めつけるわけにはいかない。ただ、現状は政治的にも波紋を広げている。小沢氏は捜査に区切りのついた段階で記者会見などで説明する意向を表明したが、そうした機会は当面、期待できそうにない。

週明けには通常国会が始まる。野党は、鳩山由紀夫首相の虚偽献金問題と併せ、民主党政権ツートップの政治資金問題を徹底追及する方針だ。

政府は景気の二番底を防ぐため、景気対策を盛り込んだ補正予算案の月内成立や、新年度予算案の年度内成立を最優先課題としている。

このまま小沢氏が説明責任を果たそうとしなければ、証人喚問や参考人招致を求める野党との対立は激化し、国会が混乱するのは必至だ。国民の暮らしや景気に影響する大事な政策論争ができない事態にもなりかねない。

小沢氏は政権党の幹事長として、国会の運営に責任を持つ立場だ。その当人が国会混乱の原因をつくり出しては無責任のそしりは免れまい。国会の開会前に、事実関係をきちんと国民の前に明らかにしなければならない。

国会を正常に機能させるのは鳩山首相をはじめ、連立与党全体の責任である。事態の打開に動くべきだ。

毎日新聞 2010年01月16日

石川議員ら逮捕 裏献金の有無が核心だ

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る事件で、東京地検特捜部の捜査が大きく動いた。

小沢氏の元私設秘書、石川知裕衆院議員と別の元私設秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕、西松建設事件で公判中の大久保隆規・公設第1秘書の逮捕状を取った。

陸山会は04年10月、東京都世田谷区に土地を購入した。金融機関から借りた4億円を支払いに充てたと小沢氏側は従来説明していた。だが、実際は、小沢氏から提供された別の4億円が充てられたという。

容疑は、この4億円を政治資金収支報告書に記載しなかったなどの疑いだ。なぜそうしたのか。小沢氏の提供とされる4億円の原資は何か。それが事件の核心だ。

陸山会を巡り、中堅ゼネコン「水谷建設」元幹部が「1億円を小沢氏側に渡した」と供述しているという。5000万円は04年10月に石川議員に、残り5000万円は翌年、大久保秘書に渡したと話しているという。

国が発注した胆沢(いさわ)ダムの下請け工事受注の成功報酬だという。この供述が事実だとすれば裏献金である。

特捜部は時期的に、最初の5000万円が、土地代の支払いに充てられた可能性があるとみるのだろう。

胆沢ダム工事で水谷建設の元請けだった大手ゼネコン「鹿島」に捜索が入ったことからもうかがえる。

逮捕容疑は、4億円を報告書に記載しなかったことだ。だが、仮に裏献金を使って土地を購入したことを隠す意図がその背景にあったとすれば、悪質というほかない。

石川議員は特捜部の調べで4億円の原資について「知らない」といい、説明は合理性を欠いていたとされる。逮捕は、そのためだろう。

18日に通常国会が開会する。仮に開会後に石川議員を逮捕する場合、所属する衆院の許諾が必要になる。特捜部は、石川議員の在宅起訴の方針を転換し、逮捕しての真相解明にかじを切る中で、ギリギリの判断で、時機を探ったとみられる。

小沢氏は虚偽記載の経緯についてどういう認識だったのだろうか。捜査を尽くすよう改めて検察に求めたい。

小沢氏の政治資金問題で現職国会議員が逮捕され、鳩山内閣の運営に与える影響は極めて重大だ。捜査の進展次第では小沢氏の進退問題も絡むだけに、国会は冒頭から緊迫した展開となる。

小沢氏をはじめ党が国会審議を通じての真相究明に協力すべきことは言うまでもない。鳩山由紀夫首相は党代表として自浄能力を示すため、指導力を発揮する責任がある。

その覚悟を16日の党大会で表明すべきである。

読売新聞 2010年01月16日

石川議員逮捕 小沢氏の責任は極めて重い

昨年3月の公設第1秘書逮捕に続き、私設秘書だった石川知裕衆院議員が政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。小沢民主党幹事長の政治責任は重大である。

小沢氏は、地検の事情聴取に応じるのはもちろんのこと、数々の疑惑について、国民への説明責任を果たさねばならない。

18日からは通常国会が始まる。それを目前に地検が石川議員らの逮捕に踏み切ったのは、任意の事情聴取を重ねてもその供述になお曖昧(あいまい)な部分が多いことなどから、逮捕しなければ全容を解明できないと判断したためとみられる。

石川議員の逮捕容疑は、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐるものだ。

陸山会は2004年10月、東京都内の土地を購入した。石川議員の供述では、小沢氏から手渡された現金4億円を充てたという。

これも含め、小沢氏は、政治資金収支報告書に記載のない、少なくとも16億円の収支に直接かかわっていた可能性が高い。

また、陸山会では、なぜか土地購入代金を払った直後、4億円の定期預金を組み、これを担保に金融機関から同じ金額を借り入れている。東京地検では土地購入の原資を隠す偽装工作とみている。

この際の融資関係書類にも、小沢氏の署名があったという。

小沢氏の地元岩手県のダム工事を下請け受注した中堅ゼネコンの幹部らは、土地購入とほぼ同時期に、石川議員に5000万円を提供したと供述している。

地検では、土地購入の原資にゼネコンからの裏献金が含まれていた疑いがあるとみており、こうした点について、今後、石川議員を追及する方針だ。

小沢事務所の資金集めに関し、地検は、公設秘書の政治資金規正法違反事件の公判で、公共工事の受注業者決定に対する影響力を背景に多額の献金を受けていた、と指摘している。

検察当局は石川議員らの取り調べを通じ、疑惑の全体像に迫ってもらいたい。

小沢氏は土地購入疑惑が昨年10月に明るみに出て以降、潔白を強調するだけで、事実関係は一切説明していない。小沢氏がなすべきは事実を明らかにすることだ。

鳩山首相は地検が一斉捜索に乗り出した後も、小沢氏を擁護してきた。野党・自民党が首相の偽装献金事件だけでなく、小沢氏の土地購入疑惑を厳しく追及するのは必至だ。民主党も真相究明に乗り出さねばなるまい。

産経新聞 2010年01月16日

石川議員ら逮捕 小沢氏は進退決断せよ 免れない政治・道義的な責任

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」による土地購入事件で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反容疑で、会計事務担当だった石川知裕衆院議員らの逮捕に踏み切った。

すでに昨年3月には、西松建設の違法献金事件で小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規被告=公判中=が逮捕・起訴されている。

政権与党の最高実力者が「政治とカネ」をめぐって、自分の側近から3人の逮捕者を出すという異様な事態になっている。

小沢氏は自らがこの土地購入に関与しているとみられる。しかもその資金の取り扱いについて違法性を問われた。

政治的かつ道義的な責任は重大かつ明白である。もはや与党幹事長の職にとどまることは困難といえよう。

小沢氏が国会議員にとどまることへの疑問すら生じてこよう。小沢氏は、自らその進退を明らかにすべきである。

資金管理団体による不動産購入をめぐり、不透明な資金の流れが浮かんでいた。ゼネコンからの裏献金や政党の活動資金などが、小沢氏側に流れているのではないかという疑いも浮上する中で、13日には陸山会に加え、東京都内の小沢氏の個人事務所への家宅捜索も行われた。

土地購入をめぐる違法行為や脱法行為に対し、検察当局は現職議員の逮捕という厳しい対応を示した。特捜部は記者会見し、石川容疑者らの逮捕について「証拠を隠すおそれがあり、緊急性があった」と表明した。小沢氏をめぐる疑惑の全容の徹底解明が急がれる。

◆全容解明を急げ

政権交代を経て、小沢氏を幹事長に起用した鳩山由紀夫首相の責任も重大だ。鳩山首相は土地購入事件の捜査が本格化しても、小沢氏を幹事長として続投させ、今年夏の参院選を乗り切る考えを示していた。

平野博文官房長官は石川容疑者らの逮捕について「厳粛に受け止める」と語った。

石川容疑者の逮捕容疑は、平成16年10月29日の陸山会による東京都世田谷区の土地購入に際し、その資金を政治資金収支報告書に記載していなかった政治資金規正法違反(虚偽記載)とされる。

この土地購入は小沢氏が指示したうえ、個人資金を提供したとされ、小沢氏自身の関与が疑惑の核心なのである。

とくに、小沢氏が提供した4億円の原資が明らかになっていないことや、関連政治団体との間で複雑な資金移動が行われ、直接、土地購入に結び付かない銀行融資が行われるなど、不自然な資金の流れに疑問が向けられてきた。

特捜部は小沢氏に対する任意の事情聴取を要請していたが、小沢氏は拒み続けてきた。小沢氏が違法性を否定するなかで、民主党が自浄能力を発揮できなかったこともきわめて問題だ。

与党のトップが、説明のつかない土地購入や資金管理で検察当局の強制捜査を受け、党所属の現職議員逮捕という事態にまで至った。鳩山首相は小沢氏の更迭など重大な決断を迫られている。16日の民主党大会では、明確な考えを示す必要がある。

◆問われる首相の判断

政治とカネへの対応だけでなく、政権運営の正当性まで問われる事態だと受け止めるべきだ。

大久保被告をめぐっては、小沢氏の指示でゼネコンの陳情など事件関係書類を運び出す証拠隠滅を図った疑いも浮上している。

小沢氏は「法に触れるようなことをしたつもりはない」などと開き直り、事件の詳細については口を閉ざしている。

だが、小沢氏のカネの流れをよく知る3人が逮捕され、もはや「自分は知らなかった」などの理屈は通用しまい。

小沢氏は与党の最高実力者であり、国民の代表たる国会議員だ。自ら検察に赴き、知りうることをすべて説明することが最低限の責務といえよう。

一方、小沢氏が党首だった旧自由党から、政党助成金約5億6千万円を含む15億円余りの政党資金が小沢氏の関係政治団体に寄付の形で移されたことなども判明している。陸山会が10カ所以上の不動産を購入していたことや、その目的などについても、多くの疑問が持たれてきた。

こうした疑問点について、小沢氏は「自分はもっともオープンな政治家」などと言いながら、実質的な説明を怠ってきた。自らが政治不信を高めているのである。

朝日新聞 2010年01月13日

小沢氏会見 実力幹事長の説明責任

「誤解を与え、ご迷惑、ご心配をおかけしていることを大変申し訳なく思っている」

民主党の小沢一郎幹事長はきのうの定例記者会見で「国民のみなさま」に向けてわびた。自らの資金管理団体である陸山会の土地取引をめぐる、資金の流れの問題についてだ。

秘書の寮用に購入した土地代の原資4億円がどこから出たのか、政治資金収支報告書に記載されていなかった疑いが持たれている。東京地検特捜部は、小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員を政治資金規正法違反で在宅起訴する方向で検討中だ。小沢氏にも事情聴取に応じるよう要請している。

きのうの会見は「誤解」を解く機会だったはずだ。なのに、小沢氏は「意図的に法律に反する行為はしていないと信じている」と述べただけで、あとは捜査中であることを理由に一切の具体的な説明を避けた。「区切りがついたら」説明したいという。

小沢氏がふつうの民間人なら、そうした対応もありうるだろう。しかし、与党民主党の幹事長、政権一の実力者である。刑事責任を問われる立場になくても政治責任は重い。

石川氏は地検に対し、4億円を小沢氏から受け取ったと説明しているというが、出どころはどこか。土地購入後に、小沢氏が銀行から4億円の融資を受け、陸山会に貸すという複雑な処理をしたのはなぜか。

小沢氏は、事情聴取に応じるつもりかという問いにさえ、差し控えたほうがよいで通した。

公設秘書が逮捕・起訴された西松建設からの違法献金事件を受けて、小沢氏は昨年5月、党代表を辞任した。それと比べても、問題は決して小さくない。西松事件では収支報告書への虚偽記載を問われたが、今回は不記載、つまり報告書に記さない裏のカネの疑惑だからだ。

にもかかわらず、小沢氏の政治責任を問う党内の声が、今回はほとんど聞かれない。小沢氏が鳩山政権への影響力をますます強め、夏の参院選や党運営を一手に仕切る。その威勢を前に、小沢氏にものを言いにくい空気が強まっているのではないだろうか。

自民党は小沢氏らの国会への参考人招致を求めているが、民主党は応じない方向だ。政権公約に掲げた企業・団体献金禁止のための法改正について、鳩山由紀夫首相は通常国会には提出されないとの見方を示している。

首相と幹事長にカネにまつわる問題が続いているのに、自浄作用を働かせようとしているとは思えない。

そんな姿には失望せざるを得ない。まずは、小沢氏がすみやかに全容を語る。参考人招致にも応じる。それが政権交代を選択した人々の期待に応える道だ。

毎日新聞 2010年01月15日

小沢氏側捜索 4億円の真相解明を

民主党の小沢一郎幹事長の個人事務所や、大手ゼネコン「鹿島」の本社や支店に東京地検特捜部の家宅捜索が入った。小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る会計処理の疑惑は急展開を見せた。

陸山会は04年10月、東京都世田谷区に土地を購入した。金融機関から借りた4億円を支払いに充てたとの小沢氏側の従来の説明と異なり、実際には別の金が充てられていたというのが疑惑の核心である。

当時、小沢氏の私設秘書として資金繰りに当たっていた石川知裕衆院議員は、小沢氏の手持ち資金4億円を充てたと特捜部の聴取に話したという。この金は、政治資金収支報告書に記載はない。ならば、どのような性格の金なのか。

特捜部は、小沢氏に直接聞くため事情聴取を要請したが、回答がなく強制捜査に踏み切ったようだ。

陸山会を巡っては、中堅ゼネコン「水谷建設」元幹部が「1億円を小沢氏側に渡した」と供述しているとされる。うち5000万円は土地購入と同じ04年10月に石川氏に渡したと話しているという。

その趣旨は、国が発注した胆沢(いさわ)ダムの下請け工事受注の成功報酬で、鹿島はその元請けだった。こうした工事で小沢氏の事務所が「天の声」を出していた--。特捜部は政治資金規正法違反に問われた小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規被告の公判でそう主張している。

4億円の原資にゼネコンの金が流れた可能性があると特捜部はみているのだろう。押収資料や関係者の聴取を通じ全容を解明してほしい。

小沢氏は12日の会見で、捜査中として事件の説明を避けた。なのに事情聴取に応じず、この展開である。仮に利権で金が動いたとしたら、古い自民党の族政治そのものだ。違うならば、小沢氏は疑惑について国民に説明すべきだ。意図的に法律に反することをしていないならばなおさらである。国会が18日に始まる。野党は、小沢氏の疑惑を徹底追及する構えだ。特捜部の聴取はもちろん、国会で参考人招致の要請があれば応じるべきだろう。金をめぐる自民党の体質を批判してきた野党時代の姿勢とも一貫する。

民主党トップである鳩山由紀夫首相は「コメントをする立場にない」と述べる。党がこの事態を打開する動きを見せないのは、どうしたことか。捜査とは別に調査に乗り出せなければ、政権交代に寄せた国民の信頼を失いかねない。

検察にも注文がある。捜査をみる国民の目はさまざまだ。小沢氏の会見翌日の強制捜査を唐突と受け止める人もいるだろう。こうした不透明感を残さないためにも捜査の節目で一定の説明も必要ではないか。

読売新聞 2010年01月14日

検察「強制捜査」 小沢氏土地疑惑の解明を急げ

小沢民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入疑惑をめぐり、東京地検が政治資金規正法違反容疑で関係先の一斉捜索に乗り出した。

土地購入に充てた資金の解明には、小沢氏の私設秘書だった石川知裕衆院議員らの再聴取だけでなく、強制捜査が欠かせないと判断したためだ。

地検は、捜査を徹底し、全容を明らかにしてもらいたい。

地検の捜索は、陸山会や石川氏の事務所だけでなく、大手ゼネコン「鹿島」も対象となった。

陸山会が購入した東京都内の土地代金の原資について、石川氏は地検の調べに、小沢氏から手渡された現金4億円を充てた、と供述していた。

一方、同時期に「石川氏に5000万円を渡した」とする中堅ゼネコン幹部らの供述もあった。鹿島は、小沢氏の地元のダム工事を受注したゼネコンの一つだ。

公設第1秘書の政治資金規正法違反事件の公判で、地検は、小沢事務所が公共工事への影響力を背景に、ゼネコンから多額の献金を集めていた、と指摘していた。

地検では、土地購入代金にもゼネコンの献金が含まれていたのではないかとみている。

小沢氏は石川氏に4億円を渡したのか。原資はどのように調達したのか。陸山会が複雑な資金移動を繰り返したのはなぜか――。地検は、捜索で押収した資料と石川氏らの聴取結果をもとに、詰めの捜査を進めることになる。

今回の強制捜査には、小沢氏が地検から事情聴取の要請を受けながら、(いま)だに応じていない非協力的な対応も背景にあるようだ。

小沢氏は、12日の記者会見では「捜査中」を理由に、事実関係を一切説明しなかった。

その一方で、「計算ミスやらあったかもしれないが、意図的に法律に反する行為はしていないものと信じる」と釈明したが、とても納得できるものではない。

読売新聞の世論調査によると、小沢氏が説明責任を果たしていないと思う人は、9割に上る。小沢氏はこれを重く受け止め、地検の聴取に応じるとともに、国民への説明責任を果たすべきだ。

それにしても、民主党議員はなぜ、口をつぐんでいるのか。

通常国会では、鳩山首相、小沢幹事長という政府・与党首脳の「政治とカネ」が大きな焦点になる。民主党は、「触らぬ神にたたりなし」という姿勢では困る。党の自浄能力が問われていることを自覚すべきだ。

産経新聞 2010年01月15日

小沢氏土地疑惑 民主党は問題視せぬのか

小沢一郎幹事長の資金管理団体による土地購入疑惑をめぐり、東京地検特捜部による強制捜査が行われたが、民主党内からは表立って小沢氏の関与を問題視する声がほとんど聞かれない。

強制捜査は小沢氏の個人事務所にまで及んだ。与党の最高実力者の事務所に捜査のメスが入るというのは尋常ではない。問題の土地購入も小沢氏が関与したとされ、疑惑の核心といえるのに、本人は政治責任はないと開き直った発言を繰り返している。これで小沢氏が政権政党の幹事長という要職にとどまり続けることが許容される状況なのだろうか。

ところが、党の代表である鳩山由紀夫首相は「全党一丸で乗り越える。小沢幹事長の体制でここまでやってきた。選挙も厳しい中を乗り越えてきた」などと述べ、小沢氏を続投させる考えを示した。党内からも政治責任を問う声が出てこない。不思議なことだ。

民主党内には、改革の理想に燃える議員も少なくないはずだ。この局面で政治姿勢をただす声を上げなければ、今後、どのような政策を掲げようとも国民は信じないだろう。民主党の「良識」をいまこそ見せるべきだ。

鳩山首相は、小沢氏が検察の任意聴取に応じていないことについても「本人の判断次第だ」と述べるにとどめた。これも、あまりに無責任な発言といえる。与党の最高実力者の「政治とカネ」をめぐる問題に、多くの国民が関心を寄せている。政権政党のトップとして、小沢氏への説得を試みるくらいの気概を示してもらいたい。腰が引けているとすれば、首相自身が国民の信頼を失う。

民主党は、昨年の西松建設事件では、第三者委員会を設置して実態に迫ろうとの取り組みをみせたが、今回はそうした動きすらない。検察の捜査とは別に、国会で小沢氏を含む関係者から事実関係を聞き取ることはできる。民主党は自民党の参考人招致要求を拒否する構えだが、理解されまい。これでは「政党ぐるみで疑惑隠しを図ろうとしている」との疑念を深めるばかりだ。

14日には、検察捜査を受けた石川知裕衆院議員の元秘書が自民党の会合で「石川氏に頼まれて証拠資料を隠した」と証言し、国会に参考人として出席する考えも示した。疑惑解明の責任は、民主党だけでなく、国会も負っていることを忘れてはならない。

毎日新聞 2010年01月13日

小沢氏会見 説明責任の放棄では

これで納得しろという方が無理である。民主党の小沢一郎幹事長の資金団体「陸山会」をめぐる会計処理について小沢氏は12日、定例の記者会見で言及したが、まだ東京地検特捜部の捜査が継続中であることを理由に質問にはほとんどまともに答えず、特捜部の事情聴取に応じるかどうかさえ明らかにしなかった。

なぜ、疑問に答えようとしないのか。これでは説明責任を放棄しているに等しく、国民の不信は広がるばかりだろう。

疑問点を改めて整理する。陸山会は04年10月、東京都世田谷区に土地を購入した。不動産会社への支払いなどに当たったのは近く政治資金規正法違反(不記載)で在宅起訴される見通しの小沢氏の元私設秘書、石川知裕衆院議員だ。

小沢事務所側は昨年秋には、資金は会の定期預金を担保に金融機関から借りた4億円を充てたと説明し、会の代表である「小澤一郎」名義で借りたことが政治資金収支報告書にも記載されている。しかし、実際には石川氏が小沢氏から提供された別の4億円が土地代金の支払いに充てられたことが、特捜部の捜査や石川氏の説明などから判明している。これは報告書に記載のない金だ。

やはり、おかしな話だ。石川氏は4億円の定期預金を作るため、土地代金の支払いと同じ日に小沢氏の複数の政治団体から1億数千万円を集め陸山会の口座に入金している。なぜ、こんなややこしい処理をする必要があったのか。小沢氏からの資金だったことを隠すための偽装工作だった疑いが出ている。

土地購入は小沢氏の指示だと石川氏も認めている。ならば、小沢氏は一連の不可解な金銭の出し入れについて本当に何も知らなかったのか。そもそも小沢氏は4億円もの大金をどういう経緯で用意できたのか。その原資は何か--。

それらについて小沢氏は会見で、「計算上のミスやらはあったかもしれない」と話す一方、「意図的に法律に反する行為はしていない」と語った。不記載は認めているのかもしれないが経緯を見れば単なる記載漏れというには説得力が乏しい。一方で昨年の西松建設事件の際に繰り返した検察批判は、この日は控えめで「検察当局においてすべてご存じのこと」などと語るだけだった。

この問題に関して一括して記者側から質問させたうえ、当初、1社1問に限定しようとしたのは国民にきちんと説明する気持ちが元々ないのではないかと疑う。18日からの通常国会で野党が鳩山由紀夫首相の政治資金問題とともに追及するのは確実だ。鳩山政権に大きな火種を残す会見となったのは間違いないだろう。

産経新聞 2010年01月14日

陸山会強制捜査 小沢氏の政治責任は明白 土地疑惑の徹底解明求める

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」による土地購入疑惑で、東京地検特捜部が会計事務担当だった石川知裕衆院議員の事務所や陸山会事務所などの強制捜査に踏み切った。

直接的には、石川氏が平成16年10月の土地購入資金を政治資金収支報告書に記載していなかった政治資金規正法違反(不記載)容疑によるものだ。

だが、この土地購入は小沢氏が指示し、個人資金も提供した。その原資は不透明だ。小沢氏の関与が疑惑の核心といえる。

陸山会に加え、東京都内の小沢氏の個人事務所への家宅捜索も行われた。土地購入に際して違法行為や脱法行為がなかったかどうか、検察当局には徹底した解明が求められている。

最大の問題は、小沢氏の政治責任である。自らの資金管理団体が強制捜査を受けたことの責任はきわめて重大である。違法行為の疑いをもたれたことへの監督責任は免れないからだ。

西松建設の違法献金事件でも、公設第1秘書が規正法違反罪で逮捕・起訴された。資金管理団体でありながら、陸山会が10カ所以上の不動産を購入してきた目的は国会でも疑問視されてきた。

そうした問題を含めて、小沢氏自身の政治資金に対する考え方や取り扱いの是非が問われ、強制捜査に至ったといえる。

与党の最高実力者として、幹事長職にとどまることが許容される状況だろうか。小沢氏を幹事長に起用した鳩山由紀夫首相には、適切な判断が求められる。

◆説明欠く「開き直り」

特捜部の捜査の焦点は、「政治家小沢一郎」をめぐる不透明な資金の流れにあり、そこにメスを入れようとしたものだと受け止められる。

土地購入に関連して、陸山会と関連政治団体との間で複雑な資金移動が行われていた。それが小沢氏の個人資金との関係で「資産隠し」とそのための「偽装工作」が行われていたのではないか、という疑惑さえ招いているからだ。

土地購入をめぐっては、総額10億円以上とみられる資金操作の疑いがあるうえ、石川議員はカネの出どころを隠すために虚偽の説明を行ったとされる。

特捜部はこれまで石川議員に任意の事情聴取を重ねてきたが、事件の徹底解明には強制捜査による家宅捜索が必要と判断したとみられる。石川議員に対する調べを任意から強制捜査に切り替えることも検討されている。

小沢氏は「捜査中だから」という理由で「政治とカネ」にからむ重大な疑惑に対し、正面から答えようとしていない。国政に多大な影響を及ぼす政治家としてきわめて無責任な対応であり、疑問を呈さざるを得ない。

それに加えて、小沢氏は特捜部による参考人聴取の要請に対して、「忙しい」との理由で拒んだままだという。

◆民主は自浄能力発揮を

4億円の個人資金の原資が何なのかなど、小沢氏からの聴取は欠かせない。ゼネコンからの裏献金疑惑も浮上している。

小沢氏は12日の定例記者会見で、陸山会の土地購入疑惑に関する具体的説明を避けた。鳩山首相も、巨額の偽装献金事件で「捜査中」との同じ理由で説明を拒み続けた。政府・与党のトップが2人とも相次いでそうした態度をとることは、政治家自身の倫理にとどまらず、国民の道義心に悪影響を与えないか。政治全体への信頼が失墜することが危惧(きぐ)される。

小沢氏は12日の会見では「私の政治団体の問題で国民に迷惑、心配をおかけして申し訳ない」と陳謝していた。

しかし、強制捜査を受けた13日夕、訪問先での会合では「法に触れることをしたつもりはない。国民も理解しているから政権を与えてくれた」などと語った。政治責任はないと開き直ったように聞こえる発言だ。

自分は「もっともオープンな政治家だ」と日ごろ主張していながら、事が起きると沈黙に徹するギャップは大きすぎる。やはり説明のつかない点があるのか、という疑問をぬぐえない。

この事態を迎えても、民主党は自浄能力を発揮できないのか。党のトップが、説明のつかない土地購入や資金管理で検察当局の強制捜査を受けている。

小沢氏からの説明さえ求めないような空気では、政治とカネに関する正常な感覚を党自体が失っているようにみえる。

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