ロシアによるクリミア半島編入が、他国の領土を力で奪うあしき前例とならぬよう、国際社会は一層結束すべきだ。
日米欧の先進7か国(G7)は、ウクライナ情勢を巡りハーグで首脳会議を開き、編入を「国際法違反」と改めて非難した。ロシアが方向転換するまで、G8サミット(主要国首脳会議)への参加を停止すると決めた。
ロシアが状況を悪化させるなら、現在の制裁に加え、厳しい経済制裁を科すとも警告した。
G7が団結して強い意思を示したことは、ロシアに対するさらなる圧力となろう。
首脳会議で日本は、ウクライナに対して、最大約1500億円の支援を表明した。ウクライナ経済は債務不履行(デフォルト)も懸念される事態だ。情勢安定化のためにも、米国や欧州と共に支援を行うことが不可欠である。
G7の決定に対し、ロシアのラブロフ外相は、「G8に固執しない」と述べ、国連安全保障理事会や、主要20か国・地域によるサミットを重視する意向を示した。
外相が強気の姿勢を崩さない背景には、クリミア編入に対するロシア国民の圧倒的支持がある。
プーチン大統領は、自らの編入戦略が奏功したと受け止め、国際的に多少非難されても、クリミアを手放さないつもりなのだろう。クリミアでは、ウクライナ軍の撤収が決まり、ルーブルが流通し始めるなど「ロシア化」が進む。
懸念されるのは、ロシアがウクライナの東部や南部の国境周辺に軍を集結させていることだ。
ロシアが、クリミア以外のウクライナ国内に軍事的に介入した場合、米国始めG7各国は本格的な経済制裁に乗り出すに違いない。ロシアだけでなく、世界経済に甚大な影響が及ぶのは確実だ。
ロシア系住民の動揺を防ぎ、ロシアに介入の口実を与えないためにも、全欧安保協力機構(OSCE)による国際監視団が一刻も早く、ウクライナに赴き、治安情勢の監視を始めることが必要だ。
クリミア問題は、沖縄県・尖閣諸島周辺で中国による領海侵入を繰り返し受けている日本にとっても重要な意味を持つ。
今回のG7首脳会議で安倍首相が、力を背景とした現状変更は許せない、と踏み込んだ上で、「アジアなど国際社会全体の問題だ」と指摘したところ、複数の国から賛同意見が寄せられたという。
尖閣諸島についても、日本の立場の正当性を主張し、国際的理解を得ていくことが肝要である。
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