対話が正式に再開することは一歩前進だ。
日本人拉致問題で粘り強く交渉し、現状を打開する成果を追求していかねばならない。
日朝両政府が19、20の両日に中国・瀋陽で行った外務省課長級の非公式協議は、「双方が関心を持つ問題」について、局長級の正式な政府間協議を再開することで一致した。
北朝鮮は、拉致被害者の横田めぐみさんの両親と、めぐみさんの娘、キム・ウンギョンさんとの第三国での面会実現に応じるなど、これまでの頑なな姿勢を軟化させているように見える。北朝鮮の出方をさらに見極めたい。
日朝の政府間協議は、野田政権の2012年11月にも行われたが、その直後に北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射したため、中断したままとなっていた。
再開する協議で日本は、北朝鮮が「解決済み」と主張する拉致問題を正式な議題として認めさせる必要がある。全被害者の即時帰国、拉致の真相究明、実行犯の引き渡しに全力を挙げてもらいたい。
まずは、拉致被害者の再調査の実施を確約させるべきだ。
北朝鮮は08年8月に瀋陽で行った日朝の政府間協議で、専門の組織を早期に設置し、拉致被害者の再調査を開始することで合意していた。だが、その後、再調査を一方的に先送りした。
現在の金正恩政権下の北朝鮮では、経済が一層困窮していると言われる。北朝鮮は、協議の中で日本に制裁緩和や支援を求めてくる可能性が極めて高い。
だが、北朝鮮はこれまで拉致問題で不誠実な対応を繰り返してきた。古屋拉致問題相は「拉致被害者が戻って来なければ、制裁解除はおろか1円の支援もない」と強調した。その通りである。
日朝協議では、米国や韓国と懸念を共有する核やミサイル開発なども議論し、包括的な解決を目指す姿勢は堅持すべきである。
北朝鮮の人権侵害に対する国際的な批判の高まりも、日本にとって追い風となろう。
ジュネーブで17日に開かれた国連人権理事会に、国連の調査委員会は、北朝鮮による日本人拉致や政治犯収容所での虐待などを「人道に対する罪」と厳しく糾弾する報告書を提出した。
北朝鮮は、これを「全面的に否定する」と反発したが、国際的孤立は深まっている。日本政府は、引き続き国連という場を有効に活用し、北朝鮮への「圧力」も強める戦略を練ることが重要だ。
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