日朝協議再開へ 拉致被害者の再調査を起点に

読売新聞 2014年03月21日

日朝協議再開へ 拉致被害者の再調査を起点に

対話が正式に再開することは一歩前進だ。

日本人拉致問題で粘り強く交渉し、現状を打開する成果を追求していかねばならない。

日朝両政府が19、20の両日に中国・瀋陽で行った外務省課長級の非公式協議は、「双方が関心を持つ問題」について、局長級の正式な政府間協議を再開することで一致した。

北朝鮮は、拉致被害者の横田めぐみさんの両親と、めぐみさんの娘、キム・ウンギョンさんとの第三国での面会実現に応じるなど、これまでの(かたく)なな姿勢を軟化させているように見える。北朝鮮の出方をさらに見極めたい。

日朝の政府間協議は、野田政権の2012年11月にも行われたが、その直後に北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射したため、中断したままとなっていた。

再開する協議で日本は、北朝鮮が「解決済み」と主張する拉致問題を正式な議題として認めさせる必要がある。全被害者の即時帰国、拉致の真相究明、実行犯の引き渡しに全力を挙げてもらいたい。

まずは、拉致被害者の再調査の実施を確約させるべきだ。

北朝鮮は08年8月に瀋陽で行った日朝の政府間協議で、専門の組織を早期に設置し、拉致被害者の再調査を開始することで合意していた。だが、その後、再調査を一方的に先送りした。

現在の金正恩政権下の北朝鮮では、経済が一層困窮していると言われる。北朝鮮は、協議の中で日本に制裁緩和や支援を求めてくる可能性が極めて高い。

だが、北朝鮮はこれまで拉致問題で不誠実な対応を繰り返してきた。古屋拉致問題相は「拉致被害者が戻って来なければ、制裁解除はおろか1円の支援もない」と強調した。その通りである。

日朝協議では、米国や韓国と懸念を共有する核やミサイル開発なども議論し、包括的な解決を目指す姿勢は堅持すべきである。

北朝鮮の人権侵害に対する国際的な批判の高まりも、日本にとって追い風となろう。

ジュネーブで17日に開かれた国連人権理事会に、国連の調査委員会は、北朝鮮による日本人拉致や政治犯収容所での虐待などを「人道に対する罪」と厳しく糾弾する報告書を提出した。

北朝鮮は、これを「全面的に否定する」と反発したが、国際的孤立は深まっている。日本政府は、引き続き国連という場を有効に活用し、北朝鮮への「圧力」も強める戦略を練ることが重要だ。

産経新聞 2014年03月23日

日朝協議再開 「拉致」の進展が不可欠だ

日本と北朝鮮の局長級の正式な政府間協議が今月末、1年4カ月ぶりに、中国・北京で開催される。日本人拉致問題も議題に取り上げる。

公式の政府間協議は第2次安倍晋三政権発足後初めてだ。安倍首相は「拉致問題は安倍政権で必ず解決する」と繰り返し述べている。その足がかりとなることを願いたい。

拉致被害者の帰国などに向けた実質的な交渉に入らなければ意味はない。まず、北朝鮮に「解決済み」の立場を撤回させ、再調査を確約させなければならない。

拉致された横田めぐみさん=拉致当時(13)=の両親が先ごろ、めぐみさんの娘とモンゴルで面会し、帰国後、喜びを語った。

だが、めぐみさんに関する新たな情報は伝えられておらず、拉致問題が進展したわけではない。真相究明、めぐみさんを含む被害者全員の帰国も粘り強く求めていくべきだ。

日朝政府間協議の再開は、日朝赤十字会談と並行して中国・瀋陽で行われた外務当局者の非公式協議で合意した。

北朝鮮が経済的な「見返り」を求めて駆け引きを仕掛けてくるのは間違いない。北の経済はどん底の状態にある。交渉の好機だが、成果をあげることに逸(はや)って、譲歩をするのは禁物だ。

安倍首相は参院予算委員会で、北朝鮮に対する「対話と圧力による一貫した姿勢」を強調した。北の非を国際世論に訴え、制裁を継続し、強い圧力をかけ続けなければならない。

その意味で、国連人権理事会の調査委の報告書が拉致を国家による組織的な人権侵害と認定し、「人道に対する罪」だと断じたのは大きな効果をもたらすだろう。日本が主導して厳しい内容の関連決議を採択し、北指導部の責任を追及すべきだ。

北朝鮮は、南北離散家族再会事業の再開など、韓国にも対話攻勢を仕掛けている。韓国からも「見返り」をもらう思惑だ。

北朝鮮の暴走を食い止めるには、日米韓の結束が何より重要だ。一国の譲歩で足並みが乱れることがあってはならない。日米韓首脳会談では改めて、北に対する固い結束を示してほしい。

日本は核・ミサイル開発問題も議題として北朝鮮に放棄を求め、米韓と緊密な連絡を取りながら政府間協議を進めるべきだ。

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