朝日新聞 2014年03月21日
日米韓会談 好機を無駄にするな
一衣帯水の日本と韓国の首脳のことばが響き合うのは、実に久しぶりのことだった。
「安倍内閣で河野談話を見直すことは考えていない」
「幸いなことだと思う」
先週の参院予算委で、安倍首相が慰安婦問題をめぐる河野談話の見直しを明確に否定し、朴槿恵(パククネ)大統領がこれを評価した。
そして来週、オランダのハーグで開かれる核保安サミットで、日米韓の首脳会談が開かれる方向となった。
安倍首相と朴大統領が話し合いのテーブルにつくのは初めてである。日韓関係の修復になんとしてもつなげるべきだ。
首相は予算委で、「戦後50周年には村山談話、60周年には小泉談話が出された。安倍内閣としては、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」とも語った。
ふたつの談話は「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」との立場を明確にし、近隣諸国との新たな関係づくりに向けた日本の決意を示した。
河野談話とともに、日本の対アジア外交の基盤となってきたものであり、見直すべきでないのは当然だ。
歴史問題がくすぶるなか、おととしの李明博(イミョンバク)前大統領の竹島上陸でつまずいた日韓関係は、両国の政権が代わっていっそうこじれてしまった。
安倍首相らの歴史認識をめぐる発言や靖国神社参拝。かたやオバマ米大統領らに日本の非を訴えるばかりで、対話に応じようとしない朴大統領の姿勢。
東アジアの安定には日韓関係の改善が欠かせないと考える米国は、バイデン副大統領らが直接、間接に仲介を試みてきた。両首脳の発言の陰にはこうした米国の意向もちらつく。
首相の答弁には、ネット上などで批判があがっている。河野談話の見直しや撤回を求める声が国会の内外にあることを考えれば、予想された反応だ。
その意味で、安倍首相はそれなりのリスクをとった。同じことは朴大統領にも言える。
互いの国民の一部が反目し、非難の応酬に熱くなっている。そんな時こそ、より冷静になれる指導者であってほしい。
首相も大統領も、そのことばが本心から出たものなのかはわからない。一度会って関係が好転するというほど、ことは単純ではないだろう。
それでも、機を逃さずに日韓関係を前へ進めることが、両首脳の外交上の責務だ。米国に義理立てした、一度限りの会談にしてはならない。
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毎日新聞 2014年03月20日
慰安婦と日韓 対話重ねて打開の道を
従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話をめぐる議論が再燃している。
安倍政権は、談話の作成過程を検証することを決めたが、談話自体は継承する方針だ。安倍晋三首相も参院予算委員会で「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言した。河野談話は未来志向の日韓関係の原点であり、継承は当然のことだ。
首相の発言を受け、オランダで来週開かれる核安全保障サミットにあわせて、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が日米韓3カ国首脳会談に応じるかどうか、ぎりぎりの調整が続いている。
北朝鮮の核開発、中国の海洋進出など日米韓が協調して取り組むべき安全保障上の課題は山積している。米国も開催を強く働きかけている。韓国は会談を受け入れるべきだ。
これまで韓国は、日本との首脳会談に応じる条件として、正しい歴史認識と誠意ある対応を求めてきた。
歴史認識に関し安倍首相は、河野談話見直しを否定し、日本の植民地支配と侵略を謝罪した95年の村山富市首相談話についても「全体として引き継いでいる」と述べた。朴大統領は「幸いに思う」と評価した。
しかし、もう一つの条件だった慰安婦問題などでの誠意ある対応は、調整が難航した。日本側は、両国の外務省局長級協議を設けて話し合おうと提案したが、韓国は国の責任を認めるよう求めたようだ。
韓国の要求は日本には受け入れられない。65年の日韓国交正常化に伴う協定で、慰安婦問題も含めて日韓の補償問題は法的に解決されているというのが日本側の立場だからだ。それでも90年代に慰安婦問題が外交問題化すると、日本政府は国家補償には応じない前提で、河野談話を出し、95年には「アジア女性基金」を設立して元慰安婦に償い金と首相のおわびの手紙を届けた。日本なりにできることをやってきた。
こうした経緯があるにもかかわらず、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が建てられ、韓国政府は黙認した。米国でも慰安婦像が設置され、日本が謝罪も補償もしていないという誤ったイメージが伝えられている。安倍政権による河野談話検証の背景には、こういう現状への日本国民の不快感があるのは否定できない。
日本が歴史に謙虚でなければならないのはもちろんだ。だが、韓国も反日感情から歴史認識で強硬姿勢を取るあまり、日本の嫌韓感情を育てることのないよう注意してほしい。
日米韓首脳会談を実現し、2国間の首脳会談につなげよう。両国が対話を重ねることで、慰安婦問題の対立を乗り越える道をともに見いだしていきたい。
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読売新聞 2014年03月25日
中韓首脳会談 鮮明になった「反日共闘」路線
中国と韓国が、歴史問題で「反日共闘」路線をますます鮮明にしてきたと言えよう。
中国の習近平国家主席と、韓国の朴槿恵大統領がオランダ・ハーグ郊外で会談し、中国黒竜江省のハルビン駅に開設した朝鮮独立運動家・安重根の記念館の意義を強調した。
韓国側によると、記念館開設について、習氏は「私が直接指示した」と語り、朴氏も「両国民の結び付きを強める」と応じた。
習氏は、朴氏に対して、韓国民が支持する対日強硬路線で共闘を持ちかけて、韓国を引きつけようとしているのではないか。
安重根は、初代首相の伊藤博文を暗殺した人物であり、記念館開設を称賛するのは、日本にとって受け入れ難い。
習氏には、25日に予定される日米韓首脳会談をにらみ、3国連携にくさびを打ち込む狙いがあったに違いない。日韓関係が悪化する中で、米国の仲介努力によってようやく実現する日米韓首脳会談に冷や水を浴びせる形になった。
菅官房長官が、こうした中韓のやり取りを「一方的評価に基づく主張」と断じて、地域の平和と協力の構築にとってマイナスだと指摘したのも、もっともである。
中韓首脳会談で習氏は、日本の植民地統治期に「光復軍」と呼ばれる朝鮮の抗日部隊が駐屯したという陝西省西安に石碑を建設中だと述べた。朴氏が要望したものだ。光復軍の実態は定かではないが、反日の新たな象徴となろう。
朴氏が、中国と足並みをそろえているのも気がかりだ。日本を差し置いて習氏とは何度も会談している。中国との関係強化が、対北朝鮮政策や、経済協力でも重要であると考えているのだろう。
これと対照的に、日本に対しては、いわゆる従軍慰安婦問題などで条件を付けて、日韓首脳会談の開催を事実上拒んでいる。
良好な日韓関係なしには、米国を要とする日米及び米韓同盟が有効に機能しないのは明らかだ。
歴史を巡る中韓連携は、今後さらに強まることが懸念される。
中国の裁判所は先に、戦時中、強制連行された中国人元労働者らが日本企業を相手取り、謝罪と損害賠償を求めた訴状を初めて受理した。韓国でも元徴用工が同様の裁判を起こしている。
いずれも、日本との国交正常化の際の約束を根底から揺るがす恐れがあり、容認できない。日本は、中韓両国だけでなく国際社会に対しても、法的な正当性を主張していくことが肝要である。
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産経新聞 2014年03月22日
日米韓首脳会談 和解儀式で終わらせるな
オランダで開かれる核安全保障サミットの際に、日米韓3カ国の首脳会談を開催することが決まった。歴史問題を理由に安倍晋三首相との会談を拒み続けてきた韓国の朴槿恵大統領が、会談を受け入れたためだ。
隣国の首脳同士が就任から1年以上たっても会談できない異常事態が、米国の「介添え」付きとはいえ、ひとまず解消されることを歓迎したい。だが、完全な関係正常化とはいえず、楽観はできない。
地域の安定にとって、3カ国はもとより日韓2国間でも首脳レベルで緊密な意思疎通を図ることが欠かせないのに、その実現のメドは立っていないからである。
今回、会談を受け入れた朴大統領には、現実的な判断に立ち、関係改善に向けてさらにかじを切ってもらうことを期待したい。定期的な首脳会談開催への道筋を整えることが何よりも必要だ。
3カ国会談には、オバマ米大統領の強い要請があった。米国は、「日米韓の強力な関係が北朝鮮の挑発を抑止する重要な要素」(国防総省高官)とみており、悪いままの日韓関係が続くのは安全保障上の大きな懸念と判断した。
日韓も核、ミサイル開発を続ける北朝鮮や中国の軍事的台頭を受け、同様の認識をもっていたはずで、米国の仲介によらなければ会談にこぎつけられないというのは残念だった。
3カ国会談では、歴史問題を主要議題にしないとされるが、単なる関係改善の「セレモニー」で終わらせず、緊急な課題で実りある議論を展開してほしい。
韓国側は、3カ国首脳会談への参加決定前まで、歴史問題をめぐる日本側の「誠意ある対応」を求めると強調していた。具体的には、慰安婦をめぐる金銭補償を意味するものだ。
この問題で「完全かつ最終的に解決済み」という立場を日本は変えるわけにいかない。両国間で実務者協議を続けるとしても早急に解決策を見いだすのは困難だ。
韓国側は今後も歴史認識や補償にこだわり続けるだろうが、それがために安全保障、経済を含む多くの分野で協力や交流を滞らせることがあってはなるまい。
経済連携協定(EPA)などをめぐる協議も進めなければならない。首脳会談には、こうした連携を加速する役割も込められていることを韓国は認識してほしい。
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