日米韓連携 朴政権の「頑なさ」に驚く

朝日新聞 2014年03月27日

日米韓会談 「第一歩」とするには

安倍首相のにこやかな顔と、朴槿恵(パククネ)大統領のこわばった表情が対照的だった。

オバマ米大統領の仲介による3カ国の首脳会談がオランダ・ハーグで開かれた。

安倍、朴両氏が協議の席に着くのは初めてのことだ。深まってしまった両国間の溝を埋め、関係改善への歩みを進めていくことが両首脳の責任だ。

約45分間の短い会談で話し合われたのは、おもに北朝鮮の核・ミサイル開発への対応だ。3人の首脳は、連携を強化していくことで一致した。

さて、今回の会談をどう見るべきか。

なにしろ就任から1年以上経ってもテーブルに着けなかった日韓両首脳である。ともあれ会談にこぎつけたことをよしとするのか。それとも、米国の力の入れようとは裏腹に成果は乏しかったとするか。両様の見方はできるだろう。

肝心なのは、会談後に安倍首相が強調したように「未来志向の日韓関係に発展させていく第一歩」にできるかどうかだ。

会談の実現に向け、首相は慰安婦問題をめぐる河野談話を「安倍内閣で見直すことは考えていない」と答弁した。

ところが、「自民党総裁特別補佐」の肩書を持つ萩生田光一衆院議員は、談話の検証で新たな事実が出てくれば「新たな政治談話を出すことはおかしなことではない」と語った。

首相答弁には一部から強い批判が起きた。萩生田発言は、こうした批判に対し「首相の本心は違う」と釈明したのだと受け取られても仕方がない。

安倍首相は会談の冒頭、朴大統領に「お会いできてうれしい」と韓国語で呼びかけた。

気遣いもいいが、「未来志向」というならば、まずは首相自身がその中身を示していかねばならない。

一方、朴大統領はわざわざ会談の直前にドイツ紙のインタビューに答え、歴史問題での安倍政権の姿勢を非難した。

外に向かって言うよりも、お互いの目を見て語り合う。これが責任ある首脳の態度ではないだろうか。

3首脳がハーグで顔を合わせているまさにその時に、北朝鮮は中距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。日米韓の連携が重要なのは明らかだ。

この会談をオバマ大統領の顔を立てただけの記念撮影会に終わらせてはならない。

日米韓の実務的な協議に引き継ぐとともに、日韓2国間の首脳会談の実現に向け、地ならしを急ぐべきだ。

毎日新聞 2014年03月27日

日米韓首脳会談 米国頼みはもうできぬ

安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領がオランダで、オバマ米大統領の仲介により、就任以来初めて正式に会談した。北朝鮮の核・ミサイル開発を中心とする東アジアの安全保障に議題を絞り、歴史認識や集団的自衛権には触れないという限定的な内容だった。日韓の2国間会談や関係改善への見通しは立たないままだが、とりあえず一歩を踏み出した。この動きを着実に進展させるよう日韓両国はさらに努力すべきだ。

日韓が歴史に向き合うのは大切なことだ。しかし、過去にだけ目を向けていられるほど、両国を取り巻く安全保障環境は甘くない。北朝鮮情勢は金正恩(キム・ジョンウン)体制になって以降、一層不透明さを増している。

会談が開催されたのと同じ時間帯に、北朝鮮は「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイル2発を発射した。ノドンは最大射程約1300キロで、日本のほぼ全域を射程に収める。2発は朝鮮半島を横断して約650キロ飛び、日本海の公海上に落ちた。

日米韓3カ国をけん制する狙いだろう。発射は、国連安全保障理事会決議や日朝平壌宣言に違反する。3カ国政府が厳しく批判したのは当然のことだ。

3首脳が会談で北朝鮮の非核化を実現するために日米韓が緊密に連携することや、中国の役割の重要性を確認したことは有意義だった。6カ国協議の日米韓首席代表による会合の早期開催や、3カ国の外交・防衛当局による協議の必要性なども話し合われた。ぜひ実現させてほしい。

日米韓が取り組むべき安全保障上の課題は、北朝鮮情勢にとどまらない。ロシアによるウクライナ南部のクリミア編入のように、東アジアでも、海洋進出を強める中国が力を背景にした現状変更に出ないよう、日米韓が果たす役割は大きい。

従軍慰安婦などの歴史認識は会談では封印したが、依然、この問題をめぐる日韓の溝は深い。中韓首脳会談で両首脳は対日共闘を確認しており、戦後70年の来年に向けてそうした動きが強まる可能性もある。

日韓両政府間では、慰安婦問題について近く外務省局長級協議を設けて話し合う案が浮上している。日本は慰安婦問題を含む戦後補償について法的に解決済みとの立場だが、そのうえで対立を乗り越えるために互いに何ができるのか、両政府で胸襟を開いて話し合ってもらいたい。

日米韓首脳会談は、4月にオバマ大統領の日韓訪問を控え、両国関係の悪化を懸念した米国のあっせんで、ようやく実現した。だが、もう米国頼みは許されない。今回の会談を第一歩にして、両国は東アジア地域の安定の土台となる関係を自分たちの手で早急に再構築すべきだ。

読売新聞 2014年03月27日

日米韓首脳会談 「北」の核放棄へ連携取り戻せ

日米・米韓同盟を再び重層的に機能させることが肝要である。

安倍首相、オバマ米大統領、韓国の朴槿恵大統領がオランダ・ハーグで会談し、北朝鮮の核問題で日米韓の連携を強化することで一致した。中国が相応の役割を果たすことの重要性も確認した。

米国の仲介で、安倍首相と朴大統領の初会談が実現したことを、ひとまず歓迎したい。日米韓の足並みが乱れていては、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮に、効果的な対処はできない。

北朝鮮が会談に合わせて中距離弾道ミサイル・ノドン2発を発射したのは、日米韓に対する牽制(けんせい)だけでなく、自らの孤立化への焦りと見ることもできよう。

北朝鮮に核放棄を迫るには、日米韓の外交・防衛当局の実質的協力を深め、中国などとの北朝鮮包囲網を再構築する必要がある。

来月下旬には、オバマ大統領の日韓歴訪が予定される。北東アジアの平和と安定に向けて日米韓の結束を強める機会としたい。

安倍首相は会談で、日本人拉致問題でも米韓との協調を重視する考えを示した。拉致問題の前進へ、3か国の連携を基盤とし、「対話と圧力」による北朝鮮への働きかけを強化することが大切だ。

首相は、中国の名指しを避けながらも、「力を背景とした現状変更」を許さない考えも強調した。これは重要な論点である。

中国は、軍備を増強し、東・南シナ海で領土や海洋権益の拡大を図る動きを見せている。

中国が、ロシアのクリミア編入と同様の冒険主義に走らないよう抑止するには、日米韓が「力による現状変更」を看過しないとの共通認識を持ち、中国に責任ある行動を促すことが欠かせない。

日米韓首脳会談では、いわゆる従軍慰安婦や歴史認識の問題は議題とならなかった。こうした懸案は、やはり日韓間で対話を重ね、接点を模索するしかない。

朴大統領は今回、米国の顔を立てる形で会談に応じたが、日韓首脳会談については、依然、慰安婦問題での「誠意ある措置」などの条件を付けている。その(かたく)なな態度は変わっておらず、日韓関係の修復への道は遠い。

元慰安婦などの個人の賠償問題は、日韓国交正常化時に解決済みで、日本も安易な譲歩はできない。ただ、首脳会談が開けない現状は日韓双方にマイナスだ。

まずは局長級協議などを通じて日韓が知恵を出し合い、関係改善を図ることが求められる。

産経新聞 2014年03月28日

北の弾道ミサイル 毅然と局長級協議に臨め

日米韓首脳会談の開催に合わせ、北朝鮮が発射した弾道ミサイル「ノドン」は最大射程1300キロで日本のほぼ全域を射程に収める。わが国の安全を根底から脅かす暴挙を許してはならない。

国連安全保障理事会が北朝鮮にすべての弾道ミサイル開発計画や発射を禁じた決議違反として緊急会合を開き、非難声明を出す方向で調整に入ったことも事態の重大さを示している。国際社会として、改めて北朝鮮に自制を求める圧力を高めなければならない。

日本政府が外交ルートを通じて北朝鮮に厳重抗議したのは当然だが、30日からの日朝局長級協議での対応が極めて重要である。

協議を予定通り開催する理由について、菅義偉官房長官は「拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決したいとの安倍晋三政権の思いがある」「協議の中で堂々と抗議する」などと語った。

今月中旬には、拉致被害者の横田めぐみさんの両親、滋さん、早紀江さん夫妻と、めぐみさんの娘、キム・ウンギョンさんの面会が実現し、対話の機運は高まっている。北朝鮮が「解決済み」としてきた拉致事件の進展への被害者家族の期待も大きい。

政府が対話の機運を逃したくないと考えるのは理解できる。しかし、ミサイル発射を協議の場で直接抗議しても、北朝鮮側が非を認め、謝罪するだろうか。そもそも拉致問題で北朝鮮が再調査を確約する保証などもない。

北朝鮮は、金正恩第1書記の側近だった張成沢元国防副委員長の処刑以降、中国との関係が悪化して孤立を深めているとみられる。日本との対話に積極性をみせる背景にもなっているのだろう。

だが、協議相手の方角にミサイルを撃つような国と、経済協力に関するまともな話し合いなどできない。その点を曖昧にして協議を進めてはならない。平成24年12月、北朝鮮が弾道ミサイル発射を予告した際には、当時の民主党政権は局長級協議を延期した。

交渉の主導権を握られることなく、北朝鮮の対応次第では協議の打ち切りも辞さない毅然(きぜん)とした姿勢で臨む必要がある。

今回のミサイル発射を自衛隊レーダーはとらえていたというが、政府から国民への説明は足りない。夜間の予告なしのミサイル発射にどう対応していくかという具体的な検討も不可欠だ。

朝日新聞 2014年03月25日

核物質管理 不拡散の責務自覚せよ

国際テロ集団による核テロの脅威にどう立ち向かうか。

オランダできのう始まった核保安サミットは、原爆や水爆の原材料となる核物質が世界にちらばっている危うい現状を改めることに狙いがある。

その中で日本政府は、茨城県東海村の研究施設にある高濃縮ウランやプルトニウムを米国に引き渡す方針を表明する。

日本はこれまで原子炉の研究に必要と主張してきたが、核テロ対策の国際機運を高める責務は重い。核物質を減らす努力を今後も加速すべきだ。

世界を見渡せば、米国と旧ソ連が冷戦時代、それぞれの陣営内の国々に結束の象徴のように核物質を供与していた。その多くは今も散在している。

その回収の流れが強まったのは09年にオバマ米政権が「核なき世界」を打ち出してからだ。ウクライナやメキシコ、台湾など10以上の国・地域から兵器級の物質が引き揚げられている。

核大国による兵器削減は進んでいないが、核物質の回収が各地で進められているのは、せめてもの前進といえるだろう。

被爆国の日本は、そうした核の危険を減らす努力の先頭に立たねばならないはずだが、逆に大きな問題を抱えている。

国際NGOの核脅威削減イニシアチブ(NTI)が一昨年、1キロ以上の兵器級核物質を保有する32カ国の核テロリスクを評価したところ、日本は23位。先進7カ国では最悪だった。

独立性の高い原子力規制委員会の誕生や、原発の新規制基準によるテロ対策強化で今年は25カ国中13位に浮上したが、核物質が減少傾向にあるかどうかでは前回同様0点だった。

いつ使うか分からないプルトニウムをもう何年間も、40トン以上保有しているからだ。原発の使用済み燃料から海外でプルトニウムを取り出し、混合燃料にして日本に送り返す輸送が大きなリスクとされる。

日本は米国との協定で、自分でプルトニウムを取り出す再処理が特例的に認められてきた。だが、原発事故以来、混合燃料を原発で燃やし、効果的に減らす展望はなくなった。

そのうえ再処理工場を本格稼働させて、プルトニウムをさらに上積みすれば、国際社会はどんな目を向けるだろうか。

イランなど新規開発国には認めないのに、日本が余剰物質を抱え込むことは世界の核拡散防止の取り組みに水を差す。

再処理には見切りをつけるべきだ。プルトニウムは責任ある国々で処理するなど、現実的な削減策を示さねばならない。

毎日新聞 2014年03月22日

核安保サミット 国際協力を緩めるな

ウクライナ情勢をめぐり米国・欧州連合(EU)とロシアが制裁合戦を繰り広げる中、米露や日本を含めて50を超える国々が核テロへの対応などを話し合う。オランダのハーグで24、25の両日開催される核安全保障サミットだ。新冷戦ともいわれる対立状況が討議に影を落とすことも心配されるが、核テロ防止へ着々と築いてきた国際協力を、ここで緩めては元も子もない。

このサミットは「核兵器のない世界」を訴えたオバマ米大統領の呼びかけで2010年から2年に1度開かれてきた。核兵器の削減は大事だが、各国が協力して核物質の管理を徹底し、テロ組織などに渡らないようにしないと世界は安全にならないという発想に立つ。旅客機を使って世界を驚かせた01年の米同時多発テロ以降、「次は核を使うテロが起きるのでは?」という不安が現実味を増したのである。

専門家によると、プルトニウムなら8キロ、高濃縮ウランなら25キロ程度あれば理論的には核兵器を作れる。一方、世界にはプルトニウムが約500トン、高濃縮ウランは約1400トンもあるという(10年末時点)。また、核物質を使って放射能汚染を引き起こす「汚い爆弾」は核兵器に比べて製造が容易だし、近年は原発へのテロやサイバー攻撃も大きな懸念材料になっている。

サミットではこうした問題について首脳らが取り組みを話し合い、ハーグ・コミュニケとして集約する。唯一の被爆国である日本からは安倍晋三首相が出席し、保有する核物質の「最小化と適正管理」や原発のテロ対策などを通じて「世界一安全な日本」の創造を訴える。その具体的な行動として、1960年代に米国から研究用に提供された高濃度プルトニウムを返還することで米側と合意する見通しだ。

他方、過去2回の同サミットに大統領を送ったロシアは今回、プーチン大統領が出席しない見通しで、足並みの乱れも目につくのは残念だ。オバマ大統領はサミット中に先進7カ国(G7)首脳会議を主宰し、ロシアに対する「さらなる行動」やウクライナへの支援を討議する方針で、日本を含むG7とロシアの関係悪化は避けられそうもない。

さらに日米韓首脳会談や米中首脳会談も開かれる予定で、一連の重要会合によってサミットそのものがかすむ恐れもある。が、ここは13年前のテロを思い出して「初心」に帰るべきだろう。核テロは決して絵空事ではないし、大国の対立に乗じてテロ組織が暗躍する側面もある。米欧とロシアの対立は当面続くとしても、恐ろしい未来を招かぬための、大局的な協力関係が必要だ。

読売新聞 2014年03月27日

核安全サミット テロ防止に問われる管理強化

核テロの脅威に立ち向かうには、各国が連携して核物質の管理を徹底することが欠かせない。

核安全サミットが、オランダ・ハーグで、先進国や新興国など50か国以上の首脳らを集めて開かれ、共同声明を採択した。

共同声明は、テロリストによる核物質入手の阻止を最重要課題に掲げている。その上で国際原子力機関(IAEA)が策定した核物質や核関連施設の防護に関する指針の受け入れを各国に促した。

IAEAによると、核物質や放射性物質の違法取引や盗難、紛失は昨年だけで146件に上る。核テロが起きる可能性は否定できず、各国には指針に沿った実効性ある対応が求められよう。

声明が、各国に対し、核兵器への転用可能な高濃縮ウランやプルトニウムの保有量を最小限とするよう要請したことも重要である。それぞれの保有量を抑えて、テロリストへの流出を防ぐ狙いだ。

過剰な核物質は国外に搬出し、責任を持って処理する能力のある米国のような国の管理下に置くことが望ましい。

声明の趣旨に沿って、イタリアやベルギー、韓国などが、不要なプルトニウムや高濃縮ウランの国内からの撤去を表明した。

日本も、日本原子力研究開発機構が高速炉臨界実験装置で使ってきた高濃縮ウランとプルトニウム数百キロを撤去し、米国に引き渡すことで合意したと発表した。

「利用する目的のないプルトニウムは持たない」との日本政府の原則にかなう措置とも言える。

今回のサミットで、安倍首相は東京電力福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ、「日本には核安全の強化を主導する責任がある」との決意を示した。

唯一の戦争被爆国であり、原子力の平和利用で先進的な技術を持つ日本は、この分野でも積極的に役割を果たすべきだ。

核安全サミットは、「核のない世界」の実現を目標に掲げたオバマ米大統領の提唱で4年前に始まり、核テロ防止などに一定の成果を上げてきた。ただ、核兵器そのものの削減が遅々として進んでいないのは問題である。

気がかりなのは、核拡散防止条約(NPT)で核兵器の保有を認められた米英中仏露5か国のうち中国だけが核兵器の保有量を増やしているとされることだ。

中国は、世界の安全保障環境の不安定要因となっている核軍拡をやめ、他の保有国とともに核兵器を削減していかねばならない。

産経新聞 2014年03月27日

日米韓首脳会談 相違乗り越え連携強化を

オバマ米大統領の仲介努力で、安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領がオランダのハーグで、就任以来、初めて正式に会談した。日米韓3カ国が、ともに連携強化を再確認する第一歩となったことの意義は大きい。

これを単なる儀式に終わらせることなく、朝鮮半島有事に備えて軍事情報の共有など、実効性のある協議につなげてほしい。

折から北朝鮮は、事前通知なしに弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。韓国に加え日本も射程に入る中距離ミサイル「ノドン」とみられる。北朝鮮問題を話し合う3カ国会談を牽制(けんせい)したことは明らかだ。地域の平和を乱す暴挙を許してはならない。日米韓は一致して圧力を強化すべきだ。

朴氏は会談で「3カ国が北朝鮮の核問題を話し合うこと自体、非常に意味がある」と語ったが、一方で、会談では議題に上らなかった歴史認識に関する頑(かたく)なな態度を改めたわけではない。

同じハーグで行われた中国の習近平国家主席との会談で朴氏は、伊藤博文元首相を暗殺した安重根の記念館開設を友好の象徴だと評価した。独紙には、慰安婦問題で金銭補償を意味する「誠意ある措置」を日本側がとるべきだとの考えを強調した。

4月中旬にも行われる日韓局長級協議では歴史問題も協議される見通しだが、日本側が金銭補償などで譲歩する必要はない。朴氏や韓国側には、相違を乗り越えて連携を深める重要性を認識し、有事をにらんだ真の国益を顧みる冷静な判断こそが求められる。

朝鮮半島有事の際に真っ先に動くのは、在韓、在日米軍である。3カ国の緊密連携は欠かせない。まず、日韓で軍事機密を提供しあう秘密情報保護に関する協定の締結が急がれる。

安倍首相は3カ国首脳会談後に短い時間ながら、オバマ氏と単独で会談し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の妥結交渉を加速させることで一致した。靖国神社への参拝などをめぐり、すき間風も吹いた米国との関係修復を図る格好の機会となった。

米中首脳会談でオバマ氏は、習氏に対して「日本の安全保障の確保を支援する」と告げた。異例の言及だったといえる。台頭する中国への危機感を日米の両首脳が共有している証しと受け止め、率直に評価したい。

朝日新聞 2014年03月21日

日米韓会談 好機を無駄にするな

一衣帯水の日本と韓国の首脳のことばが響き合うのは、実に久しぶりのことだった。

「安倍内閣で河野談話を見直すことは考えていない」

「幸いなことだと思う」

先週の参院予算委で、安倍首相が慰安婦問題をめぐる河野談話の見直しを明確に否定し、朴槿恵(パククネ)大統領がこれを評価した。

そして来週、オランダのハーグで開かれる核保安サミットで、日米韓の首脳会談が開かれる方向となった。

安倍首相と朴大統領が話し合いのテーブルにつくのは初めてである。日韓関係の修復になんとしてもつなげるべきだ。

首相は予算委で、「戦後50周年には村山談話、60周年には小泉談話が出された。安倍内閣としては、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」とも語った。

ふたつの談話は「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」との立場を明確にし、近隣諸国との新たな関係づくりに向けた日本の決意を示した。

河野談話とともに、日本の対アジア外交の基盤となってきたものであり、見直すべきでないのは当然だ。

歴史問題がくすぶるなか、おととしの李明博(イミョンバク)前大統領の竹島上陸でつまずいた日韓関係は、両国の政権が代わっていっそうこじれてしまった。

安倍首相らの歴史認識をめぐる発言や靖国神社参拝。かたやオバマ米大統領らに日本の非を訴えるばかりで、対話に応じようとしない朴大統領の姿勢。

東アジアの安定には日韓関係の改善が欠かせないと考える米国は、バイデン副大統領らが直接、間接に仲介を試みてきた。両首脳の発言の陰にはこうした米国の意向もちらつく。

首相の答弁には、ネット上などで批判があがっている。河野談話の見直しや撤回を求める声が国会の内外にあることを考えれば、予想された反応だ。

その意味で、安倍首相はそれなりのリスクをとった。同じことは朴大統領にも言える。

互いの国民の一部が反目し、非難の応酬に熱くなっている。そんな時こそ、より冷静になれる指導者であってほしい。

首相も大統領も、そのことばが本心から出たものなのかはわからない。一度会って関係が好転するというほど、ことは単純ではないだろう。

それでも、機を逃さずに日韓関係を前へ進めることが、両首脳の外交上の責務だ。米国に義理立てした、一度限りの会談にしてはならない。

毎日新聞 2014年03月20日

慰安婦と日韓 対話重ねて打開の道を

従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話をめぐる議論が再燃している。

安倍政権は、談話の作成過程を検証することを決めたが、談話自体は継承する方針だ。安倍晋三首相も参院予算委員会で「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言した。河野談話は未来志向の日韓関係の原点であり、継承は当然のことだ。

首相の発言を受け、オランダで来週開かれる核安全保障サミットにあわせて、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が日米韓3カ国首脳会談に応じるかどうか、ぎりぎりの調整が続いている。

北朝鮮の核開発、中国の海洋進出など日米韓が協調して取り組むべき安全保障上の課題は山積している。米国も開催を強く働きかけている。韓国は会談を受け入れるべきだ。

これまで韓国は、日本との首脳会談に応じる条件として、正しい歴史認識と誠意ある対応を求めてきた。

歴史認識に関し安倍首相は、河野談話見直しを否定し、日本の植民地支配と侵略を謝罪した95年の村山富市首相談話についても「全体として引き継いでいる」と述べた。朴大統領は「幸いに思う」と評価した。

しかし、もう一つの条件だった慰安婦問題などでの誠意ある対応は、調整が難航した。日本側は、両国の外務省局長級協議を設けて話し合おうと提案したが、韓国は国の責任を認めるよう求めたようだ。

韓国の要求は日本には受け入れられない。65年の日韓国交正常化に伴う協定で、慰安婦問題も含めて日韓の補償問題は法的に解決されているというのが日本側の立場だからだ。それでも90年代に慰安婦問題が外交問題化すると、日本政府は国家補償には応じない前提で、河野談話を出し、95年には「アジア女性基金」を設立して元慰安婦に償い金と首相のおわびの手紙を届けた。日本なりにできることをやってきた。

こうした経緯があるにもかかわらず、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が建てられ、韓国政府は黙認した。米国でも慰安婦像が設置され、日本が謝罪も補償もしていないという誤ったイメージが伝えられている。安倍政権による河野談話検証の背景には、こういう現状への日本国民の不快感があるのは否定できない。

日本が歴史に謙虚でなければならないのはもちろんだ。だが、韓国も反日感情から歴史認識で強硬姿勢を取るあまり、日本の嫌韓感情を育てることのないよう注意してほしい。

日米韓首脳会談を実現し、2国間の首脳会談につなげよう。両国が対話を重ねることで、慰安婦問題の対立を乗り越える道をともに見いだしていきたい。

読売新聞 2014年03月25日

中韓首脳会談 鮮明になった「反日共闘」路線

中国と韓国が、歴史問題で「反日共闘」路線をますます鮮明にしてきたと言えよう。

中国の習近平国家主席と、韓国の朴槿恵大統領がオランダ・ハーグ郊外で会談し、中国黒竜江省のハルビン駅に開設した朝鮮独立運動家・安重根の記念館の意義を強調した。

韓国側によると、記念館開設について、習氏は「私が直接指示した」と語り、朴氏も「両国民の結び付きを強める」と応じた。

習氏は、朴氏に対して、韓国民が支持する対日強硬路線で共闘を持ちかけて、韓国を引きつけようとしているのではないか。

安重根は、初代首相の伊藤博文を暗殺した人物であり、記念館開設を称賛するのは、日本にとって受け入れ難い。

習氏には、25日に予定される日米韓首脳会談をにらみ、3国連携にくさびを打ち込む狙いがあったに違いない。日韓関係が悪化する中で、米国の仲介努力によってようやく実現する日米韓首脳会談に冷や水を浴びせる形になった。

菅官房長官が、こうした中韓のやり取りを「一方的評価に基づく主張」と断じて、地域の平和と協力の構築にとってマイナスだと指摘したのも、もっともである。

中韓首脳会談で習氏は、日本の植民地統治期に「光復軍」と呼ばれる朝鮮の抗日部隊が駐屯したという陝西省西安に石碑を建設中だと述べた。朴氏が要望したものだ。光復軍の実態は定かではないが、反日の新たな象徴となろう。

朴氏が、中国と足並みをそろえているのも気がかりだ。日本を差し置いて習氏とは何度も会談している。中国との関係強化が、対北朝鮮政策や、経済協力でも重要であると考えているのだろう。

これと対照的に、日本に対しては、いわゆる従軍慰安婦問題などで条件を付けて、日韓首脳会談の開催を事実上拒んでいる。

良好な日韓関係なしには、米国を要とする日米及び米韓同盟が有効に機能しないのは明らかだ。

歴史を巡る中韓連携は、今後さらに強まることが懸念される。

中国の裁判所は先に、戦時中、強制連行された中国人元労働者らが日本企業を相手取り、謝罪と損害賠償を求めた訴状を初めて受理した。韓国でも元徴用工が同様の裁判を起こしている。

いずれも、日本との国交正常化の際の約束を根底から揺るがす恐れがあり、容認できない。日本は、中韓両国だけでなく国際社会に対しても、法的な正当性を主張していくことが肝要である。

産経新聞 2014年03月22日

日米韓首脳会談 和解儀式で終わらせるな

オランダで開かれる核安全保障サミットの際に、日米韓3カ国の首脳会談を開催することが決まった。歴史問題を理由に安倍晋三首相との会談を拒み続けてきた韓国の朴槿恵大統領が、会談を受け入れたためだ。

隣国の首脳同士が就任から1年以上たっても会談できない異常事態が、米国の「介添え」付きとはいえ、ひとまず解消されることを歓迎したい。だが、完全な関係正常化とはいえず、楽観はできない。

地域の安定にとって、3カ国はもとより日韓2国間でも首脳レベルで緊密な意思疎通を図ることが欠かせないのに、その実現のメドは立っていないからである。

今回、会談を受け入れた朴大統領には、現実的な判断に立ち、関係改善に向けてさらにかじを切ってもらうことを期待したい。定期的な首脳会談開催への道筋を整えることが何よりも必要だ。

3カ国会談には、オバマ米大統領の強い要請があった。米国は、「日米韓の強力な関係が北朝鮮の挑発を抑止する重要な要素」(国防総省高官)とみており、悪いままの日韓関係が続くのは安全保障上の大きな懸念と判断した。

日韓も核、ミサイル開発を続ける北朝鮮や中国の軍事的台頭を受け、同様の認識をもっていたはずで、米国の仲介によらなければ会談にこぎつけられないというのは残念だった。

3カ国会談では、歴史問題を主要議題にしないとされるが、単なる関係改善の「セレモニー」で終わらせず、緊急な課題で実りある議論を展開してほしい。

韓国側は、3カ国首脳会談への参加決定前まで、歴史問題をめぐる日本側の「誠意ある対応」を求めると強調していた。具体的には、慰安婦をめぐる金銭補償を意味するものだ。

この問題で「完全かつ最終的に解決済み」という立場を日本は変えるわけにいかない。両国間で実務者協議を続けるとしても早急に解決策を見いだすのは困難だ。

韓国側は今後も歴史認識や補償にこだわり続けるだろうが、それがために安全保障、経済を含む多くの分野で協力や交流を滞らせることがあってはなるまい。

経済連携協定(EPA)などをめぐる協議も進めなければならない。首脳会談には、こうした連携を加速する役割も込められていることを韓国は認識してほしい。

読売新聞 2014年03月19日

日米韓首脳会談 ボールは朴大統領側にある

日米韓3か国政府が、オランダで24、25両日に開かれる核安全サミットの際、首脳会談の開催を検討している。停滞している日韓関係の打開に向け、実現を図りたい。

安倍首相が14日の参院予算委員会で、いわゆる従軍慰安婦問題に関する1993年の河野談話について、安倍内閣は見直さないと明言した。戦後50周年の村山談話を含めた歴代内閣の歴史認識を継承する立場も明確にした。

韓国の朴槿恵大統領が翌15日、安倍首相発言を「幸いだ」と評価した意味は大きい。次は首脳会談へ前向きな決断をしてほしい。

河野談話には問題が多い。日本軍による慰安婦の強制連行を裏付ける資料は見つかっていない。談話の表現を日韓両政府がすり合わせた可能性も指摘される。

菅官房長官が談話の作成過程を検証する考えを示したのも、このためだ。安倍首相自身、談話の内容に疑問を持ち、談話に対する評価を意図的に避けてきた。

今回、あえて河野談話の見直しを封印したのは、日米韓首脳会談を実現するための環境整備を優先し、談話見直しに反発する韓国側に配慮するという大局的な政治判断をしたものと言えよう。

米国が、4月のオバマ大統領の日韓歴訪を前に、日韓関係の改善を本格的に仲介しようとする動きに、日本が呼応した面もある。

重要な同盟国である日韓両国の足並みが乱れたままでは、米国の「アジア重視」戦略の具体化に支障を来すと、オバマ政権が懸念するのは当然だろう。

日韓関係は、昨年2月の朴大統領就任以来、首脳会談が行えないという異常な状態が続く。

朴大統領は、米欧首脳との会談で日本批判を繰り返す「告げ口外交」を展開してきた。その徹底した反日姿勢は、日韓の閣僚会談や実務的な協力、国民世論にまで様々な悪影響を及ぼしている。

日韓が今、連携して取り組むべき課題は少なくない。

北朝鮮の核開発や軍事的挑発、中国の軍備増強と海洋進出など、北東アジアの安全保障情勢は悪化している。環太平洋経済連携協定(TPP)や日韓自由貿易協定(FTA)の交渉も急がれる。

本来、首脳や外交当局には、解決が困難な懸案があっても、2国間関係全体が損なわれないよう、粘り強く対話を重ね、接点を探るべき責任がある。

日韓双方が、それを自覚し、今後の対応を考えるべきだ。日米韓首脳会談をその一歩としたい。

産経新聞 2014年03月14日

日米韓連携 朴政権の「頑なさ」に驚く

韓国の朴槿恵政権は日米韓首脳会談の実現に向けて、大局的な見地から取り組んでほしい。

オランダでの核安全保障サミットに際して3カ国首脳会談を設定しようと、斎木昭隆外務事務次官が訪韓し、趙太庸韓国第1外務次官と会談した。だが、韓国側は歴史認識問題を理由に、それに乗ってこなかった。

日米韓の連携は地域の平和と安定に欠かせない。3カ国のトップ会談は共通の価値観を再確認する意味もあり、極めて重要だ。

韓国は、3カ国の結束が乱れて喜ぶのが誰なのか冷静に考えなければならない。核サミットは24日からで、時間はまだある。朴政権には強く再考を促したい。

3カ国首脳会談はもともと、日韓首脳だけの会談実現が難しいと判断した米国が提案したものだ。オバマ大統領が間に入れば、朴大統領も安倍晋三首相との対話に応じやすいとの判断からだろう。

韓国側は、その米国肝いりの提案をも、慰安婦の強制連行を認めた「河野談話」の再検証という日本政府の方針に懸念を示して、拒否してきたという。

斎木氏は、先に菅義偉官房長官が河野談話の見直しを否定したことを韓国へのメッセージだと説明した。談話の再検証を名のみにしてはならないとはいえ、米韓双方に外交的配慮は示した形だ。

韓国側はそれについても、「歴史修正主義的な言動」の自制が最優先だと反論するなど、聞く耳を持っていないようだ。

日本側は、関係改善を求める米国の意向を受けて交互に訪問する外交慣例をあえて変更し、伊原純一アジア大洋州局長に続き今回、斎木次官を使者に立てた。

しかし、尹炳世外相への表敬には韓国側が応じず夕食会も中止となり、斎木氏は予定を切り上げて日帰りする結果となった。

韓国の頑(かたく)なさには唖然(あぜん)とするほかない。「反日」に染まり柔軟な判断ができないのだろうか。

ケリー米国務長官が2月に、尹外相に「過去よりも今が大事だ」と軟化を求めたことを、韓国は思い起こすべきだ。米国もそうした説得を継続してもらいたい。

菅長官は「常に対話の扉は開かれている」と改めて強調した。歴史問題で理屈に合わない譲歩はすべきでない。その原則を守りながら、日本は韓国側への働きかけを粘り強く続けるしかない。

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