安倍政権の経済政策、アベノミクスの効果で大都市圏の地価がようやく上昇に転じた。不動産市場を活性化し、デフレ克服に弾みをつけたい。
国土交通省が発表した1月1日の公示地価は、東京、大阪、名古屋の3大都市圏で、住宅地、商業地がともに6年ぶりに前年比プラスとなった。
特に2020年に東京五輪・パラリンピックが開催される都の湾岸地区は10%前後も上昇した。
全国平均の公示地価は住宅地、商業地とも6年連続のマイナスだったが、下落幅は縮小した。
08年のリーマン・ショック後の景気悪化で落ち込んだ地価は、大都市圏が先行する形で底入れしつつあると言えよう。
アベノミクスによる景気回復と日銀による大胆な金融緩和を背景に、都市再開発の機運が高まり、地価の回復を後押しした。日本経済の成長を期待し、海外の投機マネーも不動産市場に流入した。
投資家から集めた資金で不動産を購入し、賃料収入などを配当として分配する不動産投資信託(REIT)の資産総額が昨年、過去最高となったのは象徴的だ。
低金利や住宅ローン減税などの政策効果に加え、4月の消費税率の引き上げを控えて、住宅の駆け込み需要も旺盛だった。
だが、今後の地価動向には、注意が必要である。
駆け込み需要の反動減が心配されるほか、建材値上げや人手不足による建設費高騰で住宅市場が冷え込み、地価の底入れ傾向に水を差す恐れがあるからだ。
政府は消費増税後の景気対策として拡充する住宅ローン減税などの効果を見極めるべきだろう。
特に懸念されるのが、回復が遅れている地方の動きだ。札幌や仙台、福岡など中核都市の地価は上昇したが、下落を続ける地方も目立つ。都市部と取り残された地方との格差が広がりかねない。
過疎化などの地方経済の構造問題だけでなく、アベノミクスの恩恵が及ばず、景気回復が遅れている事情がうかがえる。
政府は規制改革などの成長戦略を進めて、地方景気の回復につなげ、全国的な地価の持ち直しを実現しなければならない。
全国の住宅地の上昇率上位10か所のうち8か所を宮城、福島県の高台などが占めた。東日本大震災の被災者による住宅再建の需要が多いためである。
転売目的の投機で地価が急騰して復興に支障が生じぬよう政府と自治体は監視を強めるべきだ。
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