国防予算削減を進める米国が、「アジア重視」を堅持する国防戦略を打ち出した。中国の海洋進出への対抗姿勢を示したことを評価したい。
米国防総省が、オバマ政権で2度目の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)を発表した。
財政難や、アフガニスタンでの戦争に区切りがつくことを踏まえ陸軍兵力を第2次大戦後の最低水準に縮小する一方、特殊部隊やサイバー対策を強化する。安全保障環境の変化に応じて機動力や技術力を重視するのは妥当だ。
アジア政策では、地域の平和と安定が、米国の「中心的な国益になりつつある」として、軍事的プレゼンス強化の方針を示した。
中でも、2020年までに海軍の装備の6割を太平洋地域に配備すると明記したのは重要である。日本における海軍力も増強するという。
在沖縄海兵隊などのグアム移転を進め、空軍の偵察能力を高めるとした点も注目される。
こうした一連の措置は、身勝手な中国の海洋進出を抑止するためには、米国の存在感を改めて示すほかないと考えたからだろう。
実際、QDRは中国について、海洋で米軍の接近を拒む戦略の展開や、軍の透明性欠如、サイバー・宇宙関連技術の向上などを指摘し、強い警戒感を示している。
北朝鮮の核・ミサイル計画を懸念して、日本に2基目の早期警戒レーダーを配備するとした。不安定な金正恩政権を「脅威」と見ているためである。
米国の「アジア重視」戦略の実効性を高める上で、日本も相応の役割を果たさねばならない。
日米同盟を強化するため、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を急ぐべきだ。
年末に予定される日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定によって、平時から自衛隊と米軍がより密接に連携する体制を構築することも必要である。
気がかりなのは、アジアにおける米軍の抑止力が将来も継続するかどうか、不透明なことだ。
米国の国防予算は10年間で約5000億ドル(約51兆円)もの削減を義務づけられている。
QDRによると、このまま削減が続けば、現在の空母11隻態勢を維持できなくなり、米軍全体の危機対応能力が低下するという。
米軍のアジアでの抑止力を将来どう維持していくのか。QDRは日本や豪州、韓国などに「補完的指導力」を期待している。同盟諸国の知恵と能力も問われる。
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