中国で大気汚染が深刻の度を増している。主因の微小粒子状物質(PM2・5)は、海を越えて日本にも大量に飛散しているとみられる。
PM2・5の発生を抑える対策は待ったなしである。
PM2・5は、直径2・5マイクロ・メートル(1マイクロ・メートルは1000分の1ミリ)以下の物質の総称だ。スギ花粉の10分の1ほどの粒子で、吸い込むと肺の奥まで入りやすい。ぜんそくや気管支炎などの原因になるとも指摘される。
北京市では2月26日、PM2・5の大気中濃度が、1立方メートル当たり500マイクロ・グラムを超えた。日本国内で自治体が住民に注意喚起をする濃度は70マイクロ・グラムだ。中国の汚染の深刻さが分かる。
公的研究機関の上海社会科学院は、北京の状況について、「居住に適さないレベルに近づいている」と警告した。北京以外の地域でも汚染が悪化している。
PM2・5急増の原因は、石炭を燃やす際に生じる煤煙や自動車の排ガスだ。習近平国家主席は先月、濃霧の北京市内を視察し、工場での石炭使用の抑制や自動車の利用規制などを指示した。
中国政府はこれまでも、大気汚染対策の実施を表明してきたが、大きな改善はみられない。多くの生産現場が、環境問題よりも目先の利益を優先し、規制を無視してきたということだろう。
5日に開幕する全国人民代表大会では、大気汚染問題も重要テーマになる見通しだ。抜本対策に着手する契機としてもらいたい。
日本や韓国が中国からのPM2・5の影響をもろに受けるのは、偏西風が強まるこれからの時期だ。北京の汚染濃度が500マイクロ・グラムを記録した同じ日、西日本と北陸などで濃度が上昇し、10府県が住民に注意を促した。
石原環境相は、主な要因に「中国からの越境汚染」を挙げた。
環境省と各自治体は今後とも、住民にきめ細かい情報を迅速に提供していくことが重要だ。
注意喚起がなされたからといって、直ちに健康被害の危険があるわけではない。不要不急の外出を控える。窓の開閉や換気は最小限にとどめる――。住民は冷静な対応を心がけてほしい。
呼吸器や心臓に病気がある人や高齢者、子供の体調管理には、十分に留意せねばならない。
日中韓の担当者は今月、PM2・5対策を協議する政策対話を北京で行う。観測情報を共有するほか、中国に対し、排出抑制策の強化を求めることが肝要だ。
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