PM2.5 日本が「ツケ」を払うのか

読売新聞 2014年03月05日

PM2・5汚染 中国の排出源対策が急務だ

中国で大気汚染が深刻の度を増している。主因の微小粒子状物質(PM2・5)は、海を越えて日本にも大量に飛散しているとみられる。

PM2・5の発生を抑える対策は待ったなしである。

PM2・5は、直径2・5マイクロ・メートル(1マイクロ・メートルは1000分の1ミリ)以下の物質の総称だ。スギ花粉の10分の1ほどの粒子で、吸い込むと肺の奥まで入りやすい。ぜんそくや気管支炎などの原因になるとも指摘される。

北京市では2月26日、PM2・5の大気中濃度が、1立方メートル当たり500マイクロ・グラムを超えた。日本国内で自治体が住民に注意喚起をする濃度は70マイクロ・グラムだ。中国の汚染の深刻さが分かる。

公的研究機関の上海社会科学院は、北京の状況について、「居住に適さないレベルに近づいている」と警告した。北京以外の地域でも汚染が悪化している。

PM2・5急増の原因は、石炭を燃やす際に生じる煤煙(ばいえん)や自動車の排ガスだ。習近平国家主席は先月、濃霧の北京市内を視察し、工場での石炭使用の抑制や自動車の利用規制などを指示した。

中国政府はこれまでも、大気汚染対策の実施を表明してきたが、大きな改善はみられない。多くの生産現場が、環境問題よりも目先の利益を優先し、規制を無視してきたということだろう。

5日に開幕する全国人民代表大会では、大気汚染問題も重要テーマになる見通しだ。抜本対策に着手する契機としてもらいたい。

日本や韓国が中国からのPM2・5の影響をもろに受けるのは、偏西風が強まるこれからの時期だ。北京の汚染濃度が500マイクロ・グラムを記録した同じ日、西日本と北陸などで濃度が上昇し、10府県が住民に注意を促した。

石原環境相は、主な要因に「中国からの越境汚染」を挙げた。

環境省と各自治体は今後とも、住民にきめ細かい情報を迅速に提供していくことが重要だ。

注意喚起がなされたからといって、直ちに健康被害の危険があるわけではない。不要不急の外出を控える。窓の開閉や換気は最小限にとどめる――。住民は冷静な対応を心がけてほしい。

呼吸器や心臓に病気がある人や高齢者、子供の体調管理には、十分に留意せねばならない。

日中韓の担当者は今月、PM2・5対策を協議する政策対話を北京で行う。観測情報を共有するほか、中国に対し、排出抑制策の強化を求めることが肝要だ。

産経新聞 2014年03月03日

PM2.5 日本が「ツケ」を払うのか

これが逆の立場だったらと考えてしまう。激しい非難と賠償請求さえ起きていることだろう。

中国から日本への微粒子状物質PM2・5の飛来である。昨春に続いて今年も日本各地での観測濃度が上がり始めた。

すでに注意喚起情報を出した自治体もある。石原伸晃環境相は国民に日常生活での注意を呼びかけた。

これから5月にかけて濃度が急増する可能性がある。注意喚起が出されたときには、不急の外出を見合わせたり、フィルター機能の高いマスクを使ったりするなどの自衛策が必要だ。

PM2・5は、大気中に漂う顕微鏡サイズの微粒子で、有害な二酸化硫黄や有機化合物を含む。強い発がん性を持つことが昨年、世界保健機関(WHO)によって確認されている。

有毒ガスが、日本海を越えて風下の日本の大気を汚染しているわけである。極めて重大な地球環境問題だ。

酸性雨の発生を例として中国からの越境汚染は、これまでにもあった。日本は技術協力などの形で友好的に対応してきたが、またぞろ大問題の発生である。2国間や地域連携によって解決を目指す旧来の手法に、限界があることは明らかだろう。

しかも日本が受ける被害は、生態系への影響といったレベルを超えている。肺がんや気管支炎などで、国民の生命と健康を脅かし得る問題だ。

中国の環境汚染のツケをここまで支払わされてはたまらない。

インドでもPM2・5による大気汚染が深刻化しつつある。問題の解決を国際協議の場に移すなど、取り組み体制の引き上げが求められよう。

昨冬の中国は、国土の4分の1がPM2・5を含む濃霧に覆われた。原因は、米国を抜いて世界1位となった二酸化炭素の排出増と同根である。

経済成長と軍事力増強を全てに優先させてきた結果が、地球を危うくする事態を招くに至った。大国と途上国という2つの顔の使い分けに終止符を打つべきだ。それが「地球市民」としてのモラルであろう。

日本へのPM2・5の到達状況や濃度の数値は、環境省のサイト「そらまめ君」で見られる。改良が計画されているが、使いやすさに十分な工夫を望みたい。

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