与野党はこれ以上時間を浪費せず、選挙制度改革を動かすべきだ。
衆院議長の下に有識者らによる第三者機関が設置され、選挙制度改革を協議する見通しになった。民主党、日本維新の会、みんなの党、結いの党、生活の党の5党の要求を自民、公明両党が受け入れた。
与野党の選挙制度改革を巡る議論が暗礁に乗り上げたため、安倍首相が第三者機関を設けて事態の打開を図るよう提案したのは、昨年6月のことである。
だが、与野党は「国会議員による議論で結論を得るのが筋」と主張するばかりで、合意を形成できなかった。あまりにお粗末だ。
野党側が第三者機関の設置を求めたのは、小選挙区の定数を「5増30減」か、「3増18減」とする2案を提示したが、与党は受け入れないからだという。
前回衆院選で小選挙区の議席の8割を占めた自民党は、調整が難航する小選挙区の定数に手を付けたくないのだろう。比例選定数の30削減を主張している。
結局、与野党ともに党利党略である。自らの利害得失が絡む改革は、自力で実現できないことを証明しただけではないか。
第三者機関で選挙制度を検討するに当たって肝要なのは、メンバーを各党の利害から離れた少人数の有識者で構成することだ。
有識者の出す提言を各党が尊重して、立法化することも、事前に取り決めておかねばならない。
選挙制度は、各党の消長に直結する。どんな案であっても、与野党から反発が出るだろう。提言に拘束力が担保されなければ、有識者に議論を委ねる意味はない。
第三者機関の扱う議題として、民主党などは定数削減の議論を提案している。
だが、4月の消費税率引き上げで国民に負担を求める以上、与野党も国会議員を削減して「身を切る」というのは、極めて大衆迎合的な発想である。身を切るのであれば歳費や政党交付金を削減する方が、よほど効果的だろう。
最高裁は一昨年12月の衆院選を1票の格差の観点から「違憲状態」と判断した。司法の要請に応えることは重要だが、選挙制度改革はそれだけではない。
現行の小選挙区比例代表並立制導入を柱とした政治改革関連法が成立してちょうど20年たつ。制度の様々なメリット、デメリットが既に明らかになっている。
第三者機関は、制度を総合的に点検すべきだ。選挙制度の本質を見据えた議論を期待したい。
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