衆院選挙制度改革 第三者案の尊重約束を

毎日新聞 2014年03月01日

衆院選挙制度改革 第三者案の尊重約束を

これでようやく動き始めるだろうか。懸案の衆院選挙制度改革について、民主党、日本維新の会、みんなの党、結いの党、生活の党の野党5党が有識者による第三者機関を衆院議長の下に設置する案を自民、公明両党に申し入れた。自公両党も受け入れる方針だ。

かねて私たちは政党や議員自らが改革できないのなら、もはや第三者機関に委ねるほかないと指摘してきた。課題は多いが、今回の動きは評価したい。早急に設置を決定し、人選などに着手してもらいたい。

改めて振り返っておく。「消費税率引き上げで国民に負担増を求める以上、議員自らも身を削る必要がある」と自民、公明、民主3党が衆院議員の定数削減を含む選挙制度の抜本改革実現で合意したのは、もう一昨年秋にさかのぼる。

しかも、その直後の一昨年暮れに行われた衆院選の「1票の格差」(最大2.43倍)をめぐる訴訟では、最高裁大法廷が昨秋、「違憲状態だった」との判決を言い渡している。改革が待ったなしの課題であることは誰の目にも明らかだった。

ところが、これまで国会が実現させたのは衆院小選挙区の定数を「0増5減」する応急措置のみだ。

与党と野党5党は当面、今の小選挙区比例代表並立制を維持する点では一致しているようだ。だが、与党が比例定数30議席の削減を主張しているのに対し、野党5党は小選挙区の定数を東京などで増やす一方、人口の少ない県を中心に減らす2案を提示。共産、社民両党は比例中心の抜本改革を求め、与野党協議の見通しはまったく立っていない。こうした経緯からすれば第三者機関の設置は遅すぎたとさえいえるだろう。

ただし、最大の難問は第三者機関の人選だ。各党が自らの考えを代弁してくれる学識経験者らを推薦するような方式では、結局、まとまらない可能性が大きい。ここは中立的な識者を選ぶと同時に、思い切って若者代表らを加え、広範に意見を聞くのも一案ではないか。

今の比例代表並立制は1989年に設置された政府の第8次選挙制度審議会の答申に基づく。有識者のみで構成した組織だった。だが、答申後、与党の自民党内でも対立が続き、導入が決まるまで4年もかかった。

仮に今回、第三者機関で結論が出たとしても、たなざらしになって関連法案が成立しないようでは元も子もない。そもそも自らがまとめられなかった点を各党は恥じるべき話なのである。協議を委ねる以上、第三者機関の案を尊重し、従うことを事前に合意しておくべきだと考える。機関設置に反対している共産、社民の理解を得ることも当然必要だ。

読売新聞 2014年03月03日

衆院選挙制度 第三者機関で党利党略を排せ

与野党はこれ以上時間を浪費せず、選挙制度改革を動かすべきだ。

衆院議長の下に有識者らによる第三者機関が設置され、選挙制度改革を協議する見通しになった。民主党、日本維新の会、みんなの党、結いの党、生活の党の5党の要求を自民、公明両党が受け入れた。

与野党の選挙制度改革を巡る議論が暗礁に乗り上げたため、安倍首相が第三者機関を設けて事態の打開を図るよう提案したのは、昨年6月のことである。

だが、与野党は「国会議員による議論で結論を得るのが筋」と主張するばかりで、合意を形成できなかった。あまりにお粗末だ。

野党側が第三者機関の設置を求めたのは、小選挙区の定数を「5増30減」か、「3増18減」とする2案を提示したが、与党は受け入れないからだという。

前回衆院選で小選挙区の議席の8割を占めた自民党は、調整が難航する小選挙区の定数に手を付けたくないのだろう。比例選定数の30削減を主張している。

結局、与野党ともに党利党略である。自らの利害得失が絡む改革は、自力で実現できないことを証明しただけではないか。

第三者機関で選挙制度を検討するに当たって肝要なのは、メンバーを各党の利害から離れた少人数の有識者で構成することだ。

有識者の出す提言を各党が尊重して、立法化することも、事前に取り決めておかねばならない。

選挙制度は、各党の消長に直結する。どんな案であっても、与野党から反発が出るだろう。提言に拘束力が担保されなければ、有識者に議論を委ねる意味はない。

第三者機関の扱う議題として、民主党などは定数削減の議論を提案している。

だが、4月の消費税率引き上げで国民に負担を求める以上、与野党も国会議員を削減して「身を切る」というのは、極めて大衆迎合的な発想である。身を切るのであれば歳費や政党交付金を削減する方が、よほど効果的だろう。

最高裁は一昨年12月の衆院選を1票の格差の観点から「違憲状態」と判断した。司法の要請に応えることは重要だが、選挙制度改革はそれだけではない。

現行の小選挙区比例代表並立制導入を柱とした政治改革関連法が成立してちょうど20年たつ。制度の様々なメリット、デメリットが既に明らかになっている。

第三者機関は、制度を総合的に点検すべきだ。選挙制度の本質を見据えた議論を期待したい。

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