毎日新聞 2014年02月27日
まるで「超1強」状態だ
通常国会の様相が次第にはっきりしてきた。与党は強気の国会運営で2014年度予算案を近く衆院で通過させる構えだ。
さきの臨時国会で出現した自民党「1強」構図だが、野党のいわゆる第三極勢の安倍晋三首相への接近で今国会はそれに拍車がかかりつつある。外交・安全保障や歴史認識問題など安倍内閣の姿勢が問われる論点は多い。日程消化を急がず、今こそ徹底論戦が必要な局面だ。
予算案について与党は実質審議14日で通過させるようなスピード審議を目指し、これには野党側も結束して反対した。だが、すでに採決の前提とされる中央公聴会の審査を終えるなど、与党ペースは色濃い。
衆参ねじれは解消し、衆院では与党だけで3分の2を確保する圧倒的優位だ。予算案への対応と別に、いわゆる第三極勢が焦点の外交・安全保障に関わる問題で首相と協調している点が論戦全体に影響している。
たとえば日本維新の会の石原慎太郎共同代表は予算委員会で首相の靖国神社参拝を支持、「東京裁判」批判にも同調するよう首相に迫ってみせた。山田宏衆院議員が従軍慰安婦問題の「河野談話」の根拠となった元慰安婦への聞き取り調査の検証を求めて行った質疑には、首相から感謝の意が伝えられたのだという。
みんなの党も負けてはいない。渡辺喜美代表はさきの党大会で「みんなの党は保守の政党だ」と宣言、首相が意欲を示す集団的自衛権行使を認める解釈改憲に協力する姿勢を鮮明にした。行使容認に慎重な公明党に野党側から圧力がかかるのだから首相には願ったりの構図だろう。
国会で議論を尽くすべき課題は歴史認識問題など切迫度を増している。解釈改憲をめぐる質問に首相は「最高の責任者は私だ。私たちは選挙で国民から審判を受ける」と答弁し、与党にも批判を広げた。選挙に勝てば憲法解釈も思い通りに変えられると取られかねない発言だけに、首相の憲法観が問われている。
NHKの籾井勝人会長の発言問題もなお深刻だ。批判を呼んだ就任会見について「大変な失言をしたのでしょうか」と経営委員会で語ったり、理事全員にあらかじめ日付抜きで辞表を出させたりした行為が新たに判明した。公共放送トップとして、適格性への疑問は深まるばかりだ。
そんな状況をよそにいたずらに駆け足の国会運営を与党が図るのであれば、数のおごりである。論戦の中身をアピールできない野党第1党、民主党の責任も当然ながら大きい。とりわけ集団的自衛権行使の見解を早急に集約すべきだ。さもないと「超1強」に立ち向かう迫力などとても得られないはずだ。
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読売新聞 2014年03月01日
予算案衆院通過 気を緩めず懸案に取り組め
2014年度予算案が与党などの賛成で衆院を通過し、今年度内の成立は確定した。安倍政権の国会運営は順調だが、課題は山積している。気を緩めてはならない。
総額95兆円超の新年度予算案は、13年度補正予算とあわせ「15か月予算」と位置づけられる。
切れ目なく予算を執行することで、まずは4月からの消費税率引き上げによる景気失速を防ぐことが重要である。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が成果を上げるには、民間活力を引き出す成長戦略を着実に実施することも欠かせない。
原子力発電の輸出を可能にするトルコやアラブ首長国連邦(UAE)との原子力協定の承認や、電気事業法改正案など成長戦略に関連する法案の成立を急ぎたい。
衆参のねじれが解消し、衆院で与党は3分の2を超える。日本維新の会とみんなの党は政策ごとに安倍政権と協力する方針を掲げている。与党ペースで予算審議が進むことになったのは、こうした国会の構図が影響していよう。
論戦では、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の見直し問題が引き続き焦点となる。
安倍首相は、衆院予算委員会で解釈変更について「閣議決定前に国会が政府の見解を問いたいとなれば答弁する義務がある」と語った。新解釈を政府が決める前に、国会審議が必要だという公明党や野党の声に配慮したのだろう。
政府は、集団的自衛権行使を認める意義や、行使の具体例について丁寧に説明する必要がある。
理解しがたいのは、民主党の姿勢だ。党の見解として、安倍政権の進める解釈改憲には反対することを決めたが、それは手続き論に限ったものだという。行使の賛否自体には踏み込んでいない。
政権を担当して、安全保障環境の厳しさを自覚したのではないのか。重要政策の方針を決めず、先送りし続けるのは無責任だ。
今国会では、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の投票年齢を確定させることも課題である。
現行法は投票年齢を「18歳以上」と定める一方、前提として付則で成人年齢なども「18歳以上」に引き下げる検討を求めている。
与党は、その結論が容易に出ないことから、法施行後4年は20歳以上、その後18歳以上とする改正案をまとめている。日本維新の会は与党に同調する。与党は民主党などとの調整も急ぐべきだ。
長年の懸案を一つ一つ処理する国会としたい。
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