日本と米国の対立が障害となり、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は再び、大筋合意を見送った。
このまま交渉を漂流させてはならない。主導すべき日米両国が交渉を早急に立て直すべきである。
日米を始め、豪州など12か国が参加したシンガポールでのTPP閣僚会合が終了した。
昨年12月の仕切り直しだったのに、2度目の物別れだ。妥結目標を示さず、次回日程も決まっていない。期待外れの結果である。
TPPは、アジア太平洋地域で新たな自由貿易ルールを作り、21世紀型の経済連携で世界をリードすることが狙いだ。しかし、交渉の勢いが弱まれば、膠着状態を打開するのは難しくなるだろう。
大筋合意を断念した主因は、関税撤廃を巡る日米の対立だ。
自民党がコメ、麦など農産品5項目を関税撤廃の聖域として主張している問題で、米国はあくまで関税撤廃を求めて強硬だった。日本は5項目のうち、牛肉や豚肉の関税引き下げを打診し、妥協点を探ったが、溝は深かった。
日本が米国に要求した自動車や自動車部品の関税撤廃問題でも、対立は解けなかった。
経済大国の日米がTPP交渉で互いに原則論に終始し、柔軟性を示さなければ活路は開けない。ともに大局的見地を欠いていた点は反省すべきだ。
日米協議を注視していた豪州やマレーシアなど新興国も消極的になった。米国と新興国の主張にも開きがあった。交渉全体の足を引っ張った日米の責任は大きい。
今後の焦点は、TPP交渉をどう立て直すかである。
12か国は中国・青島で5月に開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合の際に次回会合を開く考えとみられる。
TPP交渉打開に向けて重要になるのが、4月下旬に来日するオバマ米大統領と安倍首相との日米首脳会談である。TPPが主要議題にならざるを得ない。
米国では、11月の議会中間選挙を控え、保護貿易主義圧力が高まっている。このため、米国が譲歩しにくい展開も懸念される。
大統領は雇用や輸出拡大のためTPP妥結を最優先課題に掲げてきた。国内調整と交渉進展で指導力を発揮してもらいたい。
TPPを成長戦略の柱に据える安倍首相の姿勢も問われる。市場開放に備え、農業分野の競争力を強化しながら、米国との接点を見いだす先頭に立つ必要がある。
この記事へのコメントはありません。