オバマ氏訪日 すきま風吹く日米関係

毎日新聞 2014年02月17日

オバマ氏訪日 すきま風吹く日米関係

米国のオバマ大統領が4月下旬に日本、韓国、マレーシア、フィリピンを歴訪することが決まった。

朝鮮半島情勢や中国の海洋進出を見れば、日米韓3カ国が結束して、東アジアの安定に責任を果たさなければならないのは明らかだ。それなのに、安倍晋三首相の靖国神社参拝などをめぐって日米関係はぎくしゃくし、日韓関係は改善の糸口すらつかめない。大統領訪日を日米、日韓関係の再構築につなげられるよう、安倍政権の努力を求めたい。

このところの日米両政府の間に吹くすきま風は隠しようがない。

安倍政権の側には、米国がアジア太平洋重視政策を掲げながら、行動が伴わないことへの不信感がある。

一方、オバマ政権には、安倍首相が米国の忠告を聞かずに昨年末、靖国神社を参拝したことへの不満があり、「失望」声明につながった。

日米双方が沈静化に努め、仕切り直しを図ろうとしていたところで、首相がダボス会議で、日中関係を第一次世界大戦前の英独関係に例える発言をし、波紋を広げた。

さらに最近では、NHK経営委員で小説家の百田尚樹氏が東京都知事選の応援演説で、東京大空襲と原爆投下を「大虐殺」としたうえで、東京裁判は「大虐殺をごまかすための裁判だった」との見方を示した。在日米大使館の報道担当官は「ばかげた意見」と非難した。NHKをめぐっては、ほかにも籾井勝人会長らの発言が批判を浴びている。

安倍政権は東京裁判発言を個人的発言だとして問題視していない。だが欧米メディアなどからは、一連の言動がNHKという公共放送のあり方を超え、安倍政権が米国主導の戦後秩序を否定し、歴史を修正しようという意図が背景にあるのではないかと警戒する見方が出始めている。

矢継ぎ早に起きる安倍政権やその周辺の歴史認識をめぐる言動に対し、安倍政権のナショナリズムへの警戒感が改めて高まっている。しかし、政権の危機感はいま一つ乏しい。

政権はそういった言動にもっと注意を払い、厳しく対処すべきだ。放置すれば、政権も同じ認識だと疑われかねない。日米関係にもさらなる悪影響を与える可能性がある。

また4月の大統領のアジア歴訪をめぐって、日本と韓国が日程を取り合ったやり方は、ほめられたものではない。米国は大統領訪問までに日韓関係を改善するよう両国に強く求めている。米政府に仲介の労を取ってもらうようでは情けない。

安倍政権は韓国や中国に対しては、成熟した民主主義国家として関係改善に積極的に動き、アジアに貢献する姿を示すべきではないか。世界が見ている。

読売新聞 2014年02月20日

オバマ外交 アジア重視へ日米韓の連携を

アジアの平和と安定を維持するためには、米国と、同盟国である日本や韓国などが協力関係を深化させねばならない。

オバマ米大統領が「アジア重視」の外交政策立て直しに乗り出した。揺らいでいる日米韓の連携再構築が重要な課題だ。

ケリー米国務長官は今月、ワシントンで岸田外相と会談した後、韓国と中国、インドネシアを訪問した。4月下旬には、オバマ氏の日本、韓国、マレーシア、フィリピン歴訪が予定されている。

アジアでは、防空識別圏の設定など中国の拡張主義的な行動が顕著になった。北朝鮮では不安定な情勢が続き、核の脅威は増大している。オバマ氏は関与に本腰を入れるべきだと考えたのだろう。

習近平国家主席はケリー氏に、「新しいタイプの大国関係」の構築を再び求めた。米国は中国を軍事的に牽制(けんせい)したい一方で、経済面では中国との相互依存関係が一段と高まっている。

複雑な思惑が交錯する両国がどのような「大国関係」を築くのか。難しい課題となろう。

それだけに、米国にとっては同盟国との協力強化が不可欠だ。

ケリー氏は、日韓両外相に両国関係の改善を強く要請した。アジア戦略の要となる日米韓の結束が歴史問題などを巡る日韓対立によって損なわれていることに、危機感を募らせたからに違いない。

韓国外相との共同記者会見では「日韓が米国と共に取り組むことを求める」と述べた。日韓の仲裁に乗り出す方針の表明である。

だが、事態打開は容易でない。日韓首脳会談について、安倍首相は無条件で開催する意向だが、韓国の朴槿恵大統領は、いわゆる従軍慰安婦問題での譲歩など日本に様々な条件を付けている。

昨年末の安倍首相の靖国神社参拝に米国が「失望」を表明して以来、日米関係がぎくしゃくしているのも気がかりだ。

靖国問題について、ケリー氏は会見で「これ以上こだわる必要はない」と強調したが、米国内には対日不信を示す論調もある。

日本側にも不満が残る。衛藤晟一首相補佐官は、その後取り消したものの、ネット上で「我々の方が失望した」と米国を批判する発言を公開して、物議を醸した。

佐々江賢一郎駐米大使も米国で「米国は誰が友人で、誰をトラブルメーカーと考えているのかはっきりさせてほしい」と訴えた。

日米関係の重要性を再認識する姿勢が、アジアへの関与を強めるオバマ氏に問われよう。

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