政府は、高速道路の有料期間を最長15年延長して2065年までとする道路整備特別措置法改正案を国会に提出した。
利用者の安全を守るため、老朽化した高速道路の造り替えや補修は急務だ。
全国の高速道路のうち、開通から30年以上経過した区間が約4割を占める。山梨県の中央自動車道・笹子トンネルでは、老朽化が原因とみられる天井板崩落事故が起き、多数の犠牲者が出た。
財政難で巨額の国費を投じる余裕が乏しい中、有料期間の延長で得られる料金収入を更新・修繕費に充てるのはやむを得ない。
首都高速道路など高速道路6社は先ごろ、今後十数年で総額4兆円規模の更新・修繕費がかかるという試算をまとめた。
政府は05年の道路公団民営化の際、50年までの料金収入で約40兆円の債務を返済した後、高速道路を無料にする計画を立てた。
しかし、当時は、将来の道路補修などに巨額の費用がかかる事態を十分に想定していなかった。見通しが甘かった点は否めない。
道路各社には今後、将来の利用者の負担が過度に重くならないよう、更新・修繕費を可能な限り抑制することが求められる。
高速道路の上空や高架下の使用権を企業に売却・賃貸して費用の一部を賄うなど、民間資金の活用に工夫を凝らしてもらいたい。
単なる造り替えではなく、車線拡張や急カーブの解消など、道路の使いやすさや安全性を高めるための改修も大切である。
疑問なのは、政府が依然として高速道路を将来、無料化する計画を掲げ続けていることだ。
高速道路を利用し続ける以上、将来的に追加の更新・修繕費が必要になる。新たな財源問題が浮上するのは必至だろう。
無料化を前提とする現行計画の再検討は避けられまい。将来にわたって低廉な料金を徴収し続けるのも一つの選択肢ではないか。
政府が、自動料金収受システム(ETC)の搭載車を対象にした割引制度を4月から縮小するのは妥当な措置である。
割引には08年以降、総額3兆円の国費が投入されてきた。だが、道路各社が経営努力の範囲内で実施するのが、割引サービスの本来の姿のはずだ。
割引制度は政権が代わる度に変更され、利用者には複雑で分かりにくい仕組みになっている。これまでの効果を検証し、物流の活性化や一般道の渋滞緩和などに、より役立つ制度へ改善すべきだ。
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