高速道有料延長 安全確保は最優先だが

毎日新聞 2014年02月15日

高速道有料延長 安全確保は最優先だが

政府は2050年までとしていた高速道路の有料期間を15年間延長し、65年までとする道路整備特別措置法など関連法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。延長期間の料金収入を担保に資金を借り入れ、老朽化した高速道路の更新や大規模修繕を行う。05年の道路4公団民営化時に、道路建設で抱えた約40兆円の借金を45年間かけて返済し、50年以降、高速道路を無料開放する予定にしていたが、これを見直す。

改正案に先立ち、首都高速、中日本高速など高速道路6社は、老朽化した道路の更新、修繕計画をまとめ、今後十数年で費用が合計4兆円強かかるとの試算を公表した。安全対策は最優先だ。だが、防災や国土強靱(きょうじん)化を旗印に、公共事業に重点を置く安倍晋三政権の流れに乗り、大型工事ありきの計画になっていないか精査が必要だ。国会で十分審議を尽くしてほしい。

1960年代、70年代に造られた高速道路が老朽化してきたのは事実だ。交通が集中する場所や橋は計画的な更新が必要だろう。ただ、それは更新以外に方法がない場合に限定し、補修の徹底により長寿命化を図るべきだ。老朽化対策は、9人が死亡した12年の中央自動車道・笹子トンネル事故を教訓としている。この事故は、天井板をつり下げていたボルトの脱落が原因だ。維持管理体制に問題があった。適切な点検や補修が何より大切なのだ。

今回、政府は税金投入や料金値上げも検討した。しかし国民や利用者の理解を得られないと判断。30年以上先の収入を当て込んだ資金調達を選んだ。つまり、費用負担を将来の利用者につけ回ししたということだ。費用を最小化しなければ利用者も納得できまい。また、15年という長期間の延長が必要なのかも疑問だ。対策を絞り込めば、延長期間を短くできるはずだ。

高速道路会社は、維持修繕費は毎年計上している。ところが、民営化時に老朽化対策は考慮されておらず見直しが必要になったという。おかしな話だ。今回の見直しで、民営化による経営効率化の果実が考慮されていないのもおかしい。民間会社なら効率化でお金を浮かし、設備投資の一部に回すことは当たり前だ。

6社の更新計画が一段落しても、その時点で老朽化対策が必要な道路は増えているはずだ。その際、有料期間を再延長するのか、無料開放をどうするのかという根本的な問題もある。来年は道路4公団民営化後10年になり、民営化の状況について再検討する時期だ。有料期間の延長は、民営化時の計画の大幅な見直しにあたる。この問題も含めた再検討が必要だ。

読売新聞 2014年02月17日

高速有料の延長 安全確保にはやむを得ない

政府は、高速道路の有料期間を最長15年延長して2065年までとする道路整備特別措置法改正案を国会に提出した。

利用者の安全を守るため、老朽化した高速道路の造り替えや補修は急務だ。

全国の高速道路のうち、開通から30年以上経過した区間が約4割を占める。山梨県の中央自動車道・笹子トンネルでは、老朽化が原因とみられる天井板崩落事故が起き、多数の犠牲者が出た。

財政難で巨額の国費を投じる余裕が乏しい中、有料期間の延長で得られる料金収入を更新・修繕費に充てるのはやむを得ない。

首都高速道路など高速道路6社は先ごろ、今後十数年で総額4兆円規模の更新・修繕費がかかるという試算をまとめた。

政府は05年の道路公団民営化の際、50年までの料金収入で約40兆円の債務を返済した後、高速道路を無料にする計画を立てた。

しかし、当時は、将来の道路補修などに巨額の費用がかかる事態を十分に想定していなかった。見通しが甘かった点は否めない。

道路各社には今後、将来の利用者の負担が過度に重くならないよう、更新・修繕費を可能な限り抑制することが求められる。

高速道路の上空や高架下の使用権を企業に売却・賃貸して費用の一部を賄うなど、民間資金の活用に工夫を凝らしてもらいたい。

単なる造り替えではなく、車線拡張や急カーブの解消など、道路の使いやすさや安全性を高めるための改修も大切である。

疑問なのは、政府が依然として高速道路を将来、無料化する計画を掲げ続けていることだ。

高速道路を利用し続ける以上、将来的に追加の更新・修繕費が必要になる。新たな財源問題が浮上するのは必至だろう。

無料化を前提とする現行計画の再検討は避けられまい。将来にわたって低廉な料金を徴収し続けるのも一つの選択肢ではないか。

政府が、自動料金収受システム(ETC)の搭載車を対象にした割引制度を4月から縮小するのは妥当な措置である。

割引には08年以降、総額3兆円の国費が投入されてきた。だが、道路各社が経営努力の範囲内で実施するのが、割引サービスの本来の姿のはずだ。

割引制度は政権が代わる度に変更され、利用者には複雑で分かりにくい仕組みになっている。これまでの効果を検証し、物流の活性化や一般道の渋滞緩和などに、より役立つ制度へ改善すべきだ。

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