土地取引疑惑 小沢氏の説明が聞きたい

朝日新聞 2010年01月06日

土地取引疑惑 小沢氏の説明が聞きたい

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体が、5年余り前に、東京都世田谷区の土地を購入した際の不自然な資金の流れが問題になっている。

東京地検特捜部は、購入代金に充てた約4億円の収入を政治資金収支報告書に記載していなかったとして、当時の資金管理団体の事務担当者で現在は民主党衆院議員の石川知裕氏を、政治資金規正法違反の罪で在宅起訴する方向で検討しているという。

小沢氏をめぐっては、西松建設からの違法献金事件で規正法違反に問われた公設第1秘書の裁判が始まったばかりだ。秘書は無罪を主張しているが、その決着がつかないうちに、新たな政治資金問題が持ち上がってしまった。

問題の本質は単なる不記載ではない。4億円の原資の出どころだ。問題のない資金であるなら、そのことをきちんと説明さえできれば、これ以上、疑惑をもたれることはあるまい。

小沢氏はできるだけ早く、土地購入や資金手当ての経緯を丁寧に国民に明らかにすべきだ。

4億円は土地購入の数日前から、複数の関連政治団体を経由するなどして資金管理団体に集められていたというが、その大もとの出どころもはっきりしない。この不自然な資金の流れについて、納得できる説明を聞きたい。

検察当局には捜査を尽くすよう求めたい。必要なら、小沢氏本人から事情を聴くことも避けるべきではない。

小沢氏は再三にわたり、自らの政治資金は収入も支出もすべて収支報告書に記載して公開している、と透明性を強調してきた。西松建設側からの献金も、資金の動き自体は収支報告書に記載されていて、適法に処理したとの主張の根拠としている。それだけに今回、収支報告書に記載されていない資金の流れが浮かんだ意味は重い。

小沢氏は民主党政権の最高実力者と目され、政府の運営にも大きな影響力を持つ。夏の参院選挙を仕切る責任者でもある。それだけに、より高度な説明責任が求められる。

鳩山由紀夫首相の資金管理団体の偽装献金事件で、年末に首相の元秘書ら2人が規正法違反で起訴された。首相と与党幹事長という政権のツートップが、同時に「金庫番」の政治資金問題を抱える姿は異常である。

政治に変化を求めて政権交代を選んだ有権者は、自民党政権時代に繰り返された「政治とカネ」の問題を、新政権でも立て続けに見せられ、がっかりしているに違いない。

18日に召集される予定の通常国会で、自民党など野党は2人の政治資金問題を厳しく追及する方針だ。補正予算案と新年度予算案の早期成立を最優先する政府与党の国会運営にも、足かせとなりかねない。

疑惑の払拭(ふっしょく)は急務である。

毎日新聞 2010年01月08日

「陸山会」土地取引 小沢氏に説明求めたい

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る会計処理について、東京地検特捜部の捜査がヤマ場を迎えている。

当時の事務担当者で、小沢氏の私設秘書だった石川知裕衆院議員は、04年に行われた土地購入の資金に充てるため、小沢氏から現金で約4億円を受領したとされる。だが、政治資金収支報告書に記載しなかった。特捜部は政治資金規正法違反(不記載)で、来週にも石川議員を在宅起訴する方針だ。

この取引を巡っては、不自然な資金の流れが明らかになっている。

石川氏は04年10月5日、小沢氏から借りた約4億円で土地購入の手付金1000万円を払い、残額を陸山会の口座にまとめた。さらに同月29日午前、口座から土地代の残金約3億3000万円を支払った。

石川氏はその日午後、小沢氏の複数の政治団体から1億数千万円を陸山会の口座に入金し、手持ちの資金と合わせて4億円の定期預金を組み、これを担保に金融機関から4億円の融資を受けたという。

小沢氏側は従来、この融資金を土地購入に充てたと説明していた。だが、午前の支払いと午後の融資の時間差が説明の矛盾を露呈した。

このような資金移動をしたうえ、収支報告書へ記載しなかったのはなぜか。疑惑の出発点である。

石川氏は、特捜部の事情聴取に「虚偽記載は私の一存」と供述したとされる。一方で、土地購入は小沢氏の指示だったことを認めている。小沢氏は政権へも強い影響力を持つ。会見などを通じ、一連の経緯への認識を明快に語ってほしい。

「陸山会」の会計処理を巡っては、05年にも小沢氏側からの約4億円の出入金が報告書に記載されなかった。07年にも約4億円が出金され、別の元秘書が小沢氏宅に運んだとされる。04年分の借り入れの返済とみられるが、記載はない。報告書への不記載の総額は17億円を超える。

昨年、西松建設からの献金に絡み公設第1秘書が逮捕・起訴された事件での小沢氏の発言を思い起こしたい。小沢氏は、献金は政治資金収支報告書にすべて記載し、やましいことはないと繰り返した。今回の事態が発言と矛盾するのは明らかだ。

小沢氏の資金問題では、「新生党」と「自由党」を解党した際の党の残余資金22億円以上が小沢氏側政治団体に移ったとされる。西松建設事件では、特定の業者からの多額の政治献金を検察から指摘された。

約4億円は私財かもしれないが、一政治家の資金としては巨額だ。その原資も気になる。小沢氏は、特捜部の聴取に応じるだけでなく国民への説明責任を果たしてほしい。

読売新聞 2010年01月08日

地検聴取要請 小沢氏は事実を明らかにせよ

民主党が掲げる「政治資金の透明化」は、単なる掛け声なのか。

小沢民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、東京地検が小沢氏に対し、参考人として事情聴取に応じるよう求めた。

小沢氏は地検の聴取に事実関係をすべて明らかにするとともに、公の場で国民にもきちんと説明すべきである。

疑惑の内容はこうだ。

陸山会が2004年10月に、東京都世田谷区の土地を購入した。購入資金について陸山会は、会の定期預金4億円を担保に金融機関から同じ金額を借りて充てた、と説明していた。

実際は、政治資金収支報告書に記載のない資金が使われていた。当時、私設秘書だった石川知裕(ともひろ)衆院議員が小沢氏から手渡されたという現金4億円だ。石川氏は調べに対し、そう供述している。

小沢氏は、昨年10月に土地購入に絡む収支報告書の疑惑が発覚すると「単純なミス」と述べたが、次々に明るみに出た問題は、それでは済まされない内容だ。

小沢氏は、土地購入原資の4億円をどうやって調達したのか。個人の資金なら、税務申告は適正に行っていたのか。陸山会が定期預金を担保に同額の資金を借りたのは、偽装工作ではないか。

今回の土地購入とほぼ同じ時期に、中堅ゼネコン幹部らが小沢氏側に現金5000万円を渡した、という供述もある。

さらに、陸山会では、05年と07年にも収支報告書に記載されていない資金があり、総額で十数億円に上るという。

こうした点に、小沢氏はどのように答えるのだろうか。

土地購入問題以外にも、小沢氏周辺では、政治資金を巡る疑惑が明るみに出ている。

西松建設の違法献金事件で、政治資金規正法違反に問われた公設第1秘書の公判では、小沢事務所が公共工事の受注に絡んで、ゼネコンから多額の資金を集めていた、と地検が指摘した。

小沢氏は常々、「政治資金をすべて公開してきたのは僕ぐらいだろう」と言うが、この状況では到底、額面通りに受け取れない。

小沢氏は、公設秘書の逮捕直後やその初公判後に、「不公正な国家権力の行使だ」などと、検察の捜査を強く批判してきた。

有力政治家だから、特別扱いしたのではないか――。国民にそんな疑念を抱かれないよう、地検は捜査を徹底し、全容を解明しなければならない。

産経新聞 2010年01月07日

小沢氏聴取へ 徹底解明が検察の責務だ

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる疑惑で政治資金収支報告書に記載のない多額の資金操作が次々発覚している。10億円以上にのぼる可能性があるという。

土地の購入資金の原資は何か。なぜ複雑な資金操作をしたのか。東京地検特捜部が小沢氏に出頭を要請して事情聴取するのは当然である。土地購入を指示したとされる本人の説明が疑惑解明に欠かせないからだ。

小沢氏は聴取に応じて納得できる説明をしてもらいたい。

この疑惑は、陸山会が平成16年に約3億4千万円で購入した東京都世田谷区の土地取引にからむものだ。購入の直前に4億円以上の資金が小沢氏関連の複数の政治団体から陸山会に入金された。

陸山会の会計事務担当だった石川知裕衆院議員は特捜部の事情聴取に「小沢先生の指示で土地を購入した」とし、小沢氏の個人資金4億円を土地代金に充てたという。だが、その資金の出所など未解明の点が多い。石川議員は一部不記載を認め、近く政治資金規正法違反容疑で立件される。

小沢氏は不動産や事務所経費など政治活動にかかわるカネを収支報告書で「すべて公表している」と強調してきた。しかし、発覚した資金操作はこれまでの説明とあまりに矛盾している。

さらには、小沢氏側が「水谷建設」から1億円の裏献金を受けたとされる疑惑もある。特捜部がゼネコンなどから一斉聴取したのもこの解明のためだ。

疑惑が報道される中で、民主党の山岡賢次国対委員長は、CS放送の番組で、検察側が情報をマスコミにリークしているとし、「まさにアジテーター」などと検察や報道を批判する発言をした。

問題は、小沢氏がなぜ、いかなる目的で資金操作をしているのかという疑惑を晴らすことができるかどうかだ。民主党内からも疑惑解明の声が出ないのも異様だ。

鳩山由紀夫首相の資金管理団体の偽装献金事件でも、上申書提出で首相の事情聴取は見送られてしまった。捜査が尽くされたのか疑問が残る。政治不信を高めるだけでなく、検察不信にもつながっている。

小沢氏の十分な説明がなく、党の自浄能力が見えない中で、検察当局は疑惑を徹底解明すべきだ。法と正義を守る公正な捜査を国民は注視している。

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