JR北強制捜査 膿出し切り再生の道探れ

毎日新聞 2014年02月13日

JR北海道捜索 組織のうみを出し切れ

JR北海道に警察の捜査のメスが入った。レールの検査記録改ざん問題で、北海道警が鉄道事業法違反と運輸安全委員会設置法違反の容疑で12日、本社などを家宅捜索した。

昨年9月に起きた函館線大沼駅構内の貨物列車脱線事故の直後、あるいはその後の国土交通省の監査直前に改ざんが行われ、国交省や運輸安全委員会の事故調査を意図的に妨害した疑いがあるというものだ。

事実ならば、乗客の安全を守るべき公共交通機関として、甚だしいモラルの喪失だ。JR北海道は深刻な事態と認識すべきだ。

JR北海道は先月、44の保線部署のうち33の部署でレールの検査記録改ざんを確認したと、社内調査の結果を公表した。併せて75人を処分した。5人の社員を解雇する一方で、野島誠社長ら経営陣は役員報酬減額にとどめ、続投を表明した。

だが、100%株主である政府の意向で、野島社長や小池明夫会長らトップを今春にも交代させる方向だ。抜本的な出直しのため、トップがけじめをつけるのは当然である。

社内調査によると、保線担当者の16%が改ざんを経験したと回答した。改ざんが引き継がれていた部署も少なくない。組織的な改ざんが常態化していたということだ。背景に慢性的な予算や要員の不足があったとしても、許されることではない。

社内調査で改ざんの一端が明らかになったが、任意の聞き取りだけで、長年の悪弊の背景を解明できたとは到底、言えない。

管理職の指示や黙認など、部署によっては上層部の関与も判明した。そういった組織の根深い体質にもっと踏み込んで改ざんの原因を洗い出すべきだ。

直接の捜索容疑は、昨年9月時点の記録改ざんだ。だが、道警は社員の聴取などを通じ、長年の慣行の実態を徹底的に解明してもらいたい。

上層部の関与についても、刑事責任を問うべきものがあれば捜査を尽くし、うみを出し切るべきだ。

本社と現場の意思疎通の不十分さや、現場の技術力低下を指摘する声は強い。また、レールの異常を長年放置する事なかれ主義の企業体質は、一朝一夕に改まるとは思えない。トップの交代だけでなく、社内のさまざまな部署に組織の外から人を呼ぶなどして、風通しのよい組織文化を一から育て直す必要がある。

今回の捜査は、国交省による告発を受けたものだ。監督する立場としては異例の対応だが、安全の根幹にかかわるのだから当然だ。

ただし、国として、JR北海道の将来像をどう描き、支援していくのか。今後、再生の道のりもしっかりと示してもらいたい。

読売新聞 2014年02月14日

JR北海道捜査 組織蝕む病巣をえぐり出せ

保線データの改ざん問題は、刑事事件に発展した。強制捜査により、組織の問題点を徹底的に洗い出してほしい。

北海道警が、鉄道事業法と運輸安全委員会設置法違反の容疑で、JR北海道の本社や、改ざんに関与した保線担当部署の一斉捜索に乗り出した。

国土交通省と運輸安全委員会の刑事告発を受けた強制捜査だ。改ざんは、両法が禁じた虚偽報告や監査妨害の疑いがある。

これらの容疑による告発は前例がない。JR北海道は1月にも、国交省からJR会社法に基づく初の監督命令を受けた。安全運行に対する信頼を失墜し、1987年の会社発足以来、最も危機的な状況にあると言えよう。

道警の捜査は、昨年9月の貨物列車脱線事故の直後に行われた改ざんが対象となる。

現場を管轄する部署で、脱線の危険性が高い「限界値」に近づいていたレール幅の計測値が、大幅に改ざんされた。虚偽の数値は、国交省や事故原因を調査する運輸安全委に報告された。

その後、国交省の特別保安監査を受ける際にもデータを改ざんした部署がある。

極めて悪質な行為である。太田国交相が「輸送の安全確保の仕組みを覆すもので、絶対に容認できない」と批判したのは当然だ。

改ざんを巡っては、JR北海道自身も社内調査を実施し、44の保線担当部署のうち、33部署で数値の書き換えがあったことを確認した。強制的な手続きを伴わない監査や身内同士の調査でさえ、多くの不正が明らかになった。

強制捜査により、組織全体を(むしば)む病巣が浮き彫りになることを期待したい。根深い改ざんの実態を解明するには、経営陣や労組関係者の聴取は欠かせまい。

重視すべきは、法人としてのJR北海道も告発された点だ。鉄道事業法などの両罰規定により、会社自体が違法行為の当事者として刑事責任の追及を受けることになる。捜査のメスが入る事態を招いた経営陣の責任は極めて重い。

改ざん問題だけでなく、JR北海道では不祥事が相次いでいる。1月には、運転ミスを隠すために自動列車停止装置(ATS)を壊した社員が逮捕された。

野島誠社長らは当面の続投を表明している。しかし、不祥事の再発を防ぐ有効な手立てを講じたとは言い難い。

組織を立て直すには、JR他社など外部からの人材登用も含め、経営陣の刷新が必要である。

産経新聞 2014年02月13日

JR北強制捜査 膿出し切り再生の道探れ

JR北海道のレール検査データ改竄(かいざん)問題は、北海道警が鉄道事業法違反容疑などで札幌市の同社本社ほかを家宅捜索する刑事事件に発展した。

データ改竄は、5カ月前にJR函館線で起きた貨物列車脱線事故の引き金にもなったとされ、国土交通省と運輸安全委員会が「悪質性が非常に高い」として告発していた。

国交省や同社がこれまで進めてきた調査方式には、身内が身内を聴取する甘さが残ると指摘する声が強かった。強制捜査の対象となるのは当然だ。

検査データの改竄は、人命に関わる重大事故にもつながる犯罪といえる。道警は脱線を予見できたのにレール幅の異常を放置した可能性があるとみて、業務上過失往来危険容疑などでも調べる方針という。司直の手で実態の徹底解明を急いでほしい。

国交省の監査では、データ改竄は相当前から組織ぐるみで広く行われていた疑いが拭えない。

JR北海道がことし1月に発表した調査では、現場の保線部署の7割強にあたる33部署で改竄が確認された。保線担当者の2割近くが「改竄の経験がある」と認めている。驚くべき数字だ。

道警は、上層部や組合の関与の有無を含めて、調べを進めるという。異常な行為が放置されてきた組織的背景についても、明らかにする必要がある。

身内に甘い同社の体質は、データ改竄にとどまらない。昨年秋には、自分の操作ミスを隠すためハンマーで自動列車停止装置(ATS)を壊した33歳の運転士を、出勤停止15日の懲戒処分としただけで、列車の検査や修理を担当する部署に異動させていた。

その後、事実関係が明るみに出たことで運転士は器物損壊容疑で告訴され逮捕されたが、このときも経営側と組合側とのなれ合い体質が指摘された。

他の鉄道会社では義務化が常識となっている運転士と車掌の乗務前のアルコール検査も、つい最近までは「酒が飲めない」と申告すれば免除していた。

今回のデータ改竄で同社は、社員5人を解雇し、野島誠社長ら役員を含む計75人を報酬減額などの処分としたが、公共交通機関として失った信頼の回復には、到底不十分だ。強制捜査を機に徹底して組織の膿(うみ)を出し切り、再生を目指す覚悟が必要だ。

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