日米関係がぎくしゃくすることは、中国や北朝鮮を利するだけだ。強固な同盟関係をアジア全体に示すことが肝要だ。
岸田外相が訪米し、ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官らと個別に会談した。中国による東シナ海上空の防空識別圏の設定は受け入れず、日米が連携して対応することで合意した。
岸田外相は、「中国の力による現状変更の試みには、冷静かつ毅然として対応する」と語った。ケリー長官は、尖閣諸島を含む東シナ海が、日米安保条約に基づく米国の対日防衛義務の対象になるとの見解を改めて強調した。
昨年末の安倍首相の靖国神社参拝に米政府が「失望」を表明し、双方の立場の違いを露呈して以来初の日米外相会談で、同盟関係の強化や、対中外交での連携をきちんと確認した意義は大きい。
「アジア重視」戦略を掲げるオバマ政権と日本が強固で安定した関係を構築することは、アジア全体の平和と繁栄に寄与する。4月に予定されるオバマ大統領の来日を、日米同盟の力強さを国際社会にアピールする機会としたい。
両外相は、北朝鮮の核問題などに対応するため、日米韓3か国の連携が重要との認識で一致した。岸田外相は、「実務に基づく具体的な協力」を積み重ね、日韓関係の改善に努める考えを示した。
北朝鮮の今後の出方は、不透明だ。韓国と朝鮮戦争の離散家族の再会で合意し、対話重視の姿勢を示す一方で、今月下旬の米韓軍事演習には強く反発している。
北朝鮮に核放棄を迫るには日米韓の足並みを乱さないことが重要だ。竹島やいわゆる従軍慰安婦の問題で冷え切った日韓関係の修復へ、双方の努力が欠かせない。
外相会談では、米軍普天間飛行場の辺野古移設の着実な進展や、返還予定の在日米軍基地内の環境調査などを可能にする新しい日米協定の交渉の開始で一致した。
新協定は、基地返還をより円滑に進める効果が期待される。米軍の抑止力の根幹である日本駐留を持続可能なものにするため、早期の合意を目指したい。
膠着状態にある環太平洋経済連携協定(TPP)について両外相は、早期妥結に向けて日米協議を加速させることを確認した。
日本の農産品5項目の関税撤廃をめぐる日米対立が続いている。アジア太平洋地域に新たな自由貿易体制を作るという日米共通の戦略的観点から、米国もそろそろ強硬一辺倒の姿勢を見直し、一定の柔軟性を示してもらいたい。
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