朝日新聞 2014年02月11日
民主党 「責任野党」を取り返せ
闘志でも焦燥感でもなく。都知事選投票日、福島県で開かれた民主党大会に漂っていたのはのっぺりとした倦怠(けんたい)感だった。
冒頭、全員起立して綱領を唱和し、最後は福島市在住の歌手aveさんの歌と幹部らの手拍子で締めくくった。「バラバラだった僕らが 今この時にこそ 一つになる時が来たんだ “頑張っぺ”」。出席者はさぞ励まされたことだろう。
特定秘密保護法を成立させ、靖国神社に参拝し、さあ、いよいよ集団的自衛権の行使容認に踏み込まんと意気上がる安倍政権下にあって、党の支持率は低迷。日本維新の会やみんなの党は野党共闘よりも自民党との連携に意欲的だ。士気が上がらないのは理解できなくもない。
それを見透かす安倍首相からは「政策の実現を目指す『責任野党』とは政策協議を行う」と揺さぶられる。この挑発的な物言いに、海江田代表が大会のあいさつで「与党に擦り寄ることは『責任野党』ではない」と反論したのは当然だ。
だがそれだけか。民主党は国会論戦を通じ、なるほどこれが「責任野党」かという姿を有権者に示し、首相からこの言葉を奪い返さなければならない。
自民党の1強時代、野党第1党が果たすべき責任とは何か。まずは、大会宣言として採択された「暴走する安倍政権と厳しく対峙(たいじ)する」ことだ。批判的立場から論戦を挑み、対案を出す。問題点や不明確な点を示し、選択肢の幅を広げる。数でかなわない分、熟議のために力を尽くすべきだ。
特定秘密保護法がそうだったように、疑問や不安が解消されないまま、首相自ら「説明不足」を成立後に認めるような形で事が決められることを許しては、有権者の代議制への不信は高まるばかりだろう。
とりわけ、集団的自衛権の行使を容認するか否かは、戦後日本の岐路である。民主党は早急に見解をまとめるべきだ。
元防衛相の北沢俊美・安全保障総合調査会長は「行使を認める場合は、憲法解釈変更ではなく憲法改正の手続きを」という案を作ったが、さまざまな異論が出たため結論は先送りされた。綱領に「真の立憲主義を確立する」の一文を掲げる民主党の立場として「解釈改憲反対」は妥当だ。行使容認に反対する有権者の「受け皿」が求められている。
反転攻勢の時である。集団的自衛権の問題でまとまれないのなら、あとは安倍政権に「責任野党」として丁重に遇してもらうしかないだろう。
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毎日新聞 2014年02月08日
民主党大会 瀬戸際を直視する場に
民主党大会の本会議が9日、福島県郡山市で開かれる。海江田万里代表の下、参院選惨敗後も野党として浮上の展望が開けぬ中での大会だ。
自民の「1強」構図が強まり、国会や政党のあり方がかつてないほど問われている。それだけに、野党第1党の責任をもっと自覚すべきだ。衆参120議員に届かぬ「中型野党」の座に安住してはならない。
採択する活動方針案は参院選惨敗を「信頼回復はまだ道半ばと痛感」と総括、同時に「安倍政権の暴走にブレーキをかけ、チェックする野党の役割」を強調した。だが、一昨年12月の野党転落以来「民主党は変わった」という印象が浸透したとは到底、言い難いだろう。
たとえば静岡県議会では民主党籍を持つ議員を中心とする会派が来春の統一選に向け、会派名から党名の削除を決めた。「隠す意図ではない」と説明するが、党のイメージが回復しない状況の反映ではないか。
問題なのは、党の生き残りを問われるような危機感が全体的に伝わってこない点だ。それどころか現状に甘んじ、政策や組織の点検に及び腰な気配すら漂っている。
とりわけ、エネルギー政策で自公と明確な対立軸を打ち出す覚悟が依然としてみえない。党が守勢に回るほど労組依存を強め、政策も縛られる内向きな悪循環を感じる。
努力もうかがえる。今国会では核密約問題で安倍晋三首相から新見解を引き出したり、補正予算の水ぶくれを具体的に追及したりする場面もあった。さきの臨時国会では特定秘密保護法で第三極勢とは一線を画し、安易な修正には応じなかった。国会で存在感を示すことこそ、信頼回復の王道だ。
だからこそ、安全保障など内外の課題で党の政策を集約する努力がいる。集団的自衛権行使の問題をめぐり、海江田代表は代表質問で首相が解釈改憲を目指す姿勢に疑問を投げかけた。手続き論ももちろん重要だが、党としてどんな日米同盟像を描いているかをまずは示すべきだ。
財源対策が破綻した2009年衆院選マニフェストに盛られた高速道路無料化など看板政策の見直しもやっと、これからだという。困難な作業から顔をそむけてはならない。
民主党内には野党同士の再編を探る動きもある。党の政策がまとまらないからといって安易に離合集散に走っても、有権者の期待がふくらむとは思えない。
海江田代表が来春の統一選を戦う党首にふさわしいか、今国会の対応で力量が改めて問われよう。海江田氏は依然として発信力不足が目立つ。切迫感をもって党再生の指針を語ってほしい。
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読売新聞 2014年02月11日
民主党大会 破綻した政策にまだ拘るのか
安倍政権の政策への対案作成や重要政策の見直しを掲げても、きちんと結論を出し、一致団結しなければ、党の再生はおぼつかない。
民主党が福島県郡山市で党大会を開いた。海江田代表は、「いのち、雇用、暮らしを守る政治を全党員が一丸で進める。民主党こそが野党勢力の中心に立たなければならない」と述べ、安倍政権への対決姿勢を打ち出した。
2014年度活動方針も、「数を頼みに『暴走』しかねない安倍内閣を国会審議を通じてしっかり監視する」と強調している。
だが、民主党を取り巻く党内外の環境は相変わらず厳しい。
海江田執行部のリベラル色の強い「抵抗野党」路線には、党内の保守系議員に不満が強い。昨年後半は、落選議員らの離党が相次いだ。課題とされる海江田代表の求心力は低いままだ。
日本維新の会やみんなの党は、「責任野党」として、自民党との政策協議に前向きな姿勢を示しており、国会での野党共闘は進んでいない。民主党が描く「民主党を中心とする野党再編」も展望が開けていない。
民主党は、「対案主義」を標榜し、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に対抗する経済政策をまとめると説明してきた。だが、党大会でも、いかにデフレを脱却し、経済を成長させるのかという肝心の具体策は示されなかった。
桜井政調会長は、09年衆院選の政権公約(マニフェスト)で掲げた「無駄遣いの撲滅による年16・8兆円の財源捻出」「最低保障年金の創設」など7項目の重要政策を見直す方針を表明している。
大幅な増税が不可欠な最低保障年金の創設などが非現実的なのは明白で、重要政策は本来、12年衆院選の前に見直すべきだった。民主党が「反転攻勢の先陣」と位置づける来年春の統一地方選までに結論を出すのでは悠長すぎる。
党内には依然、「政策の方向性は間違っていない」などと政権公約に拘る、見直しへの慎重論もくすぶる。活発に議論するだけで、なかなか結論を出せない党の体質は改善していない。
安倍首相が目指す集団的自衛権の憲法解釈の変更について、民主党は党大会までに、反対する方向で見解をまとめようとしていたが、保守系議員らが異論を唱え、意見集約は進んでいない。
長年、安全保障政策をめぐる党内論議を回避してきたツケにほかならない。困難な課題を先送りする姿勢も改めねばならない。
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産経新聞 2014年02月08日
民主党大会 「理念なき党」を脱却せよ
「たしかな野党勢力」といったスローガンはいったい何を目指しているのか。その前に、やるべきことがあるはずだ。
民主党が8日からの党大会で採択する新年度の活動方針案は、「現場主義」や「対案主義」などで安倍晋三政権を厳しく監視するという。だが、何をもって政権とどう対決するのかという心棒となるものが見当たらない。目玉政策と呼べるものもあるのだろうか。
民主党は、この国をどうするのかという理念や基本政策を曖昧にしたまま政権につき、外交・内政課題を迷走させて退場した。
政権を競い合う受け皿をなお目指すというなら、海江田万里代表は問題の先送りをやめ、現実路線への転換を党員の前ではっきりと約束すべきだ。
党大会に先立ち、全額税方式の「最低保障年金」の創設、高速道路無料化などの政策の見直しが、党の「次の内閣」で始まった。看板政策である一方、ばらまき批判を浴びてきたものだ。
最低保障年金創設にこだわったために、年金制度改革をめぐる自民、公明両党との協議は進展せず、「決める政治」に背を向ける原因にもなってきた。実現できない政策は放棄し、路線転換の第一歩につなげてもらいたい。
民主党は安倍首相が目指す集団的自衛権の行使容認についても、明確な方針が定まっていない。憲法改正への具体的な対応も同様である。昨年の参院選以降、議論する時間は十分あったはずなのに、進展はみられなかった。
党内対立を恐れ、重要政策の議論や結論を先送りしてきたことが逆に党の分裂につながった。民主党がいう「与党の経験」を生かすとすれば、その過ちを繰り返さないことに尽きるのではないか。
海江田氏は看板政策の見直しについて「改革の旗を降ろすのではない」と語っている。はなから反対派に配慮して政策で党をまとめきる指導力を発揮する気がないなら、路線転換は望めない。党再建を担う資格も疑われよう。
東京都知事選への対応でも当初は舛添要一氏支援だったはずが、細川護煕元首相が手を挙げるや、具体的な政策も聞かずに乗り換えた。政権転落後も漂流を続け、政策は二の次、三の次という姿を象徴しているのではないか。これでは民主党支持者も、この党の何に期待していいのかわからない。
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