ソチ五輪開幕 平和の祭典でテロを許すな

毎日新聞 2014年02月07日

ソチ五輪開幕 メダルが全てではない

第22回冬季オリンピック大会がロシア南部の保養地ソチで開幕する。テロの恐怖にさらされ、平和を象徴するスポーツの祭典が厳戒警備の中で行われるのは皮肉だ。東京で2度目の夏季大会が開催されるのは6年後。日本選手に注目するだけでなく、政治との関係やオリンピックの意義やあり方についても考えたい。

ソチ大会はプーチン政権が威信をかけた国家事業になっている。ロシアは今回、「スポーツ大国」の復権を狙い、世界3位以内の金メダル数を目標に掲げている。達成のため、メダルを獲得した代表選手に報奨金(金は約1240万円、銀は約775万円、銅は約527万円)を授与する。日本の4~5倍だ。

「スポーツ立国」を目指す日本も2020年東京大会で世界3位以内の金メダル数を目標に掲げている。先月末、大会組織委員会の森喜朗会長が強化費の充実を要望した際、安倍晋三首相は12年ロンドン大会で英国が金メダルを29個獲得したことを挙げ、「英国は日本より人口が少ないのだから、日本はそれ以上取らないといけない」と激励したという。

だが、国家による関与はいいことばかりではない。

ロシアは10年バンクーバー大会で金メダル数が3個と過去最低の成績に終わった。当時のメドベージェフ大統領がロシア・オリンピック委員会会長やスポーツ相のほか、複数の競技団体幹部の辞任を要求する問題に発展した。選手の強化に巨額の資金を投入したが、見合うだけのメダル数を獲得できなかったというのが政治介入の理由だった。

ロシアのようなことは日本では起こり得ないにせよ、行き過ぎたメダル主義がもたらす弊害には留意しなければならない。

日本は今回、メダル総数で10個を獲得した1998年長野大会を上回ることが目標で、スキー・ジャンプ、フィギュアスケート、スピードスケートなどへの期待が高い。

メダルの数は評価の基準だが、全てではない。ベストを尽くしても相手が上回ることはよくある。

観戦する側も自国の選手を応援するだけでなく、対戦相手であっても素晴らしいプレーは称賛したい。

オリンピックはスポーツを通して相互理解を深め、平和な社会を推進するという崇高な理念を掲げた競技大会であることを改めて強調したい。そこが世界選手権やワールドカップとの大きな違いなのだ。

日本選手は選手村において多様な価値観を持つ他国の選手と積極的に交流し、生涯の付き合いとなるような友人をつくってほしい。帰国後はソチでどんな出会いがあって、何を学んだのかを語ってほしい。

読売新聞 2014年02月07日

ソチ五輪開幕 平和の祭典でテロを許すな

テロの脅威にさらされる中での開幕である。大会が無事に行われることを願いたい。

ソチ冬季五輪は7日、開会式を迎える。23日までの期間中、80以上の国・地域から集うアスリートが、7競技98種目で熱戦を繰り広げる。

華やかなスポーツの祭典のスタートとは裏腹に、今回の五輪は、重苦しい雰囲気に覆われている。イスラム過激派がテロを予告しているからだ。五輪が標的にされる異例の事態である。

ロシアでの五輪開催は、旧ソ連時代のモスクワ夏季五輪(1980年)以来、2度目となる。

モスクワ五輪の前年、ソ連はアフガニスタンに侵攻した。これに抗議した日米など多くの国が、五輪をボイコットした。

屈辱を味わったロシアにとって、ソチ五輪は威信回復をかけた一大政治イベントと言える。プーチン大統領は、五輪を成功させることで、ロシアがソ連崩壊後の混乱を克服し、大国として復活したとアピールしたいのだろう。

黒海に面した南部の保養地ソチでの競技会場建設などに、五輪史上最大の約5兆円を投じた。

これに対し、ソチの近隣地域を拠点とするイスラム過激派は、プーチン政権の強権的な少数民族政策に反発している。五輪テロを予告した一派は、昨年12月にボルゴグラードで起きた連続自爆テロへの関与も認めた。

ソチに敷かれた厳戒態勢が、緊迫した状況を物語る。警察など治安機関から約4万人が動員され、沖合には海軍艦艇が展開する。空からの監視も強化した。

約6000人が滞在する選手村では、徹底した身元チェックや所持品検査が行われている。

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、テロへの懸念について、「ロシアを全面的に信頼している」と語った。

選手にとって、ソチ五輪は、ものものしい警備の中で、いかに競技に集中するかという精神力も問われる大会となるだろう。

今回、出場する日本選手は113人に上る。このうち65人が女子選手で、冬季五輪では初めて女子選手数が男子を上回った。

目標は、金5個を含む計10個のメダルを獲得した長野五輪(1998年)以上の成績だ。新種目のスキージャンプ女子の高梨沙羅選手、フィギュアスケートの浅田真央、羽生結弦両選手ら金メダルを狙えるメンバーを擁している。

選手団が実力を存分に発揮することを期待したい。

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