鳩山政権の命運を左右しかねない通常国会開会を前に、内閣の要的な存在だった藤井財務相が辞任した。健康上の理由とされており、辞任はやむを得まい。
それにしても、予算編成を仕切った財務相が予算案審議を目前に辞任するのは異例のことだ。
鳩山首相は、後任に菅副総理を充てることを決めた。首相によれば「ダメージを最小限にするため」であり、予算編成にもかかわった菅氏の起用によって、国会を乗り切ろうという判断だろう。
藤井財務相は、昨年の衆院選前には、政界引退を表明していた。だが、首相がこれを引き止め、急きょ比例選で擁立した。組閣後は藤井財務相に税制改正や予算編成を基本的に委ねてきた。
しかし、藤井氏は、民主党の政権公約(マニフェスト)実施に伴う財政負担増と、財務相として財政規律を維持することとのジレンマに苦しんだようだ。
結局、体調不良から予算案審議は乗り切れないと判断、中途で投げ出すより、現時点での辞任を選んだものとみられる。
これまで国会答弁を無難にこなし、経済財政運営の柱でもあった藤井氏を欠いたことは、首相にとって大きな痛手となろう。
しかし、首相の側にも落ち度はなかったのか。
予算編成は、予想以上の税収の落ち込みと、閣僚らの抵抗もあって極めて難航した。首相は、最後は小沢民主党幹事長の“裁定”を受け入れて決着を図った。
藤井氏が、こうした党側の横やりともいうべき動きに、不快感を募らせたことが辞任の一因、とも指摘されている。
通常国会では、政治とカネの問題が大きな論点になる。
自民党が、首相の母親からの巨額の資金提供をめぐる税務処理の問題を厳しく質すのは必至だ。
さらに、かつて小沢党首の下、藤井氏が幹事長を務めていた自由党の解散時、政党交付金が、所属議員の政治団体に寄付されるなどして国庫に返されなかった問題でも、追及を強めるだろう。
藤井氏は、国会論戦で野党側の追及に身をさらすことを避けたかった、との見方も出ている。
首相と小沢氏の「二元支配」や首相の指導力不足、不祥事が、財務相の辞任を促した面もある。
菅氏が務めていた国家戦略相は、仙谷行政刷新相が兼務する。この新体制の下、首相は、景気対策などの政策課題に全力で取り組む必要がある。
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