どのような人物が「憲法の番人」の重責を担っているのか。国民審査は最高裁判所の裁判官の適否を問う、重要な機会といえる。
最高裁裁判官の国民審査が、30日の衆院選に合わせて実施される。今回は、15人の裁判官のうち、竹崎博允長官ら9人が審査対象となっている。
最高裁の裁判官は、内閣によって任命(長官は内閣の指名に基づき天皇が任命)される。慣例として、裁判官、検察官、弁護士、行政官、学者の中から選ばれるが、選考過程は公表されない。
司法権の頂点に位置する裁判官たちの仕事ぶりをチェックするのが、国民審査だ。有権者は、罷免が相当と思う裁判官に「×」を書いて投票する。
だが、裁判官の氏名すら知らず、判断のしようがない、という人も多いだろう。「形骸化した制度」と指摘されるゆえんである。
罷免を求める票が有効票の半数を超えた裁判官は罷免されるが、これまでに罷免の例はない。
各裁判官は、担当した裁判で、どのような見解を示したのか。それが、国民審査での判断材料になる。しかし、各家庭に配布される「国民審査公報」では、判決の詳しい内容までは分からない。
最高裁が出す判決の特徴は、裁判官の個別の判断内容が分かることだ。多数を占めた意見が、最終的な結論になるが、それに反対した裁判官の意見も明記される。
裁判官の考え方を比較しやすいのは、15人全員で審理する大法廷の判決ではないだろうか。
例えば、「1票の格差」が最大で2・17倍だった前回の衆院選が憲法違反かどうかが争われた裁判で、大法廷は2007年6月、多数意見で「合憲」と結論付けた。この裁判には、審査対象の裁判官のうち、3人がかかわった。
過去の主な判決は最高裁のホームページで検索できる。審査の前に閲覧してみてはどうだろう。
最高裁の裁判官が国民審査の対象となるのは、任命後、初めて行われる衆院選の際だ。その後は、10年ごとに再審査を受ける。憲法の規定によるものだが、就任間もない裁判官は、関与した裁判例が少なく、判断材料が乏しい。
さらに、近年、60歳未満で就任した人はおらず、70歳の定年までに審査を受けるのは1度だけ、というのが常態化している。
こうした制度上の問題点も形骸化を招いている要因であろう。制度の今後のあり方について、議論を深めることが必要だ。
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