北陸新幹線談合 官民癒着の徹底解明が必要だ

朝日新聞 2014年02月06日

新幹線談合 腐敗根絶へ制度強化を

地元の人びとが期待を寄せる新幹線の整備事業が、腐敗行為の舞台になっていた。

来春の開業をめざす北陸新幹線の工事の入札で談合が発覚した。発注した独立行政法人も協力した疑いが持たれている。

事業には国や自治体も出資しており、負担のツケは納税者やJR利用者にも回ってくる。

許しがたい行為であり、公正取引委員会と東京地検には早急に全容を解明してもらいたい。

問題になっているのは、線路の雪を溶かす設備の工事だ。業者の会合後、予定価格に肉薄する価格で落札が相次いだ。

談合には都市部の大企業が関与しており、放っておけば各地で同様に競争がゆがめられるおそれが高い。

ひときわ深刻なのは、いわゆる「官製談合」の疑いもあることだ。発注側の「鉄道・運輸機構」の担当者は、業者に入札の情報を伝えていた。

入札の不調で工事が遅れ、来春の開業に間に合わないと問題になる。その重圧があった、と機構の幹部は語っている。

だが、工期を優先して談合に目をつぶったとすれば言語道断だ。公取委と地検は官側の責任にも厳格に切り込むべきだ。

せめてもの救いは、一部の関係者の自発的な申告が解明の手がかりになっていることだ。

違反行為を自ら申し出た企業は課徴金や刑事告発を免れる。この減免制度は2006年の独占禁止法改正で導入され、その4年後に拡充された。

導入が欧米より遅れた背景には司法取引的手法への懸念があった。仲間の告げ口が、日本の企業風土で期待できるかどうかも疑問視されていたが、着実に成果は出ているといえる。

現実的に、こうした制度なしには、闇にはびこる談合やカルテルをつかむのは難しい。

違法行為を申告せず課徴金を減免されなかった企業が、株主から訴訟を起こされるケースも出ている。コンプライアンス(法令順守)に対する株主や社会の目は厳しさを増している。

企業が率先して違法行為がないか目を光らせる。それが企業自身のリスク回避に役立つ。そんな仕組みをめざしたい。

談合を主導した企業への課徴金の割り増しや、懲役刑を引き上げる法改正が4年前にあった。だが、それでもまだ、欧米と比べれば制裁は緩い。一度摘発されても、違法行為を繰り返す企業もある。

談合は、隠せないし、割にも合わない。そう実感させる制度へ向けて、ルールの強化を続けていくべきだ。

読売新聞 2014年02月05日

北陸新幹線談合 官民癒着の徹底解明が必要だ

新幹線の安全運行に欠かせないインフラ工事の入札が、官民の癒着でゆがめられていたのか。捜査当局には徹底解明が求められる。

北陸新幹線の雪害対策工事で談合の疑いが浮上した。東京地検特捜部と公正取引委員会は入札に参加した設備工事会社と、発注元の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」を独占禁止法違反容疑で捜索した。

捜査の対象は、2014年度末に開業予定の長野―金沢間の工事だ。工事費は、国の補助金や自治体の負担金などで賄う。談合で入札価格がつり上がれば、業者が不正な利益を獲得し、その分、余計な公費が支出される。

談合の悪質性を考えれば、特捜部と公取委が刑事責任の追及に乗り出したのは当然と言える。

特に問題なのは、官製談合だった可能性が高い点だ。

工事の入札では、予定価格に対する落札額の割合を示す落札率が99%を超える複数のケースがあった。予定価格にほぼ等しい落札が相次げば、価格が漏洩(ろうえい)されていたと見るのが自然だろう。

これまでの特捜部の任意の事情聴取に対し、一部業者の担当者が、入札前に支援機構支社の課長クラスから予定価格を示唆されたと供述しているという。

機構側には、北陸新幹線開業に間に合わせるため、入札を円滑に進めたいとの思惑があったとされる。入札が不調に終わると、再入札までに2か月程度かかり、工事の遅れにつながるからだ。

こうした自らの都合で、機構が談合に手を染め、業者側に便宜を図れば、入札は骨抜きになる。公共事業に対する信頼も損なう。

官製談合防止法は2006年12月の改正で、公務員ら個人への刑事罰が導入された。政府が100%出資する機構の職員にも適用される。特捜部は、機構上層部の関与の有無を含め、厳正に捜査を進めてもらいたい。

支援機構は、北陸新幹線のほかにも、北海道や九州の整備新幹線の建設工事を手がけている。不自然な入札はなかったか、予定価格の情報管理は適正に行われているか。早急に再点検すべきだ。

業界ぐるみの談合体質の根深さも浮き彫りになった。捜索を受けた会社には、融雪設備工事のノウハウを持つ大手が含まれる。

この業界では、06年にも当時の防衛施設庁発注の空調設備工事で、談合が摘発された。

業界全体で()れ合いを排し、法令順守を徹底する必要がある。

産経新聞 2014年02月07日

新幹線談合 割に合わない行為と知れ

官民癒着の典型である官製談合疑惑が、またもや浮上した。

来春、長野-金沢間で部分開業する北陸新幹線の融雪設備工事をめぐって、発注元の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で東京地検特捜部の捜索を受けた。

機構が平成23年3月から24年11月にかけて発注した13件のうち、10件は予定価格に対する落札額の割合を示す落札率が9割台で、うち5件は99%を超えていた。特捜部は、予定価格が漏れていた可能性があると見て官製談合防止法違反の適用も視野に入れているが、当然だ。徹底解明を求めたい。

談合疑惑が持たれている設備工事業者十数社は、落札者を事前に調整するため、中華料理店などで頻繁に会合していたという。その上で、幹事役の社が機構職員に接触して予定価格を聞き出していたようだ。法令順守に対する認識の乏しさにはあきれるばかりだ。

公共工事の落札価格を不当につり上げる談合は、税金を食い物にする重大な詐欺行為だ。本来、それを防ぐべき立場の者が主導する官製談合はさらに深刻で、納税者への背信行為にほかならない。

官製談合防止法は平成18年12月の改正で適用行為の拡大に加え、関与した職員への罰則規定が新たに盛り込まれた。違反した場合は5年以下の懲役または250万円以下の罰金が科されるが、まだまだ手ぬるいとする声もある。

だが、未然防止でなにより重要なことは、談合が割に合わない行為だと思い知らせることだ。

違反した場合の課徴金引き上げや入札参加制限などの罰則強化も必要だが、なにより業者自身が不正に手を染めぬよう互いを監視する制度作りが求められる。

改正防止法には違反行為を自ら申し出た企業は課徴金や刑事告発を免れる減免制度も設けられている。今回の談合疑惑摘発でも、この減免制度が役立ったという。さらなる制度の充実も考えたい。

公共工事の入札では、落札業者が決まらない「入札不調」も相次いでいる。東日本大震災の復興事業の急増などで、職人の賃金や資材価格が高騰しているからだ。

今回の談合疑惑についても、新幹線開業を目前にした機構側の焦りを背景に指摘する声もあるが、だからといって談合が容認されていい理由にはならない。

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