橋下氏辞職表明 唐突で乱暴な出直しだ

朝日新聞 2014年02月04日

橋下氏の辞職 選挙が唯一の解決策か

苦し紛れのような一手で、事態は前に進むのか。

大阪の橋下徹市長が辞職し、選挙をすると表明した。大阪都構想が議会の反対で行き詰まっていることから、選挙で民意を問い直し、実現に向けて歯車を動かすねらいだ。

確かに11年秋の大阪ダブル選で、橋下氏は自ら率いる「大阪維新の会」幹事長の松井一郎氏とともに都構想を掲げ、市長選も知事選も制した。大阪府市の再編で二重行政のむだをなくし、大阪を立て直す構想は、東京一極集中のなかで経済や暮らしの先行きに不安を抱える多くの市民に歓迎された。

ところが自身の従軍慰安婦発言などで支持率は下がり、議会に足元を見透かされてきた。「構想の設計図を夏までにつくらせて」と選挙で訴えるとの発言には、政治家として勢いがあるうちに決着しようとの姿勢がみてとれる。

行き詰まりの原因は、まず橋下氏の側にある。議論が具体化するにつれて矛盾や問題点が浮き彫りになっているのに、解決策を十分に説明しきれていないからだ。

例えば二重行政の解消で生み出せるはずだった巨額の財源は、想定の4分の1に満たないとわかった。都構想は行政機構の改革ではあるが、その先にある経済再生や新たな都市像などのビジョンも不明なままだ。

大改革に痛みは避けられない。まずは市民に選ばれた議員の疑問に答え、とことん説得する責任がある。

にもかかわらず見切り発車のように、「設計図をつくらせて」と選挙に突き進むのは筋違いだろう。勝ったところで対立は激化し、議論はさらに袋小路に入る恐れがある。

議会の側にも問題がある。

都構想の背景には、大阪の置かれた深刻な現状がある。高度成長のツケで団塊の世代がいっせいに高齢化し、生活保護受給者も全国一多い。だが企業に元気がなく若い世代も減り、税収が増える見込みはない。現状維持では破綻(はたん)は避けられない。

都構想に反対なら実現可能な第2、第3の道を示して議論するのが議会の役割ではないか。議論の時間を引き延ばし、維新や橋下氏の勢いが衰えるのを待つだけでは無責任だ。

いま必要なのは、市民が広く危機意識を共有し、新しい大阪のあり方について議論を盛り上げていくことだ。そのために市長も議会も手を尽くしたと胸を張れるのか。

このままでは大阪の未来が心配である。

毎日新聞 2014年02月04日

橋下氏辞職表明 唐突で乱暴な出直しだ

あまりに唐突ではないか。大阪市の橋下徹市長が辞職し、出直し選挙に立候補すると表明した。大阪府と大阪市を統合再編する「大阪都」構想の実現手続きについて民意を問うのだという。

大阪都構想は橋下市長が2011年の市長選で掲げた最大の公約だ。それが市議会野党の抵抗でスケジュール通り進まなくなったからといって選挙に打って出る手法は乱暴だ。出直し選挙は来年度予算の編成時期とも重なり、市政停滞による住民生活への影響は避けられない。市政トップとしても無責任ではないか。

都構想は、政令市の大阪市を複数の特別区に分割して身近な行政サービスを担い、広域行政を府に一元化するもので、二重行政を解消する狙いがある。橋下氏らは今秋までに大阪府議会と大阪市議会の承認を得たうえで、大阪市民を対象にした住民投票を実施し、15年春の移行を目指していた。

都構想を実現可能とする新法は既に成立し、昨年春から法に基づく協議会で特別区の区割りなどが審議されていた。先月31日の協議会で、橋下氏は四つの区割り案を一つに絞り込むよう求めたが、自民、公明など野党は「議論が深まっておらず、時期尚早だ」と提案に反対し、協議は暗礁に乗り上げた。この事態を受けて橋下氏は出直し選挙を表明した。

橋下氏は選挙に勝利し、住民投票への手続きを一気に進めたい考えのようだ。しかし、市長と議会はいずれも選挙による市民の代表であり、粘り強い協議を通じた歩み寄りが必要だ。たとえ橋下氏が再選しても、議会の構成に変わりはなく、関係が修復する保証はない。

橋下氏は「これでは5年たっても案がまとまらない」と野党を批判するが、15年春実現というスケジュールありきでは理解を得られない。

野党すべてが二重行政解消という都構想の理念を否定しているわけではない。協議が行き詰まった根本的な理由は、「大阪都」で住民の暮らしがどう変わるのかが具体的に示されていないことだ。

大阪市に隣接する政令市の堺市は昨年9月の市長選で、「市の解体につながる」と参加に反対した現職が再選し、都構想には参加しないことになった。橋下氏は、住民が納得する「大阪都」のメリットをもっと説明すべきだ。

野党には対立候補の擁立を見送り、橋下氏の再選を無意味にする動きもあるようだ。だが、橋下氏の方針に異を唱えるのであれば、候補者を出して、選挙戦で堂々と都構想の是非を議論するのが筋ではないか。橋下人気を恐れて選挙に及び腰になってはいけない。

産経新聞 2014年02月03日

橋下氏の辞職表明 出直し選は民意に沿うか

大阪市の橋下徹市長が辞職して、出直し選挙に再出馬する意向を表明した。議会側の賛同が得られず実現が困難になっている大阪都構想への「民意」を問う考えだ。

橋下流の奇策だが、実行されれば乱暴な政治手法と言うしかない。来年度当初予算案の編成などに影響は避けられず、行政の長としても無責任である。

他党と考えが違うからといって辞職-選挙では短兵急に過ぎる。誠実に話し合い、一致点を見いだす努力を重ねるのが、あるべき姿だ。市政停滞だけでなく多額の選挙経費支出という問題もある。

橋下氏は「(都構想が)誤解された」と言ったが、二重行政の解消など都構想の理念は理解されたとしても、大阪がどう変わるのかについて説明不足だし、具体的な制度設計も遅れている。

次回統一地方選前に決着をつけたいようだが、あと1年余りしか時間がない。都構想で民意を問うなら、丁寧に有権者に説明し統一地方選で審判を仰ぐのが筋だ。

出直し市長選では、他党はあえて対立候補を出さず、“不戦敗”にする可能性もある。その場合、そこで示された民意は弱い。

橋下氏は以前にも任期途中で大阪府知事を辞職して大阪市長選にくら替え出馬した。都構想を争点にしたダブル選挙は、松井一郎現知事とともに圧勝した。その大勝の再現を狙っているのだろう。

前回の統一地方選で府議会の過半数を握った大阪維新の会の躍進は、橋下氏の個人人気に負うところが大きい。従来の政治家にはない発想と発信力でブームを巻き起こし、日本維新の会を結成して国政にも進出した。

その国政への影響も重大だ。

橋下氏は当面、国政に距離を置いて都構想に専念することや、出直し選挙に負ければ政界から身を引くという考えも示した。

維新は憲法改正や集団的自衛権の行使容認などを掲げている。

出直し選挙の結果は、橋下氏の去就につながり、中央政界での維新の党勢を左右する。橋下氏の指導力で国政に進出した政党だけに、出直し選の行方次第では、維新の屋台骨が揺らいで、野党再編や憲法改正、安全保障政策の議論にも影響を与えることは避けられないだろう。

辞職、再出馬は氏の独り相撲である。市民も国民も混乱を望んでいるわけではない。

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