FRB議長交代 超緩和の評価これから

毎日新聞 2014年02月01日

FRB議長交代 超緩和の評価これから

前任のグリーンスパン氏は在任中、「マエストロ(巨匠)」「英雄」などとあがめられた。退任後、リーマン・ショックが起こると一転、そこに至るバブルの責任を追及され「悪党」呼ばわりされた。31日、米連邦準備制度理事会(FRB)議長の座を降りたバーナンキ氏にはどんな歴史の審判が下るのだろう。

2期8年にわたるバーナンキ時代は、米国だけでなく世界の経済にとって、近年経験のない激動期だった。リーマン・ブラザーズの破綻後、市場では民間資金の出し手がいなくなり、経済の血液が滞る深刻な信用不安に見舞われる。FRBは最後の貸手として迅速に動き、大量の資金を供給して、金融危機が恐慌へと発展するのを食い止めた。指揮をとった氏の功績を評価する声は多い。

ただ、そもそも危機の元となった長期に及ぶ低金利政策をグリーンスパン時代に理事として推進した当事者だったことも忘れてはなるまい。

米経済が金融危機を脱し回復を始めた後にFRBが実施した2度の量的緩和については、賛否両論ある。私たちは、「弊害の方が大きい」と警鐘を鳴らし、バブルの再発や新興国経済の不安定化、政策転換時の混乱などを指摘してきた。一方で、財政悪化や政党間の対立から財政出動が困難になる中、FRBの追加緩和はやむを得なかったとの声もある。

最終的な評価は、時間を要することになるだろうが、ようやく始まった量的緩和の修正により、世界の経済は影響を受け始めている。アルゼンチンやトルコなど新興国から緩和マネーが引き始め、通貨や株価が急落。新興国は、資金をつなぎ留めるため、景気にブレーキとなる利上げで対抗せざるを得ない状況だ。

一方、米国へ逆流を始めたマネーは、まずリスクを回避しようと債券市場に向かったが、今後流れが変わる可能性がある。量的緩和の縮小によりFRBによる国債購入が減り続けるため、国債価格が下落し長期金利が跳ね上がる危険だ。

バーナンキ議長下で緒に就いたばかりの政策の正常化は、後任でFRB初の女性議長となったイエレン氏に委ねられた。市場の動揺に一定の目配りは必要だろうが、かといって正常化の歩みが止まれば、バブルが膨らみ再び金融危機を招く。より甚大な打撃となるリスクは何かを見極めねばならない。

米国が異例の政策から脱する“出口戦略”に着手した半面、今や米国以上に極端な緩和策を取っている日銀に政策転換の兆しはない。消費増税後の景気下支えのため追加の緩和を期待する声すらある。FRBの経験から日銀が何を学び取るかが、まさに重要になろうとしている。

産経新聞 2014年02月03日

FRB新議長 混乱避ける金融正常化を

多難な船出だろう。

米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長として異例の金融緩和策を支えたイエレン氏が、3日の宣誓式を経て新議長に正式就任する。危機対応型の金融政策を平時に戻す「出口戦略」を円滑に進めるのが責務だ。

FRBが昨年末に量的緩和の段階的縮小を決めた途端、世界の金融市場が動揺した。新議長には、市場に不安を招かぬよう情報発信を工夫し縮小ペースを上手に調節してほしい。

ハト派(金融緩和派)とされるイエレン氏は、リーマン・ショック後の経済危機から脱するため量的緩和を進めた一人だ。労働経済学の学者でもある。緩和縮小について「景気回復が前提」と述べている。雇用が悪化したり長期金利が高騰したりしないよう、細心の注意を払いながら、金融政策の正常化を図らねばならない。

懸念すべきは、世界経済への影響だ。新興国に流れ込んだマネーが逃げ出しつつあり、新興国通貨は急落した。通貨安で輸入物価が上昇すればインフレを招くため、新興国は利上げなどによる通貨防衛に追い込まれている。

金融市場の動揺は日米の株式市場の乱高下も招いた。新興国経済が悪化すれば、日本の輸出産業にも打撃を与える。消費税増税を控えて正念場を迎える日本の景気に冷水を浴びせないか心配だ。

そんな中でFRBは1月末にさらなる緩和縮小を決めた。景気回復を踏まえて出口戦略を着実に進めるという意思表示でもあるが、声明では新興国の通貨不安には触れなかった。新興国に翻弄されて足元がふらつくようでは、かえって市場の不安をあおりかねないという判断もあったのだろう。

むろん、新興国通貨が売られる背景には経常赤字など新興国側の構造問題がある。トルコや南アフリカ、ブラジルなど「フラジャイル・ファイブ(脆弱(ぜいじゃく)な5カ国)」と呼ばれる国が典型だ。緩和マネーが自国経済を後押ししていた時期に十分な構造改革をできなかったことが響いている。

ただ、米金融政策が世界のマネーを左右している以上、イエレン氏には、世界に目を配りながら政策運営に当たる責任がある。

2月下旬にシドニーで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などの場で、混乱回避に向けて丁寧に説明し、協調的な姿勢を取るよう求めたい。

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