日本相撲協会 懸念一掃する運営を

朝日新聞 2014年02月03日

相撲協会 「公益」の重み自覚せよ

日本相撲協会が、政府の新制度のもとでも「公益法人」と認められた。入場料を含む収入の多くが非課税になるなど、引き続き優遇される。

力士の暴行死事件や大麻事件、暴力団員の観戦、野球賭博(とばく)、八百長問題……。ここ数年不祥事が相次ぎ、体質が厳しく問われた中での認定である。

相撲界は、この新たな出発を機に、改めて「公益」を担う重みを自覚せねばならない。

残念ながら、いまだに抜本的な改革ができたとの評価は少ない。だが認定がなければ、国技を担う団体の存続がゆらぐ。

担当する内閣府の職員は、認定の際、「これから不祥事が起きた時、きちんと対応できるかが大切」と協会に注文した。

今後もトラブルが起こることを前提にした口ぶりに、認定がいかに苦渋の判断だったかがうかがえる。

運営体制の面では、確かに認定の要件を満たした。

最高議決機関の評議員会は、全親方ら約100人が評議員となってきたが、今後は5~7人の外部の有識者が就く。個人間で売買してきた年寄名跡(親方株)は協会が一括管理する。

ただ、親方が協会を辞めると「外部の人」として評議員になれるし、評議員を終えれば親方に戻れるなど、抜け道もある。

これからが正念場だ。形だけ整えて中身はそのままか、本当の変革への一歩とするか。

同じ問いを、問題を抱える他の法人にも投げかけたい。

公益法人制度は約110年前にできた民法に基づく。所管官庁がそれぞれ公益性を判断し、許可する仕組みだったため、天下りなどの癒着(ゆちゃく)を生んだ。

08年に始まった新制度では、民間人からなる第三者機関が公益性を判断する。各法人は情報公開を徹底しつつ官庁から独立して「自治」で運営する。

旧制度で2万を超えた公益法人は、新制度でのふるい分けの結果、昨年末時点で8千余が新公益法人に、1万近くが優遇措置のない一般法人になった。

新公益法人にとって、その認定の過程は自らを見つめ直す好機だったはずだ。

ところが全日本柔道連盟や、日本アイスホッケー連盟、全日本テコンドー協会はいずれも問題を起こし、第三者機関から改善の勧告を受けた。

スポーツ系に、なぜ不祥事が目立つのか。厳しい上下関係や派閥など、古い閉鎖性を打破できていないからではないか。

各法人とも改革を急ぎ、高いモラルと真の公益性を備えた団体に生まれ変わってほしい。

毎日新聞 2014年02月03日

日本相撲協会 懸念一掃する運営を

日本相撲協会が内閣府から公益財団法人として認定され、再生へのスタートを切った。弟子の暴行死や野球賭博などの事件、暴力団関係者への便宜供与、八百長問題など不祥事が相次ぎ、根底が揺らいだ。「国技」としての信頼を取り戻すためにも自律的なガバナンス(組織統治)を確立してほしい。

1925(大正14)年に財団法人として設立されて以来、89年ぶりの組織改革となる。

新しい定款には、高額な金銭授受が問題視されていた年寄名跡(親方株)は協会が一括管理するとともに、名跡の襲名や襲名者の推薦に関しては金銭の授受を禁じ、違反者には厳重な処分を行うことを初めて明記した。不祥事対策の一環として通報窓口を新たに設け、親方には問題発生時の通報義務を課した。

税制面での優遇措置を受け、本場所興行の入場料収入などが非課税となるため、これまで以上に組織運営の透明性や説明責任が求められることは言うまでもない。北の湖理事長が「日本の伝統文化である国技の担い手であることの認識と自覚を持ち、公益法人としての責務を果たしたい」と決意を述べたのは当然だ。

名跡の所有者が後継者から指導料の名目で金銭を受け取ることは容認したが、金額に上限が設けられているわけではなく、チェックは難しい。定款違反の問題が発覚した場合、組織として適切かつ厳格な対応を取らなければならない。

親方らで構成される理事は事業や財産の管理を適切に行う義務があり、法人に損害が発生した場合には損害賠償などの責任を問われる。

残念ながら、スポーツ系公益法人のずさんな組織運営が目立つ。内閣府から昨年、勧告を受けた公益法人は全日本柔道連盟、日本アイスホッケー連盟、全日本テコンドー協会と、競技団体ばかり。幹部として組織運営を担う元選手らはマネジメント能力が不足し、先輩後輩の上下関係が残っているため、上に対して異議を唱えにくい構造になっていることなどが共通している。

その点は番付社会である角界も変わりはない。世間の常識とかけ離れていることへの自覚が足りなかったことも不祥事の一因だろう。

法律に基づいて作った仕組みを動かすのは人間であり、歴史的な改革の成否は第三者の意見をどれだけ意思決定に反映できるかにもよる。

今回、執行機関の理事会を監督する評議員会はメンバー7人のうち過半数の4人は外部から起用するが、残りの3人は力士出身者で、北の湖部屋の部屋付き親方も含まれる。

国民の懸念を一掃するような組織運営を求めたい。

読売新聞 2014年02月03日

相撲協会改革 公益法人に恥じぬ組織運営を

公益財団法人への移行を機に、自浄能力を持つ組織に生まれ変わることが求められる。

内閣府は、日本相撲協会を公益財団法人に認定した。協会は登記手続きを行い、新法人に移行した。

相撲界は、力士の暴行死事件や野球賭博、八百長問題など、相次ぐ不祥事に揺れた。相撲協会は所管の文部科学省などから組織改革を求められ、移行への手続きが大幅に遅れていた。

従来、公益法人だった相撲協会は、新制度に基づく公益財団法人に認定されたことで、今後も税の優遇措置を受けられる。本場所や巡業の収入は非課税扱いだ。

大相撲の伝統を継承していく責務を肝に銘じ、事業の透明性向上に努めねばならない。

不透明な実態の最たる例が、年寄名跡の扱いだ。現在、107の年寄名跡がある。これを保有しなければ、力士引退後、親方になることはできない。

年寄名跡は高額で売買されてきた。億単位の金銭のやり取りもあったとされる。親方として協会から収入を得る権利の売買は、一般的には理解し難い慣習だ。

公益財団法人への移行にあたり、相撲協会は年寄名跡を協会で一括管理することを定款に明記した。退任する年寄は、後継者を推薦できる一方で、継承に際し、金銭の授受は禁止される。違反者は厳重処分を受ける。

一歩前進であるが、懸念は残る。名跡の襲名者は、部屋運営のノウハウなどを学ぶため、協会に申告するのを条件に、前親方に指導料を支払うことができる。

指導料が隠れみのとなって、名跡売買が実質的に続くことになりはしないか。協会の厳格なチェック体制の整備が必要である。

協会と各部屋の関係を明確にした点は評価できる。力士の養成に関し、協会は、部屋の親方と委託契約を結ぶ仕組みになる。

不祥事の際、協会は「親方の教育が悪い」などと、各部屋の責任にして幕引きを図ることが多かった。今後は契約上の委託元として、協会の責任も問われよう。

最高意思決定機関である評議員会の形態も変わる。5~7人のメンバーの過半数が外部有識者となる。角界外の意見を尊重し、旧弊を改善することが肝要だ。

「国技」の運営母体として、協会が国民から支持されるには、土俵の充実が欠かせない。日本人横綱を待望する声は高まっている。協会と各部屋は、強い力士の養成に一層、力を注いでほしい。

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