日本相撲協会が、政府の新制度のもとでも「公益法人」と認められた。入場料を含む収入の多くが非課税になるなど、引き続き優遇される。
力士の暴行死事件や大麻事件、暴力団員の観戦、野球賭博(とばく)、八百長問題……。ここ数年不祥事が相次ぎ、体質が厳しく問われた中での認定である。
相撲界は、この新たな出発を機に、改めて「公益」を担う重みを自覚せねばならない。
残念ながら、いまだに抜本的な改革ができたとの評価は少ない。だが認定がなければ、国技を担う団体の存続がゆらぐ。
担当する内閣府の職員は、認定の際、「これから不祥事が起きた時、きちんと対応できるかが大切」と協会に注文した。
今後もトラブルが起こることを前提にした口ぶりに、認定がいかに苦渋の判断だったかがうかがえる。
運営体制の面では、確かに認定の要件を満たした。
最高議決機関の評議員会は、全親方ら約100人が評議員となってきたが、今後は5~7人の外部の有識者が就く。個人間で売買してきた年寄名跡(親方株)は協会が一括管理する。
ただ、親方が協会を辞めると「外部の人」として評議員になれるし、評議員を終えれば親方に戻れるなど、抜け道もある。
これからが正念場だ。形だけ整えて中身はそのままか、本当の変革への一歩とするか。
同じ問いを、問題を抱える他の法人にも投げかけたい。
公益法人制度は約110年前にできた民法に基づく。所管官庁がそれぞれ公益性を判断し、許可する仕組みだったため、天下りなどの癒着(ゆちゃく)を生んだ。
08年に始まった新制度では、民間人からなる第三者機関が公益性を判断する。各法人は情報公開を徹底しつつ官庁から独立して「自治」で運営する。
旧制度で2万を超えた公益法人は、新制度でのふるい分けの結果、昨年末時点で8千余が新公益法人に、1万近くが優遇措置のない一般法人になった。
新公益法人にとって、その認定の過程は自らを見つめ直す好機だったはずだ。
ところが全日本柔道連盟や、日本アイスホッケー連盟、全日本テコンドー協会はいずれも問題を起こし、第三者機関から改善の勧告を受けた。
スポーツ系に、なぜ不祥事が目立つのか。厳しい上下関係や派閥など、古い閉鎖性を打破できていないからではないか。
各法人とも改革を急ぎ、高いモラルと真の公益性を備えた団体に生まれ変わってほしい。
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