派遣労働見直し 待遇改善も念頭に進めよ

毎日新聞 2014年01月31日

派遣制度見直し 均衡処遇を保障せよ

労働者派遣制度の見直しを検討してきた厚生労働省の審議会が規制を緩和する内容の報告書をまとめた。企業はすべての業務で派遣を無期限に使えるようになるが、労働者にとっては派遣が固定する恐れもある。政府は今国会に改正法案を提出し、来春に施行する意向だ。雇用の流動性を高めることは大事だが、派遣社員の待遇改善がなければ不安が広がるだけだ。十分に審議してほしい。

現在は通訳など専門26業務は無期限だが、それ以外の仕事の派遣は3年間に限られている。見直し案では26業務の区分けを廃止し、どの仕事も派遣を3年間に限定する。ただ、派遣先企業は労働組合の意見を聞いた上で人を入れ替えれば無期限に派遣を使うことができるようになる。

労働者派遣法が1985年に制定された当初、派遣は専門業務に限って認められる「例外的な雇用」と規定された。小泉政権時代に一般の仕事にも解禁され、製造業などに派遣労働が広がって格差の拡大が社会問題となった。今回の見直しをめぐる議論では、派遣労働を「例外的な雇用」から恒常化することになるとして批判が根強かった。

このため、労働組合や従業員代表の意見を聞くことを企業に義務づけたほか、人材派遣会社は3年働いた派遣労働者に次の仕事を見つける義務を負うこと、悪質な業者を排除するため人材派遣会社はすべて国の許可制にすることが報告書に盛り込まれた。また、待遇面でも派遣先社員とバランスを考えた均衡処遇を推進するとした。

かつて65歳までの継続雇用を実現するために高年齢者雇用安定法改正が行われた際、多くの企業が労使の合意があれば再雇用する人の基準を自由に設定できる制度を導入した。その結果、労働者の選別が行われ、希望通り65歳まで働ける人が限定的だったことがある。自社の正社員の待遇維持にきゅうきゅうとしている労組に派遣労働者を守る余裕がどのくらいあるだろうか。

正社員の解雇規制が強い現状では、企業は人件費の安い非正規雇用を増やそうとするだろう。派遣労働者の正社員化を義務づければ、請負や業務委託など別形態の非正規が増えていく。そして、若年層が低賃金で不安定な非正規雇用から抜け出せない実態が変わらなければ、結婚や出産ができず少子化が進んで社会が地盤沈下していく。

やはり、正社員も含めた雇用労働者全体の改革の中で、派遣など非正規で働く若年層の待遇改善を進めなければならない。派遣の恒常化を認めるのであれば、少なくとも派遣先社員との均衡処遇を法的に担保することが必要ではないか。

読売新聞 2014年02月04日

派遣労働見直し 待遇改善に知恵を絞りたい

派遣労働者が安定して働ける制度改正につなげることが肝要だ。

企業が派遣労働者を受け入れる期間について、厚生労働省の審議会が、条件を満たせば無期限で認める報告書をまとめた。

現在、企業の派遣受け入れ期間は「最長3年」が原則だが、3年ごとに働く人を代えることで、すべての職種で継続的に派遣労働者を受け入れられるようにする。

安倍政権の成長戦略の一環として、企業が生産拡大や新規事業を展開する際、派遣労働者を使いやすくするのが目的だ。

厚労省は具体的な制度設計を進め、今国会に労働者派遣法改正案を提出し、2015年春の実施を目指している。

派遣労働の活用拡大自体は妥当である。ただ、制度設計で重要なのは、派遣労働者の待遇改善につながる方策を練ることだ。

労働者派遣法は、リーマン・ショック後に相次いだ「派遣切り」を防ぐため、民主党政権下の12年3月に改正され、30日以内の短期派遣を原則禁止するなど規制が強化された。派遣労働者の保護に重点を置いた施策だった。

だが、雇用の安定という政権の意図に反し、派遣労働者の待遇改善にはつながらなかった。派遣労働者は経験年数に応じた昇給がほとんどなく、企業にとって、安価な労働力という実態は今も変わっていない。

このまま派遣労働者の活用拡大だけが進めば、正社員の採用が抑制される可能性もある。

今回の報告書について、経団連の米倉弘昌会長が「分かりやすい制度になるのではないか」と歓迎しているのに対し、連合は「労働者保護の後退を招く恐れが大きい」と反発している。

報告書が、派遣労働者と正社員の待遇を均衡させるよう求めたのは、労働側の懸念を反映したものだろう。派遣労働者の待遇改善のため、派遣元と派遣先の企業による協議の恒常化を政府が後押しすることも必要ではないか。

派遣労働者が待遇改善に見合った技能を習得することも欠かせない。報告書が、派遣労働者への計画的な職業訓練の実施を派遣会社に義務付けるように求めたのは評価できる。

実績を積んだ派遣社員が、正社員として登用される道を広げることも大切である。政府は、正社員になる前提で労働者を派遣し、実際に正社員に採用された場合、派遣元に助成金を支給する方針を決めた。具体化を急ぎたい。

産経新聞 2014年01月31日

派遣労働見直し 待遇改善も念頭に進めよ

厚生労働省の審議会が労働者派遣制度の見直し案を決めた。最長3年としている企業の派遣受け入れ期間の上限を撤廃することなどが柱だ。

限定的だった派遣労働の職場を広げるという意味では一定の評価はできるが、派遣社員の待遇改善などでは解決すべき課題を残したといえる。

人材派遣会社も責任ある対応が求められている。見直し案が厳しい許可制を導入することも盛り込んだのは当然だ。今後は派遣先との交渉に当たっては、給与や勤務時間などにとどまらず、派遣社員の職歴評価につながる仕組みづくりなども検討されるべきだ。

乱立気味の派遣会社を厳しい許可制に一本化し、健全な財務基盤を維持するよう義務づけるとしたのは妥当だ。3年の期間を終えた派遣社員に新たな派遣先の紹介も求めている。派遣会社が果たすべき責任と役割は重い。

時代の変化に合わせて働き方を多様化することは、雇用機会を増やすことにもつながる。

現在の労働者派遣法では、通訳や秘書など「専門26業務」は働く期間の制限はないが、それ以外は3年を上限としている。派遣労働は、正規雇用を補完するものと位置づけられてきたからだ。派遣社員の側には職域を制限する要因だとして不満も強かった。

見直し案ではこうした業務区分を撤廃し、どんな仕事でも1人の派遣社員が同じ派遣先で働ける期間を最長3年に統一する。

今回の見直しで、派遣社員を受け入れる企業は、人を代えれば同じ仕事をずっと派遣社員に委ねることが可能になる。派遣社員にとっても働き方の選択肢の拡大につなげやすい。

ただ、派遣対象業務の拡大が、いたずらに正社員の仕事を奪うことがあってはならない。労働組合側の懸念にも配慮し、3年ごとに人を代える際は労使で協議する場を設けるとした。話し合いが難航した場合の基準を事前に決めておくことも検討すべきだろう。

リーマン・ショック後の「派遣切り」への批判の高まりから、企業に派遣敬遠の動きが広がったこともあって、派遣社員はピーク時より3割以上減った。

だが、子育てを終えた女性や退職高齢者など、働く側にも派遣労働を希望する人は多い。雇用機会を確保するためにも上手な派遣活用を進めたい。

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