鳩山政権の試練(1) 政治主導をつくり直せ

朝日新聞 2010年01月05日

鳩山政権の試練(1) 政治主導をつくり直せ

新年を迎えた鳩山政権に向けられる視線は、厳しさを増している。当初の期待感は色あせ、いつまで持つのかといぶかる声さえ聞かれる。

鳩山由紀夫首相はきのうの記者会見で、100年に一度の大改革を始める、正念場の1年だと言った。だが予算編成は乗り切ったものの、指導力に疑問符がつき、内閣支持率は低下している。夏には参院選を迎える。

首相は「政治主導を始動させることはできたが、一歩も二歩も先に進めたい」と語ったが、この認識は甘くないか。確かに予算づくりでは自民党政権時代のような官僚依存を排したものの、内閣の方針はなかなか決まらず、小沢一郎民主党幹事長の腕力でなんとかしのいだ格好だった。

政権交代から日が浅く、態勢づくりが追いつかなかった面はあったろう。年明けからはもう言い訳はきかない。民主党政権の大看板である政治主導を、名実ともに実現することが迫られているのだ。

政権交代に託された民意は変革である。これまでの政策を作ってきた当事者であり、前例踏襲に陥りがちな官僚依存を政治主導に切り替えるのは、民意に応えるためにも大切だ。また責任の明確化、透明化のためにも首相を中心とする政権中枢、つまり首相官邸による主導を実現する必要がある。

菅直人副総理兼国家戦略相が内閣としての政策調整を担い、平野博文官房長官が国会との連絡など黒衣役を担当するのが当初の設計だった。しかし、実際は平野氏が政策調整の前面に立ち、菅氏の影は薄かった。本格的に動き出したのは年末になってからだ。役割分担と連携が欠け、司令塔が不明確になっていた。

人間関係は難しいが、この態勢をまず立て直すことだ。政府は18日召集予定の通常国会に、国家戦略室を局に格上げし、権限を付与する法案を提出する。各省の政治家スタッフの増員と併せ、法律整備を急ぐ必要がある。首相の決断を支える「チーム鳩山」を機能させねばならない。

戦略局では、政権の目標と政策の優先順位を明確にすることに力を注ぐべきだ。「コンクリートから人へ」を掲げ、新年度予算案で公共事業を削り、社会保障や子育て支援への配分を増やしたのは高く評価する。ただ事業仕分けを通じた無駄の削減だけでは7千億円しかまかなえず、翌年度以降の財源のめどは立たないままだ。

戦略局での検討をもとに公約を吟味し、優先順位の高いものはその財源を明示し、不可能なものは修正して、実現可能性の高い「進化した政権公約」を掲げ、参院選に臨むべきだろう。

政権の正念場は政治主導の態勢をつくり、それを動かし、国民に新しい政治の姿を見せられるかどうかにある。

毎日新聞 2010年01月07日

新成長戦略 真の改革を進める時だ

鳩山政権が「新成長戦略」の目標を掲げた。今後10年間で国内総生産を約1・4倍に拡大させることなどを目指している。政治がリーダーシップを発揮し、具体策を6月ごろまでにまとめる計画だ。

日本経済を再び活性化させる必要性を認識したことは前進である。「100年に1度のチャンス」ととらえ、成長に向けて行動しようとする姿勢も買いたい。しかし、政府が前提としている考えには疑問がある。

まず、日本の成長力が落ちたのは、小泉政権下の「構造改革」が原因だとする分析だ。規制緩和や労働市場の自由化を進め、「市場原理主義」が行き過ぎたから、需要が低迷しワーキングプアが増えたと鳩山政権は説明するが、果たしてそうか。

過去の政権と一線を画したい気持ちは分かる。だが、実感の伴う成長に至らなかったのは、構造改革が中途半端に終わったからだとの指摘もある。変化の中で職を失ってしまう人たちへの支援網が伴わず、マイナス面だけ目立つ結果になった。

第二の問題は、需要サイドに偏った政策である。消費の喚起はもちろん大事だ。しかし、供給サイド、つまり企業の競争力を高め、日本経済の生産性を上昇させなければ、持続的な経済の拡大は難しい。肝心の雇用を増やせないし、税収の増加も期待できまい。

既存の企業がより成長し、新規のビジネスが生まれ、産業の新陳代謝が活発に起きるダイナミックな経済へと脱皮していく必要がある。ところが鳩山政権が取ろうとしている道は、政府が成長けん引産業を選び、重点的に支援するといった従来型の発想に立っているようだ。確かに医療・介護関連事業や農業などは、成長の余地が大きい。だが、必要なのは補助金のような支援ではなく、新規参入を阻む規制や慣行を大胆に取り除き制度改革を進めることだ。

そして何より肝心なのは、これまで本腰を入れることなく先送りしてきた難題への取り組みである。借金が膨らむ一方の国の財政を立て直し、年金など社会保障制度の抜本改革を早期に実行することに他ならない。国民の不安のもとを取り除くことこそが、本当の成長戦略の条件だ。

企業も政府頼みではいけない。業種や規模に関係なく、グローバルに打って出る企業がもっとあっていいはずなのに、そうなっていないのはなぜか、もう一度考えてみよう。政府の成長戦略が不在だからではないはずだ。優れた技術やきめ細かいサービスができる労働力を持ちながら、内向き、安全志向の経営が成長機会を摘み取っていないか。

政府も企業も、従来型の発想を打ち破る時だ。

読売新聞 2010年01月06日

鳩山政権 景気、基地、献金をどうする

鳩山内閣の政権運営を難しくしているのが「3K」とされる。

「景気」「基地」、そして「献金」である。

先の二つ、とりわけ米軍普天間飛行場移設問題の混迷は、鳩山政権の失政によるところが大きい。鳩山首相の偽装献金問題は、首相自身の政治姿勢そのものが問われている。

3Kを乗り越えられるか。それは、鳩山政権の命運がかかるだけでなく、日本の将来にも影響する重要な政治テーマである。

◆予算の成立を急げ◆

日本経済は今、厳しい雇用状況とデフレにあえいでいる。国内景気が一段と悪化して二番底をつけることへの懸念は根強い。

首相は年頭の記者会見で、「政権交代を実現したが、これからがスタート。正念場の1年と覚悟を決めている」と述べて、今年度補正予算案と来年度予算案の早期成立に意欲を示した。

予算の成立が遅れれば、景気の足をさらに引っ張ることになる。問題の多い予算ではあるが、早期に成立させる必要がある。

18日に召集される予定の通常国会では、与野党の激突が予想される。

自民党など野党各党は、首相の元秘書2人が在宅・略式起訴された政治資金規正法違反事件などで鳩山政権を厳しく追及する姿勢をみせているからだ。

首相は、実母からの巨額な資金提供について「まったく承知していなかった」と繰り返している。こんな説明では、国民の納得は到底得られまい。

資金の使途に関し、首相は年頭会見で「私がどこまで把握できるかということはあるが、それなりの説明は行いたい」と述べた。

◆献金問題で説明尽くせ◆

首相は責任を持って使途の全容を明らかにする必要がある。首相の説明が尽くされなければ、野党が要求する元秘書や鳩山家の資産管理団体代表らの国会招致も避けられまい。

小沢民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」をめぐる違法献金問題は、土地の購入代金との関連が焦点となっている。

東京地検は、小沢氏の元秘書で、陸山会の事務担当者だった石川知裕民主党衆院議員に対する事情聴取を行った。検察の捜査とは別に、国会の場でも解明を進めることが求められよう。

一方、普天間問題では、首相は「無駄に時間を浪費するつもりはない。期限を切って結論を出す」として、5月までに決着させる考えを強調している。

日米関係への悪影響を最小限に食い止めるためにも、これ以上の遅延は許されない。

自民党も、現行計画による移設を政府が決断するよう強く促し、協力すべきだ。政治とカネの問題が重要だとしても、審議拒否といった戦術で、予算の成立を遅らせることがあってはならない。

今夏は参院選が行われる。

民主党は、2007年選挙の獲得議席と同じ60議席を確保すると単独過半数に届く。これが実現すれば、民主党は衆参両院で単独過半数を確保することになる。

仮に単独過半数を獲得した場合であっても、民主党は社民党、国民新党との連立政権を継続するとしている。

しかし、普天間問題などで主張が異なる社民党との連立を維持することが、外交や安全保障の政策遂行に大きな障害となっていることは明らかである。

民主党はこの点を踏まえた政権戦略の再構築が欠かせない。

◆マニフェスト見直しを◆

参院選に向けた公約作りも重要となる。

民主党は昨年の総選挙で、国の予算を徹底的に効率化し、マニフェスト(政権公約)に掲げた重要施策に必要な来年度の財源7・1兆円を生み出すと公約した。

だが、予算編成作業では無駄減らしが思うように進まず、財源の工面で苦しんだ。ガソリン税などの暫定税率廃止の撤回など、公約の一部を修正してもなお財源を確保できず、新規国債発行は44兆円を超えた。

マニフェストに拘泥すれば、11年度予算では、子ども手当だけでも10年度を大幅に上回る5・5兆円の財源が必要になる。安易に国債に頼れば財政は持たない。

鳩山首相は記者会見で、公約を一部修正したことを踏まえ、参院選向けのマニフェストでは「何らかの修正が必要だ」と言う。

当然な対応だろう。安易な大衆迎合に陥らず、現実に即した公約作りを進めてもらいたい。

通常国会では、景気、普天間問題、政治とカネの問題以外にも、少子高齢化対策、気候変動問題など論点は多い。

参院選を控えて、建設的な論戦を展開することが、各政党に課せられた責務である。

朝日新聞 2010年01月05日

鳩山政権の試練(2) 成長へ大胆な肉付けを

パイの分配には熱心だが、増やすための成長戦略がない――。経済界や野党からそう批判されてきた鳩山政権は「新成長戦略」の基本方針を打ち出したが、それが答えになるかどうか。実現へ、大胆に肉付けする力量が問われようとしている。

「輝きのある日本へ」と副題をつけたこの戦略の目標は、10年後の2020年だ。それまでに環境エネルギーや医療介護、観光という高成長が期待できる3分野に集中的に投資して100兆円の需要をつくる。500万人近い新規雇用を生み出し失業率を3%台に下げる。デフレを完全に解消し、国内総生産(GDP)を平均で名目3%、実質2%成長させる。

最近の日本経済の停滞ぶりからすれば、いずれも高い数値目標である。

それでも日本は科学技術に優れ、長寿大国や省エネ先進国として世界から高い評価を受ける国だ。持てる力を生かし切れば、決して不可能な目標ではないだろう。

とはいえ、戦略の方向性や政策項目に新味はない。実は同様の成長戦略は歴代の自公政権でも作られていた。にもかかわらず未達成であることについて、菅直人副総理兼国家戦略相は「政治的なリーダーシップが不足していたから」と指摘する。

目標実現に必要な政策を、さまざまな政治的困難に打ち勝ってやり遂げられるか。省庁の縦割りや既得権益を排して指導力を発揮できるか。カギはそこにある、というのだ。それはそのまま、鳩山由紀夫首相と官邸に突きつけられた課題にほかならない。

残念なのは、その覚悟が、基本方針からは伝わってこないことだ。むしろ、政治的に調整が難しい問題を棚上げしているように見える。

たとえば、政権公約にも盛り込んでいる「日米自由貿易協定」。鳩山首相自身が国際舞台で訴えている「東アジア共同体」に向けたアジア域内の自由貿易圏づくり。それらの通商戦略を進めるカギになる農産物の輸入自由化。難題ではあるが、こうした重要課題への取り組みがない。

人口減少で国内市場が縮小する日本が成長を続けるには「アジア内需」を取り込むことが欠かせない。そのことは新成長戦略も指摘してはいるが、実現への手立てを描ききれず尻込みしているように見える。

政府は6月にも発表する新成長戦略の工程表で、デフレ脱却と成長実現の絵を大きなスケールで描いてほしい。

そこでは、民間の消費と投資を引き出すための政策はもちろん、それを支える財政と税制の中長期戦略を示す必要もある。

それらがなければ、この成長戦略も自公政権下にできたものと同様、絵に描いた餅に終わるしかあるまい。

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