春闘スタート 「好循環」を占う賃上げの行方

朝日新聞 2014年01月31日

論戦スタート 「責任野党」って何だ

「政策の実現をめざす『責任野党』とは、柔軟かつ真摯(しんし)に政策協議を行っていく」

安倍首相のこんな呼びかけにどう答えるか。きのう終わった衆参両院での代表質問では、野党の対応は割れた。

民主党や共産党などは対決姿勢を鮮明にした。これに対し、首相が視野に入れているみんなの党は政策協議に前のめり。日本維新の会は半歩身をひいていた。一方、みんなの党とたもとを分かった結いの党は、政界再編を訴えつつも、政権とは距離を置いた。

首相が野党との協議を呼びかけたのは、この春以降進めようとしている集団的自衛権の行使容認や憲法改正をにらみ、協力できる勢力を少しでも多く確保しておきたいからだ。これらの政策に慎重な公明党への牽制(けんせい)になるとの計算もあるようだ。

しかし、自民党が衆参両院で圧倒的勢力を占めるいま、そこに安易にすり寄っていくのが野党に求められる姿勢だろうか。

「政策実現のために協議する」という首相の言葉自体を否定するつもりはない。ただ、思い浮かぶのは昨年の特定秘密保護法案のずさんな修正協議だ。

与党は審議の終盤になって、政府案にはなかったチェック機関の新設を乱発したあげく、採決は強行。このため、参院では最終的には与党だけの賛成で成立した。

結局、あのドタバタは、よい法案にするための「真摯な協議」というよりは、与党が一部の野党を巻き込むための大義名分づくりという意味しかなかったのではないか。

政府提出法案の審議が中心の議院内閣制のもとでの野党の役割は、政策の選択肢を有権者に示すことだ。

そのうえで論戦を通じて問題点を浮かび上がらせ、対案を提出したり、政府案を修正させたりする。

衆参のねじれが消え、数を頼んだ抵抗手段が封じられたいまこそ、野党の政策立案の力が問われる。

いまの野党のほとんどは、政権を担当した経験がある。決して無理な注文ではあるまい。

代表質問で民主党の海江田代表は、首相の靖国神社参拝や公共事業の大盤振る舞いなどを取り上げ、政権運営を強く批判した。しかし、問題追及の域を抜け切れず、政策の選択肢を示すにはいたらなかった。

まずは反対ありきのかたくなな姿勢、そして無定見なすり寄りや離合集散は排し、政策で勝負する。そんな責任野党こそ求めたい。

読売新聞 2014年01月28日

春闘スタート 「好循環」を占う賃上げの行方

賃上げで安倍政権の経済政策「アベノミクス」が目指す経済の好循環に弾みをつけられるか。

今年の春闘はその試金石となる。

経団連と連合の労使トップらによる公開討論会が開かれ、今年の春闘が事実上スタートした。

円安などを背景に企業業績は回復している。利益を賃金アップにつなげ、消費回復で景気をさらに上向かせることが重要だ。

連合の古賀伸明会長は討論会で「すべての働く人の賃金底上げを図る」と述べ、約2%の定期昇給に加え、1%以上のベースアップを求める考えを強調した。

経団連は「業績好調な企業は、拡大した収益を賃金の引き上げに振り向けていく」とする春闘方針を示している。ベアの容認は6年ぶりのことである。

安倍首相は、政労使会議で賃上げを要請し、法人税の軽減措置や規制緩和など企業支援策を打ち出してきた。こうした取り組みが奏功し、賃上げの機運が高まってきたのは心強い。

むろん賃金は各労使の交渉で決まるものだが、デフレによって労働者の平均給与が15年で約13%も下がった事実は重い。

消費者物価は上昇に転じ、今年4月には消費税率が5%から8%に上がる。賃金が上がらぬまま家計の負担が増せば、消費は冷え、景気失速を招く恐れがある。

春闘では、好業績の大企業を中心に、ベア実施に前向きに取り組んでもらいたい。

人件費を恒常的に上昇させるベアに慎重な企業も少なくない。経営実態に応じて、主にボーナスや残業代で業績改善に報いることも現時点ではやむを得まい。

賃上げの動きを持続し、大企業から中小企業へ、正社員から非正規労働者へと波及させていくことが肝心である。

収益力の向上へ、余剰資金を成長への投資に積極活用する「攻めの経営」が求められる。高成長を期待できる事業への転換や、優秀な人材獲得のための処遇見直しなど、生産性向上の取り組みには労働側の協力も必要だ。

労働者の4割を占める非正規労働者の収入アップや雇用安定は、労使共通の課題と言える。

有能で意欲のあるパートタイマーを正社員に登用する門戸を広げるなど、雇用制度のあり方についても論議を深めてほしい。

女性や高齢者など多様な人材を貴重な戦力として活用していく方策も、春闘で労使が論じるべき重要テーマである。

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