賃上げで安倍政権の経済政策「アベノミクス」が目指す経済の好循環に弾みをつけられるか。
今年の春闘はその試金石となる。
経団連と連合の労使トップらによる公開討論会が開かれ、今年の春闘が事実上スタートした。
円安などを背景に企業業績は回復している。利益を賃金アップにつなげ、消費回復で景気をさらに上向かせることが重要だ。
連合の古賀伸明会長は討論会で「すべての働く人の賃金底上げを図る」と述べ、約2%の定期昇給に加え、1%以上のベースアップを求める考えを強調した。
経団連は「業績好調な企業は、拡大した収益を賃金の引き上げに振り向けていく」とする春闘方針を示している。ベアの容認は6年ぶりのことである。
安倍首相は、政労使会議で賃上げを要請し、法人税の軽減措置や規制緩和など企業支援策を打ち出してきた。こうした取り組みが奏功し、賃上げの機運が高まってきたのは心強い。
むろん賃金は各労使の交渉で決まるものだが、デフレによって労働者の平均給与が15年で約13%も下がった事実は重い。
消費者物価は上昇に転じ、今年4月には消費税率が5%から8%に上がる。賃金が上がらぬまま家計の負担が増せば、消費は冷え、景気失速を招く恐れがある。
春闘では、好業績の大企業を中心に、ベア実施に前向きに取り組んでもらいたい。
人件費を恒常的に上昇させるベアに慎重な企業も少なくない。経営実態に応じて、主にボーナスや残業代で業績改善に報いることも現時点ではやむを得まい。
賃上げの動きを持続し、大企業から中小企業へ、正社員から非正規労働者へと波及させていくことが肝心である。
収益力の向上へ、余剰資金を成長への投資に積極活用する「攻めの経営」が求められる。高成長を期待できる事業への転換や、優秀な人材獲得のための処遇見直しなど、生産性向上の取り組みには労働側の協力も必要だ。
労働者の4割を占める非正規労働者の収入アップや雇用安定は、労使共通の課題と言える。
有能で意欲のあるパートタイマーを正社員に登用する門戸を広げるなど、雇用制度のあり方についても論議を深めてほしい。
女性や高齢者など多様な人材を貴重な戦力として活用していく方策も、春闘で労使が論じるべき重要テーマである。
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