オバマ氏演説 そっけなかった「アジア重視」

毎日新聞 2014年01月30日

米一般教書 世界の安定へ「行動」を

オバマ米大統領が年頭恒例の演説(一般教書)で、今年を「行動の年」にすると宣言した。連邦議会の与野党対立で政治が動かない現状を踏まえ、今後は大統領の権限で重要政策を遂行するという。当たり前とも思えるが、米国の内政だけでなく世界に難問が山積する折、オバマ大統領の「行動」に期待したい。

リーマン・ショック直後に発足したオバマ政権は経済を優先し、ブッシュ前政権が戦争を始めたアフガニスタンやイラクからの米軍撤収を懸案としてきた。今回の演説も内政に大半の時間が割かれたが、外交・国防に関してオバマ大統領は「真に必要でない限り、危険な派兵はしない」と語り、米国は「世界の警察官」ではないとの主張を再確認した。

もう米国だけに頼る時代ではないという考え方も分からないではない。だが、米国の影響下にあった地域で米国の存在感が弱まれば域内が不安定化するのは目に見えている。米国が身を引くにしても、安定を維持する措置が必要になるはずだ。

その一例が中東・北アフリカだろう。シリアをはじめ少なからぬ国々で続く騒乱、流血、テロは、別に米国のせいではない。だが、1980年代から米国の歴代政権が着々と影響力を築いてきた中東にあって、オバマ政権には不介入の姿勢が目立つことが、域内のテロ組織や過激派を勢いづかせていないか。そう考えてみることは必要だろう。

東アジアも同様だ。中国は尖閣諸島をめぐって日本の領海侵犯を繰り返し、防空識別圏を一方的に設定した。米国は当該空域にB52爆撃機を飛ばしてけん制した。中国が日本に軍事的圧力を強めている現状に、大統領が演説で触れなかったのは、残念というより不思議である。こうした姿勢が東アジアの安定に資するのかどうか。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に触れたくだりも含めて日本への言及はなかった。

米国は11月に中間選挙を控えている。今回の演説は最低賃金引き上げや所得格差是正、女性の権利拡大などを強調し、中間層の取り込みに力点を置いた。今はオバマ与党の民主党が多数を占める上院で共和党が逆転し、下院も制すれば、6年目に入ったオバマ大統領のレームダック(死に体)化は急速に進むという危機感がある。

だからこそ今年は行動が必要なのだ。「チェンジ」を旗印に登場し、ノーベル平和賞も受けたオバマ大統領が、このまま8年の任期を終えるようでは残念だ。大統領はイラン核問題の外交解決を力説したが、北朝鮮の核兵器の方が深刻だ。年内に米軍主導部隊が撤退するアフガン情勢も気になる。大統領は、世界の安定のためにこそ行動してほしい。

読売新聞 2014年01月30日

オバマ氏演説 そっけなかった「アジア重視」

中間所得層への支援を優先課題に掲げ、雇用創出や所得格差是正の実現を約束した。11月の中間選挙に向け、低迷する支持率の回復を意識した演説と言えるだろう。

オバマ米大統領が、1年間の施政方針を示す一般教書演説を行って、今年を「行動の年」と位置づけた。固い決意がうかがえる。

オバマ氏は、下院を支配する共和党と激しく対立し、政府機能の一部停止という事態を招いた。内政、外交とも失点続きで、支持率が一時は、就任以来最低の水準にまで落ち込んだ。

中間選挙で、民主党が上下両院で少数党に転落すれば、政権のレームダック化は決定的だ。巻き返しへの戦略が問われている。

オバマ氏は演説で、金融危機後の経済再生の成果を強調した上で景気回復の恩恵を得ていない低所得者層に配慮し、最低賃金引き上げを提案した。環太平洋経済連携協定(TPP)に伴う雇用拡大や移民制度改革も表明した。

いずれも、民主党の支持基盤固めにつながる政策だ。

特に注目されるのは、議会で法案が可決されない場合、大統領令を発すると述べたことだ。最低賃金引き上げを共和党が拒んでも、連邦政府契約職員に限っては、大統領令で引き上げるという。

共和党との対立軸を鮮明にした形だが、共和党は早くも「議会軽視」と強く反発した。対立はかえって先鋭化する恐れがある。

選挙の年だけに、内政が重視され、外交・安全保障政策への言及は比較的少なかった。

アフガニスタンに駐留する米軍戦闘部隊が今年末に撤収し、テロとの戦いが「ようやく終わる」と強調した。撤収後もテロ対策には万全を期してもらいたい。

エネルギー問題では、「シェールガス革命」を念頭に、「エネルギー自給に近づいた」と述べた。これが、中東への米国の関心の減退につながっては困る。

アジア太平洋については「引き続き、重視し、同盟国を支え、より安全で繁栄した未来を形作っていく」と主張した。「アジア重視」政策の継続は言明したものの、そっけない表現にとどまった。

オバマ氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を2年続けて欠席した。「重視」をどう具体化していくのだろうか。

中国の台頭を受け、米国と、日本など同盟国との結束が今ほど必要なときはない。オバマ氏は今春のアジア歴訪で、指導力を一層発揮することが求められる。

産経新聞 2014年01月30日

一般教書演説 強い米国で世界に責任を

オバマ米大統領は一般教書演説の大半を内政課題に割き、「格差是正」への意欲を示した。

外交に費やされた部分は予想以上に少なく、「新たな大国関係の構築」を呼びかける中国についても「もはや世界一の投資先ではない。それは、米国だ」と言及した程度だった。米国が世界とどう向き合うかという明確な指針をもっと聞きたかった。

昨年1年間で、オバマ政権が外交で最もエネルギーを費やしたのは中東だ。引き続き積極的な関与を続ける考えを示した。

好むと好まざるとにかかわらず、米国には特定の地域に限定しない「世界の警察官」の役割が求められる。今後も「唯一の超大国」の責任を果たしてほしい。

オバマ氏はアジア太平洋地域について、「この地域の同盟国を支え、より安全で繁栄した未来を創造する」と語った。しかし、オバマ政権が中東外交に腐心する間に、中国は東シナ海での一方的な防空識別圏設定などに動いた。

この地域で米軍がプレゼンスを保つことは、中国などに対する抑止力を維持、強化するために不可欠だ。財政難に伴う国防費の削減が続くなかでも、安全保障の軸足をアジアに移す政策に期待したい。日米同盟の強化など日本が果たすべき責任も大きい。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)締結も、地域の繁栄に重要だ。早期の合意に向け、指導力を発揮してほしい。

イラン核問題の解決に向けた合意は数少ない外交成果だが、先行きは予断を許さない。シリア情勢で化学兵器廃棄を強調したが、内戦終結の展望は描けていない。

特にシリアへの軍事介入を土壇場で回避した際、オバマ氏が「米国は世界の警察官ではない」と宣言したことは、国際社会に波紋を広げた。核・ミサイルの脅威が消えない北朝鮮への言及がなかったのも物足りない。アジア諸国の懸念を招いていないか。

強い米国であるためにも、内政課題の着実な前進が鍵だ。

11月の中間選挙をにらみ、「今年を行動の年にする」という。所得格差の是正や中間層への支援を目指すのは、社会的弱者の側に立ったリベラル色の強い政策実現こそ、少数派を代表する自らの使命との意気込みからだろう。道半ばの医療保険改革、移民制度改革への手腕も問われる。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1687/