日印首脳会談 潜在的な可能性を引き出せ

読売新聞 2014年01月27日

日印首脳会談 潜在的な可能性を引き出せ

成長著しいインドと安全保障と経済で協力を進める意義は大きい。

安倍首相がインドを訪問し、シン首相と会談した。シン首相は地域の平和安定や経済開発の「キーパートナー」と日本を位置づけた。安倍首相も「日印関係は世界で最も可能性を秘めている」と応じた。

安倍首相のインド訪問は2007年以来、2回目だ。今回は、インドの共和国記念日という重要な行事に、日本の首相では初めて主賓として招かれた。両国の関係の深まりの表れだろう。

外交・安全保障では、安倍首相が「積極的平和主義」の立場で国際社会に貢献していく方針を説明した。シン首相は、「日本の努力を称賛した」という。

新たに、国家安全保障会議(日本版NSC)の谷内正太郎国家安全保障局長と、インドの国家安全保障顧問が定期的に協議することで合意した。

海上自衛隊とインド海軍の共同訓練を継続し、海自の救難飛行艇「US2」のインド輸出に向けた協議も進める。

安保協力の強化は、日本にとって原油などを運ぶシーレーン(海上交通路)確保に不可欠だ。

両国は、軍事面で台頭する中国への懸念を共有しており、中国へのけん制という意味もある。

会談で署名された共同声明には、安保協力に関し「航行の自由」と「上空飛行の自由」の重要性が明記されている。「海」と「空」で強権的に進出を図る中国を念頭に置いたものである。

一方、安倍首相はインドの地下鉄整備などのために、2000億円超の円借款供与を表明した。新幹線技術の輸出をにらみ、インド西部のムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道計画に関して共同調査を急ぐことでも一致した。

日本にとって、世界第2位の人口を抱えるインド市場は魅力的だ。だが、日印間の貿易や投資額は日中間に比べると少なく、拡大の余地があると言える。

首相のインド訪問には日本企業の経営者らも多数同行した。官民一体でインドとの経済的な結びつきを強めていくべきだ。

両首脳は、日本からインドへ原子力発電技術や関連機器を輸出できるようにする原子力協定の早期妥結を目指すことも確認した。

核拡散防止条約(NPT)に加盟していない核保有国のインドとの協定について、日本国内にはなお慎重論がある。そのことも念頭に置きながら、政府は交渉を加速させる必要がある。

産経新聞 2014年01月28日

日本とインド 米国を加えた協力加速を

インドを訪問した安倍晋三首相とシン首相との会談では、海洋安全保障面での協力に力点が置かれた。日印に米国を加えた3カ国による連携強化につながることを期待したい。

今回の訪問は、インドの共和国記念日の式典に合わせたものだ。シン首相とともに軍事パレードを観閲し、経済に加え安全保障でも両国が協力していく緊密さが印象付けられた。

毎年、各国首脳から1人が主賓に選ばれる式典に、日本の首相が招かれたのは初めてだ。安倍首相は「日印関係にとっても画期的だ」と語った。3カ国の海上共同訓練を重ねることなどを通じ、連携の成果を挙げてもらいたい。

海軍力を共通項とした3カ国の連携には、中国の海洋での台頭を牽制(けんせい)する効果も期待される。中国は最近、南シナ海に一方的に外国漁船の操業を制限する区域を設け、東シナ海上空では防空識別圏を設定して外国機を従わせようとしている。

日印首脳会談での共同声明で、「航行の自由」と「上空飛行の自由」の重要性を明記したのは極めて妥当である。

海上共同訓練は救難や海賊、テロ対策が主な目的だ。2009年4月に初めて3カ国で訓練を行った。米印、日印も個別に共同訓練を行っている。それぞれ、海洋安保の強固な枠組みの構築に発展し得るものだ。

米国はアジア太平洋地域で相対的に存在感が低下しつつあるとみられており、その負担を日印が分担できれば、中国の力による現状変更の阻止にも有効となろう。

原油輸入の80%以上を中東に頼る日本にとり、シーレーン防衛は死活的に重要だ。インド洋に面した要衝に位置し、自由と民主主義の価値観を共有するインドとの協力の深化は欠かせない。

安倍首相は第1次内閣当時、日米印にオーストラリアを加えた4カ国の戦略対話構想も提唱した。関係国の中には露骨な「中国外し」には慎重な考え方もあるが、日本の安全と繁栄を守るため、同盟国や友好国を引きつけておく方策を考えておく必要がある。

経済面では、約2000億円の円借款を表明し、新幹線技術の移転を念頭にインド西部の高速鉄道計画の共同調査で合意した。日印貿易の拡大を日本の成長にもつなげたい。

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