東京五輪組織委 オールジャパンで祭典準備を

朝日新聞 2014年01月27日

五輪組織委 次世代見すえ新風を

五輪は世界の多彩なアスリートたちが夢を胸に集う祭典だ。その運営の主役には、やはりスポーツ界の人材が似合う。

2020年東京五輪・パラリンピックの組織委員会が発足した。その印象は残念ながら、五輪の躍動感や多様性からは開きがあると感じざるを得ない。

会長に選ばれたのは、76歳の森喜朗元首相。実務を担う事務総長には、70歳の武藤敏郎・元財務次官が就いた。

組織委の運営費だけでも3千億円。大会時は職員3千人とボランティア8万人を束ねる大所帯だ。政官のOBらにも一役買ってもらいたいのはわかる。

だが、国政を動かした政治家らが五輪の顔というのでは、政官主導でものごとを仕切る古臭い日本社会の縮図のようだ。

国内をまとめる内向きの発想に閉じこもらず、スポーツを介して世界との接点を広げる開放的な人材登用が望ましい。

国際的な潮流は、アスリート主導の運営である。

12年ロンドン五輪の組織委会長は、陸上金メダリストのセバスチャン・コー氏だった。16年リオデジャネイロ五輪は、バレー五輪代表だったカルロス・ヌズマン氏が指揮を執る。

五輪はできるだけ政治から切り離し、主役はスポーツとする。五輪憲章を貫く基本理念を、組織運営の礎としたい。

今回、日本オリンピック委員会(JOC)をはじめスポーツ界は、人選の過程で、ほぼ蚊帳の外に置かれた。

ビジネス感覚と国際性を兼ね備え、知名度も高い人材がスポーツ界になかなか見当たらない現実も直視せねばなるまい。

五輪までの6年余りは、国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟など世界のスポーツ界と関係を深める好機だ。

まずは、世代間バランスを考えて、組織委の中核に大胆に若手を登用してはどうか。

IOC総会でのプレゼンテーションで活躍したフェンシングの太田雄貴選手や、パラリンピアンの佐藤真海選手ら、才能豊かな若い世代はいる。

また、今回の組織委の役員12人が全員男性というのは時流にあわない。森会長は「オールジャパン体制を作りたい」と語るのだから、その第一歩として女性を積極的に登用すべきだ。

安倍首相は昨秋のIOC総会で、100カ国・地域の1千万人が恩恵を受ける発展途上国へのスポーツ支援も打ち出した。

平和の祭典を機に、日本と世界との交流の窓を広げ、次世代の人材を育てる。それは組織委の大きな役割であろう。

読売新聞 2014年01月25日

東京五輪組織委 オールジャパンで祭典準備を

2020年東京五輪・パラリンピックの運営母体となる大会組織委員会が発足した。

今後、国際オリンピック委員会(IOC)と調整を図りながら、開催準備を進めていくことになる。

政府、東京都、日本オリンピック委員会(JOC)、経済界が一体となったオールジャパンの準備体制を築き、大会を成功に導かねばならない。

組織委の会長には、森元首相が就任した。森氏は、日本体育協会、日本ラグビー協会の会長を務めるなど、スポーツ界全般にも幅広い人脈を持つ。それをフルに生かし、組織委内の意思疎通を図ってもらいたい。

組織委は来年2月までに開催基本計画をまとめ、計画遂行の指揮を執る。PR活動も展開する。

6年後の大会終了までに必要な運営費3000億円を確保するため、多くの企業からスポンサー料や寄付金を募る必要がある。副会長に内定した豊田章男トヨタ自動車社長の手腕に期待がかかる。

実務を取り仕切る事務総長には、元財務次官の武藤敏郎氏が就いた。限られた財源の有効活用に留意することが肝要だ。

国費を投入する新国立競技場の建設費は当初、1300億円とされたが、デザイン通りに建設すると3000億円にまで膨らむことが分かった。巨大過ぎるとの批判も高まり、延べ床面積の縮小などで1700億円に圧縮した。

こうした甘い見積もりを繰り返せば、開催計画全体への不信感が広がるだろう。

大会組織委については、2月初めまでに発足させることが、IOCとの契約で決まっていた。

ぎりぎりのスタートとなったのは、猪瀬直樹・前都知事の不祥事が影響したためだ。都知事は組織委会長の人選を協議する役割を担っていたが、不在のまま会長が決まる想定外の事態となった。

組織委においても、都知事の責任は重い。2月9日投票の都知事選で選ばれる新知事は、森会長、下村五輪相、竹田恒和・JOC会長らとともに、「調整会議」のメンバーとして、大会運営に関わる重要事項の調整にあたる。

競技場建設のために都が保有している4000億円の基金の使途にも、責任を持つ必要がある。パラリンピックに備え、都心のバリアフリー化の推進も課題だ。

大会の円滑な運営のためには、開催都市のトップとして、安価な電力の安定的な確保に努めることも、重要な責務である。

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