国の経済の規模を表すGDP(国内総生産)で、中国が昨年、日本の2倍にまで成長したことがわかった。
長らく世界で2位だった日本を中国が抜いたのは、そのわずか3年前のことだ。中国の発展は驚くべきペースである。
日中の差が開いたのは、人民元高と円安が統計に響いた面もある。また、1人あたりでは、中国はまだ日本の5分の1程度で、発展途上国の水準だ。
とはいえ、この規模は日本を含む外国企業にとって、さらなる巨大市場を意味する。昨年の自動車販売台数は2198万台で、日本の4倍。携帯電話の契約数は11億件を超えた。
資金力を蓄えた中国企業は、石油、金属、海運など各分野で世界市場に台頭している。総じて隣国の成長は商機の拡大をもたらすものだ。日中関係の悪化に影響されながらも日本企業の対中投資は続いている。
しかし、中国経済は必ずしも今後を楽観できる状況にあるわけではない。問われなくてはならないのは、規模や速度よりも成長の質にある。
昨年の成長率は前年と同じ7・7%だった。国家統計局長は「全体的に安定していた」というが、下降するかにみえていた経済が持ち直したのは、昨年後半に鉄道建設などの景気対策を再び打ったためだ。
08年のリーマン・ショック後の野放図な景気対策が各地でむだな公共事業や不動産投資を招いたことは記憶に新しい。
そうした投資を原因とするものを含め、中央・地方政府の債務が520兆円にのぼることが昨年末に明らかになった。
政府が巨費を注ぐ開発一辺倒の経済運営は、資源を浪費し、環境に重い負荷をかけている。地球規模で資源・エネルギーや気候変動の問題を考えねばならない今の時代、このまま長続きできる政策とはいえない。
習近平(シーチンピン)政権は昨秋の共産党中央委員会総会で「改革を全面的に深化させる」とうたった。具体策は明示しておらず、本気度が試されるのはこれからだ。
建国以来の国富を消失したといわれる文化大革命の後、80年代から成長を続けられたのは、計画経済から市場経済へと近づく努力を積んだ成果だ。
私営企業を容認し、外国企業を招き入れ、世界貿易機関(WTO)に加盟し、金融制度も少しずつ自由化してきた。
だが、今なお効率に劣る大型国有企業が幅を利かせ、民間部門の成長を阻んでいる。そんな硬直化した構造を変えてこそ、真の発展がもたらされる。
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