都知事選きょう告示 国のあり方が問われる

朝日新聞 2014年01月24日

都知事選告示 成長より成熟の知恵を

五輪が決まり、東京は成長への期待にそこはかとなく華やいでいる。しかし、開催年の2020年は、祝祭の裏で東京が曲がり角を迎える年でもある。

都の予測によれば、東京はこの年を境に人口減に向かう。

しかも、都民の4人に1人が65歳以上、そのまた4人に1人が一人暮らしとなる。25年には15歳未満の人口が1割を切る。

前回五輪は「育つ東京」の象徴であり、原動力だった。交通網が広がり、地方から若い働き手が流入して街は膨らんだ。

50年たった今、人も街もくたびれてきた。直面するのは「老いる東京」「縮む東京」という難題だ。首都直下地震も30年以内に70%の確率で来るという。

暮らしの安心をいかに保障するか。きのう告示された都知事選の主な候補者もその訴えに力を入れている。

福祉を最重点とするのは宇都宮健児氏だ。「石原・猪瀬都政で削られてきた福祉予算を増やし、特別養護老人ホームや保育所の待機者を減らす」と説く。

一方、元厚生労働相の舛添要一氏は「ハコモノを造って高齢者を収容する発想ではなく、街の人が面倒をみてくれる地域包括ケア」を訴える。

細川護熙氏は「人口構造の変化に応じ、インフラは維持更新中心として新規建設を抑える」と訴え、経済成長至上主義からの転換を打ち出した。

田母神俊雄氏は自衛隊での経験から、災害時に自衛隊などが自ら即応できる救助体制づくりを説いている。

根本的には、東京全体の街づくりの未来図をどう描くかが問われていると言えるだろう。

いま1300万人余の人口は2060年には1千万人ほどに減るという。成長を前提にできない以上、何に優先的に資金を投じるか選ばざるをえない。

限られた資金と時間で、地震が来るまでに木造家屋の密集地域を火に強くし、道路や上下水道など古びたインフラを繕わねばならない。若い世代が減り、施設も足りないなか、大勢の高齢者が地域で暮らせる街をどうつくるかも迫られている。

大量消費の都市生活や防災対策の見直しには原発をはじめエネルギー政策の視点は欠かせない。五輪に必要な整備を防災に生かす工夫も考えるべきだ。

東京と地方の格差同様、都内も格差が広がる。人口減と高齢化は都心より郊外で早く進む。

いびつに太ったまま老いつつある街。いかにゆがみを正し、スリムにし、足腰を強めるか。

聞きたいのは、成長の夢よりも成熟への知恵である。

毎日新聞 2014年01月25日

都知事選と原発 実りある論戦聞きたい

東京都知事選の論戦が本格化してきた。主要な争点として浮上しているのが「脱原発」だ。

東京電力福島第1原発事故を経験した日本で、今後のエネルギー政策をどう転換していくべきなのか。高齢者対策、防災、東京五輪など都政の課題は多いが、人口1300万人余りを擁し、日本最大の電力消費地である首都・東京の住民にとっても「脱原発」は大きな課題である。

即時原発ゼロなのか、段階的に脱原発依存を進めるのか。それとも安全を確保しつつ、活用を図るのか。各候補者の主張は分かれ、訴えにも温度差がある。争点化を避けず、実りある論戦としてほしい。

実は、エネルギー・環境に関する都の施策は世界的にも高い評価を得ている。森記念財団が昨年発表した世界の都市総合力ランキングでも、東京は環境分野でトップだった。

都は2010年度から大規模なオフィスビルや工場に温室効果ガスの排出削減を義務付け、排出量取引制度を導入した。地球温暖化対策のためだ。省エネが促され、3・11後の節電にも役立った。20年までにエネルギー消費の2割を再生可能エネルギーで賄う目標も掲げる。官民連携ファンドを通じ、全国の太陽光発電事業などへの投融資も始めた。地域振興にもつながる施策だ。

こうした取り組みは、原発に頼らずとも都市は成長できるという期待を抱かせてくれる。公約と重なる候補者もいる。どう評価し、どう臨んでいくのか。各候補者は明確な見解を示してほしい。

脱原発か否かにかかわらず、地球温暖化対策を進め、省エネや再生エネを拡大することは首都・東京の使命だ。それが都市の魅力づくりにもつながる。

一方で、即時原発ゼロなら電気代値上がりなどの問題も生じる。ライフスタイルの早急な見直しも迫られる。経済的影響など負の側面についても論議を深めてもらいたい。

今回の都知事選では、立候補予定者による告示前の公開討論会や共同記者会見が開かれなかった。共同記者会見が流れたのは、脱原発を掲げる細川護熙氏の正式な出馬会見が遅れた事情からだ。細川氏を支援する小泉純一郎元首相は「原発を除けば誰が知事になってもたいして違いはない」と言う。その違いを都民が判断できるよう、今からでも候補者が一堂に会し、討論する機会があってほしい。

3・11後に、各地でエネルギーの地産地消や脱原発を目指す動きが活発化している。地域の生活環境や防災、雇用などとも関連する問題だ。

首都・東京の知事選は、そうした地方のエネルギー政策の行方にも大きな影響を与えるだろう。

読売新聞 2014年01月24日

都知事選告示 東京の課題を幅広く論じよ

東京都知事選が告示された。首都が直面する課題は多い。2月9日の投票日に向け、候補者は活発な論戦を展開してもらいたい。

自民、公明両党が支援する元厚生労働相の舛添要一氏、元首相の細川護熙氏、共産、社民両党が推薦する前日本弁護士連合会長の宇都宮健児氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏らが立候補した。

争点に浮上してきたのが、原子力発電所の問題だ。出馬を後押しした小泉元首相とともに、細川氏が「即原発ゼロ」を掲げたことで、耳目を集めている。宇都宮氏も「脱原発」を公約としている。

舛添氏は、「中長期的に原発に依存しない社会を構築していく」と訴えている。

電力の大消費地である東京で、エネルギー問題を論じることに一定の意義はあろう。

しかし、脱原発を言うなら、安価な電力を安定的に確保する具体策を示さなければ、非現実的で無責任だ。火力発電の急増による経済、家計、環境への悪影響をどう考えるのかも聞きたい。

都知事には、原発の存廃を決める権限はないのに、どう脱原発を進めるのか。

猪瀬直樹前知事が、5000万円の受領を巡って辞職したのを受けた知事選だけに、「政治とカネ」の問題は避けて通れまい。

東京佐川急便からの1億円借り入れ問題で、20年前に首相を辞任した細川氏は、「返済した」と強調している。だが、借り入れの目的などについて、より丁寧な説明が求められよう。

新しい都知事には、2020年東京五輪・パラリンピックの準備を遅滞なく進める責務もある。

細川氏は開催返上論を唱えていたが、「過大な施設計画を見直す」と考えを変えた。舛添氏は「史上最高の五輪」を目指すという。

少子高齢化対策も重要なテーマである。20年には東京の人口のほぼ4人に1人が高齢者になる。都内の合計特殊出生率は全国で最低水準にある。

舛添氏は、厚労相を務めた経験を生かして社会保障制度を充実させると訴える。医療・介護サービスの向上や育児支援に、限りある財源をどう使うか。各候補者にとっては知恵の出しどころだ。

首都直下地震に対する備えについては、具体的政策が問われている。木造住宅密集地の不燃化は喫緊の課題である。

都議会と信頼関係を築き、着実に政策を実行に移せる人物を有権者は見極めてほしい。

産経新聞 2014年01月23日

都知事選告示 魅力ある東京の将来語れ 争点は「原発」だけではない

東京都知事選がきょう告示される。猪瀬直樹前知事が金銭問題で辞職する事態を受けた選挙だ。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、主催都市の責任者としてどう準備を進めていくか。首都直下地震に備える防災都市づくりも問われる。

「脱原発」の是非も争点となっている。電力の大消費地として、都民の生活や経済に必要なエネルギーをいかに確保するかという観点の議論が極めて重要だ。

候補者らは、魅力ある首都の将来を実現するため、より具体的に政策を競い合ってほしい。

≪残念な討論会見送り≫

すでに元厚生労働相の舛添要一氏、元日弁連会長の宇都宮健児氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が正式に出馬を表明していたのに対し、「脱原発」で小泉純一郎元首相と連携する細川護煕元首相は22日にようやく出馬会見した。

14日に小泉氏との連携を確認して出馬の意思を示した後、出馬会見を繰り返し延期するなどの対応はフェアなものとはいえない。

政策のとりまとめなどに時間がかかったと説明したが、細川氏の対応のために、日本記者クラブが計画していた立候補予定者による討論会は見送られた。

今後も候補者を集めた討論会への出席には消極的なようだ。直接、政策をぶつけ合う機会に積極的に参加してほしい。

「ポスト猪瀬」の選挙だけに「政治とカネ」の透明性に関心が集まるのは当然だ。会見で細川氏は、首相辞任に追い込まれた自らの東京佐川急便からの1億円借り入れ問題について、「多くの人の失望を招いた。あらためておわびしたい」と謝罪した。

細川氏は「全額返済した」などと強調したが、多額の金を金融機関を通さず、なぜ現金でやりとりしたのかなど、当時から指摘された疑問には答えなかった。有権者の疑念を解消できただろうか。

原発問題について、細川氏が最優先課題と位置付けたのに対し、舛添氏は「自由な議論はいいが、その問題だけではない」と、原発依存からの脱却には時間を要することを強調した。

宇都宮氏は再稼働を認めない考えを示す一方、細川氏側からの一本化要請について「原発だけで一本化はあり得ない」と他の政策の重要性を指摘した。田母神氏は「原発は十分な安全性を確保しながら使っていける」と語った。

細川氏は当選すれば東京電力に働きかける考えを示したが、東電の株式の過半数は国が保有して都の持ち株比率は1%余に下がっている。影響力は限られる。

東電の電力供給地域は1都7県に及び、7割は神奈川、千葉、埼玉の首都圏や北関東3県が占めている。都の意向だけで脱原発を進められるわけでもない。

≪五輪成功へ現実公約を≫

東京五輪について細川氏は「もろ手を挙げて賛成する気にはならなかったが、決まったからには歓迎する気持ちに変わった。『東京・東北五輪』を目指したい」と開催計画見直しを示唆した。

細川氏は昨年、ジャーナリストの池上彰氏の著書「池上彰が読む小泉元首相の『原発ゼロ』宣言」の中で、「安倍(晋三首相)さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価は格段に違っていた」と五輪の返上を主張していた。

知事選出馬が取り沙汰されてからは、「被災地でマラソン競技を行う」等の腹案も伝えられたが、実現性はないに等しい。

宇都宮氏も「環境に配慮し、すべての国民や海外からも歓迎される五輪にしたい」として計画見直しの可能性に触れた。舛添、田母神両氏は「史上最高の五輪」「五輪の成功」を政策に挙げた。

五輪の開催計画は都がスポーツ界や国とともに、16年大会招致から積み上げられた国際公約といえる。東京開催は国際オリンピック委員会がこれを吟味して決めたものであり、知事一人の思惑で安易に変更できるものではない。

首都をも例外なく襲う少子高齢化も喫緊の課題である。東京都の人口は五輪が開かれる2020年の1336万人をピークに減少に転じると予測されている。

各氏とも社会保障や福祉政策の充実を口にするが、待機児童解消など子育て支援を含め、現実的な解決策を競ってもらいたい。

毎日新聞 2014年01月23日

都知事選きょう告示 国のあり方が問われる

東京都知事選が23日告示される。来月9日の投開票に向け、新人候補同士による選挙戦となる。

2020年五輪開催が決まった東京の顔選びだ。福島第1原発事故の教訓を踏まえた原発政策、首都の喫緊の問題である急激な高齢化、防災など国政でも全国的な対応が迫られる課題が争点となる。国のあり方を問う選挙と位置づけたい。

告示前日、元首相の細川護熙氏(76)が正式な出馬会見を行った。すでに元厚生労働相の舛添要一氏(65)、前日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏(67)、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(65)、発明家のドクター・中松氏(85)らが立候補を表明しており、激戦模様だ。

主な候補は無所属で出馬し、自民、公明は舛添氏を都の組織が推薦、民主、結い、生活は細川氏を実質支援する。共産、社民は宇都宮氏を推薦、田母神氏は日本維新の会の石原慎太郎共同代表が個人で応援する。自公と民主の相乗りは回避されたが、近年の都知事選と同様、政党は候補擁立を主導できなかった。

今回の選挙がとりわけ注目されるのは、小泉純一郎元首相が応援する細川氏の出馬などで、原発政策を徹底議論する場が設けられたことだ。

細川氏は原発の再稼働を認めない方針を打ち出した。東京が先頭に立って省エネと再生可能エネルギーの普及拡大に努め、原発ゼロの成長戦略をリードする。都が株主の東京電力に対し、経営の透明化や電力料金の適正化を求めていくという。

東日本大震災では多くの発電所が停止し、過疎地に原発などの大規模発電所を集中立地させ、都市部に電力を送るシステムのもろさを浮き彫りにした。エネルギー政策を国任せにしておくこと自体がおかしい。

しかし、即時原発ゼロなら、当面は化石燃料に頼らざるを得ない。電気代の値上げも予想される。廃炉に直面する原発立地自治体の振興に協力する必要もある。

細川氏は専門家会議を設け、具体策づくりを行うというが、脱原発を最大の争点に掲げるのであれば、都民が判断を下せるよう、選挙戦でも具体案の提示が必要だ。首相退陣の引き金となった東京佐川急便からの1億円借り入れ問題についても、納得いく説明を求めたい。

宇都宮氏も「原発のない社会」を掲げる。舛添氏も脱原発依存を主張しているが、電力関係労組を傘下に置く連合東京も支援に回った。安倍内閣が再稼働路線に傾斜する中、実現の道筋をきちんと説明すべきだ。

田母神氏は原発活用を認める。では、高レベル放射性廃棄物の処分問題をどう考えるのか。脱原発か否かにかかわらず、電力の最大消費地として恩恵を享受してきた東京も一定の責任を負う必要があるはずだ。

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