毎日新聞 2014年01月21日
ノロウイルス 予防対策を徹底したい
浜松市の小学校でノロウイルスの集団食中毒が起きた。給食の食パンが感染源だという。ノロウイルスは冬場の食中毒の主要な病原体で、感染者の便などを介して人から人へも感染する。例年12~1月が流行のピークで、今後とも警戒が必要だ。学校や職場、家庭それぞれで衛生管理と予防対策を徹底したい。
厚生労働省によると、ウイルスの潜伏期間は24~48時間。吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、微熱などの症状が出る。ワクチンや治療薬はない。通常は数日で回復するが、感染力が極めて強い。患者の便1グラムには億単位のウイルスが含まれ、数十から100個ほど口に入っただけで発症する場合がある。高齢者や子供は自分の嘔吐物を吸い込んで肺炎や窒息を起こすことがあり、油断は禁物だ。
食中毒予防の第一のポイントは食材をよく加熱することだ。ノロウイルスは生ガキの食中毒の原因として知られるが、ハマグリやシジミなど他の二枚貝にも潜んでいる恐れがある。厚労省は85~90度で90秒以上加熱して食べることを推奨している。
入念な手洗いも重要だ。感染者の便などが手につくと、その人が触った所にウイルスが広がる。
食品を扱う人はトイレ後や調理施設に入る前などこまめに手洗いし、ウイルスを洗い流そう。浜松では、パンを製造した工場の従業員の手からパンにウイルスが付着したとみられる。従業員は手袋をしていたが、手洗いが不的確でウイルスが手袋に付いた可能性がある。生ものでなければ安全だという考えは誤りだ。
健康管理にも注意し、体調が悪ければ責任者に伝え、食品を扱う仕事は控えるようにしたい。
感染しても症状が出ない患者もいる。浜松の従業員も自覚症状はなかったという。その場合も、手洗いの徹底は感染予防効果が期待できる。
食器や調理器具も十分な消毒が欠かせない。ノロウイルスはアルコールが効きにくいので、塩素消毒や熱湯消毒が必要になる。
患者が発生したときの2次感染予防にも気をつけたい。患者の嘔吐物を処理する際は、使い捨てマスクやガウン、手袋を着用し、飛び散らないようにペーパータオルなどで静かに拭き取ろう。拭き取った所は塩素系漂白剤などで消毒し、嘔吐物や手袋はビニール袋に密閉して捨てる。患者が使った食器や衣類、手が触れたドアノブなども塩素消毒する。
ノロウイルスによる2012年の食中毒発生件数は416件(患者数1万7632人)で、増加傾向にある。手洗いの励行や消毒など当たり前の心がけが感染リスクを低減させることを忘れずに、この冬を健康に過ごしたい。
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読売新聞 2014年01月23日
ノロウイルス 入念な手洗いで感染を防ごう
ノロウイルスが猛威を振るっている。全国各地で集団食中毒が後を絶たない。手洗いの励行で感染拡大を防ぎたい。
浜松市で今月、給食の食パンを食べた1000人以上の小学生らが嘔吐や下痢などの症状を訴え、学校閉鎖が相次いだ。
京都市の病院では、約100人の患者らが症状を訴え、うち4人が死亡した。一部の患者からノロウイルスが検出された。
発症すると、激しい嘔吐や下痢、腹痛に襲われる。大人の場合、数日で治るが、抵抗力が弱い乳幼児や高齢者は重症になりやすい。嘔吐物をのどに詰まらせて死亡する高齢者も少なくない。
厚生労働省の速報値によると、昨年12月の患者数は約1700人に上る。大流行した2006年ほどではないが、年が明けても患者は増えている。流行は2月まで続くという。警戒を怠れない。
家庭や学校、職場で、予防の意識を高めることが重要だ。
ノロウイルスは、患者の便や嘔吐物、加熱が不十分な二枚貝などに潜んでいる。感染力が強いことが、最大の特徴だ。わずかな数のウイルスが体内に入っただけで、感染してしまう恐れがある。
ノロウイルスが付着したドアノブを触った手から経口感染する。床に飛散した嘔吐物の消毒が不十分だと、乾燥したウイルスが舞い上がり、感染が広がる。
家族が発症したら、タオルを共用せず、ペーパータオルを使う。衣服は別々に洗濯する。こうしたことが感染防止に役立つ。
医療機関や介護施設などは、集団感染に細心の注意を払わねばならない。入院患者や入所者の体調の変化に留意する必要がある。
やっかいなのは、感染者が自覚症状のないまま感染を広げるケースがあることだ。浜松市の場合、給食の食パンを納入していた製パン会社の従業員4人からノロウイルスが検出されたが、いずれも体調不良は訴えていなかった。
この製パン会社では、従業員にマスクや手袋の着用を指示していたが、防ぎきれなかった。
食品会社は、従業員にトイレの後や調理前の手洗いを徹底させるのはもちろん、調理器具を十分に消毒することが大切だ。
ノロウイルスに対し、アルコール消毒は効果がない。衣服は85度以上の熱湯に1分以上浸す。調理器具には、塩素系の消毒剤を用いることがポイントだ。
ノロウイルスにはワクチンや治療薬がない。だからこそ、予防に万全を期すことが重要である。
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