JR北海道処分 問題の核心に迫らねば

朝日新聞 2014年01月22日

JR北海道 国の命令で変われるか

いわば、安全確保への最後通告である。

事故が続いたうえ、線路の点検データを改ざんするなど、利用者の信頼を裏切ってきたJR北海道に、国が安全に向けた監督命令を出す。87年に国鉄を分割・民営化し、JR各社が発足して初めてのことだ。

安全対策が進まないと、経営者らを罰することができる、強制力を伴う命令だ。経営の自主性を重んじる民営化の本旨からいえば、究極の一手といっていい。そこまでの事態に至った責任は極めて重大だ。

JR北は、改ざんにかかわった社員5人の解雇など、計75人への処分を発表した。ただ野島誠社長は辞職せず、改革に取り組むと強調した。

国は安全統括管理者の解任も決めているが、社長の続投を支持した。安全第一の観点からすると、判断が甘すぎないか。

昨年6月に就任した野島社長は改ざん発覚後、2回入院した。11年に当時の社長が自殺し、今月には元社長も自殺とみられる遺体で見つかった。経営陣の混迷ぶりに、利用者の不信感は募る一方だ。

16年春には北海道新幹線も一部開業する。道民の足である在来線はもちろんのこと、今のJR北では、とても高速列車の運行を任せられない。

安全確保と信頼回復にはまず、改革の道筋をはっきりさせることだ。

一連の不祥事で、社内の意思疎通の悪さが浮かんだ。複数労組の激しい対立の影響も指摘される。

組織を立て直すには、思い切った改革を進められる外部の人材を中心に、経営陣を入れ替えるのが早道だろう。事故を繰り返してからでは遅すぎる。

JR北の転落は、鉄道事業者にとって他山の石でもある。

今では信じがたいが、JR北はごく最近まで、技術力が高いと業界内で評価されていた。鉄道は、安定した設備があり、多くの専門部署が複層的に働くことで安全が保たれる。

だがJR北は、設備への適切な投資を怠り、専門職員も過度に削った。安全は損なわれ、現場の士気も低下した。

効率化を優先した国鉄改革の負の側面が如実に出たともいえる。公共交通の経営で、カネと人のバランスを保つ大切さをかみしめる必要がある。

国は11年度からの10カ年で、経営基盤の弱い北海道、九州、四国、貨物のJR4社の設備投資に2390億円の支援を進める。これを効果的に活用し、安全設備の強化を急ぐべきだ。

毎日新聞 2014年01月22日

JR北海道処分 問題の核心に迫らねば

補修が必要なレールの長期放置や検査データの改ざんなど、広範に及ぶ安全上の問題が発覚したJR北海道に対し、国土交通省が行政処分を通知した。同社も社内調査の結果を公表し、計75人の処分を行った。

調査によれば、44ある保線担当部署のうち実に33部署で検査データの改ざんが行われていたという。国交省は「鉄道事業者としてあってはならない異常な事態」と非難した。

重要なのは、「異常事態」がなぜJR北海道で常態化したかの背景が解明されたか、そして国やJR北海道の対応策が問題の核心に迫れるか、という点である。いずれも現段階では、はっきりしない。

国交省はJR北海道に安全統括管理者の解任を命じ、経営や安全上の監視を行う外部識者による第三者委員会の設置を求めた。一方、JR北海道は改ざんに関与した社員の懲戒解雇を含む社内処分を決めた。

だが、社長以下、経営陣は当面続投するという。国交省もそれを容認する。これでどうやって出直し的な改善に取り組めるというのだろう。

「鉄道会社の原点に立ち返る」「社長を筆頭に経営幹部が全現場でひざ詰め対話を行い、安全風土のための七つの文化を醸成する」−−。これは同社が石勝線の脱線火災事故を受けて2011年9月に作った「安全性向上のための行動計画」で約束したことだ。12年11月には「安全基本計画」を策定している。しかし、昨年9月の貨物列車脱線事故後もレールの検査データが改ざんされるなど、問題は後を絶たなかった。

同じ経営陣の下で追加の対策を講じたとしても、抜本的な再生につながるとは考えにくい。少なくとも経営トップが交代し、外部の専門家による徹底調査を行うのが先だろう。

同時に、同社固有の構造的な足かせに手を打つ必要がある。

広大な営業エリア、そして急速に進む過疎。そこへ豪雪、寒冷地ならではの経費がのしかかる。鉄道の営業距離はJR九州より1割長いが区域内の人口は九州の4割しかない。鉄道事業の赤字は慢性化しており、旧国鉄の分割・民営化時に国から“持参金”として受けた経営安定基金の運用益で食いつないできた。安全対策に必要な資金を十分確保できない状況は100%株主である国も以前から認識していたはずだ。

北海道の人口減少や高齢化は今後も続き、JR北海道の経営環境はより厳しくなると思われる。現状の運行体制と高い安全性を企業努力だけで両立させるのは無理だろう。株主である国は、安全面で注文するだけでなく、JR北海道の将来像も含め、公共交通サービスのあり方を真剣に考えるべき時に来ている。

読売新聞 2014年01月22日

JR北海道 安全重視への体質改善を急げ

保線データ改ざんなどの不祥事が続くJR北海道は、命令を重く受け止め、安全軽視の体質を一掃せねばならない。

国土交通省がJR北海道に対し、JR会社法に基づく監督命令と、鉄道事業法の事業改善命令を通知した。鉄道事業本部長を安全統括管理者から解任することも命じている。

鉄道会社に対する監督命令と解任命令は初めてだ。JR北海道は2011年の特急列車脱線炎上事故でも事業改善命令を受けた。再度の改善命令も、前例はない。

鉄道会社で最も重視すべきは安全の確保である。厳しい気象条件の下で運行するJR北海道には、なおのこと徹底が求められる。安全対策がずさんな組織を立て直すには、異例の命令を発する必要があったと言える。

改ざんについて、国交省は刑事告発を検討している。実態の徹底解明に避けて通れない。

JR北海道の野島誠社長は記者会見で、「危機的状況にある。安全な鉄道の再構築に向けて全力で取り組む」と述べた。一から出直す覚悟で改革に臨むべきだ。

一連の命令は、国交省による特別保安監査の結果に基づく。改ざんが確認された部署の多くの社員は、監査の過程で「前任者からの引き継ぎなどで改ざんが慣例化していた」と語った。上司の指示があったとの証言もある。

JR北海道の社内調査では、保線を担当する44部署のうち33部署で改ざんを行っていたことが分かった。計75人の役員、社員が、懲戒解雇を含む処分を受けた。不正の蔓延(まんえん)に驚くばかりだ。

昨年9月の貨物列車脱線事故では、虚偽のデータが、原因を調査する国の運輸安全委員会にも報告された。原因が正しく解明されなければ、再発防止策も講じられない。改ざんは利用者への許し難い背信行為である。

JR北海道の体質として、国交省は命令の理由の中で安全意識の欠如に加え、現場の実態に対する本社の関心の薄さを指摘した。

経営陣、管理部門から現場まで、全社的に安全管理体制を再構築することが肝要だ。社員教育の見直しも欠かせない。

監督権を持つ国交省も、JR北海道の改革に責任を持って取り組まねばならない。

JR北海道では労働組合が強い影響力を持ち、それが管理職と現場を隔てる一因になっているとの指摘もある。国交省は今回、労組の問題に触れていない。引き続き検証が必要だろう。

産経新聞 2014年01月24日

JR北海道 陣容一新して改革進めよ

染みついた安全軽視の企業体質を根本から正すには、なにより責任体制を明確にすべきだ。

レール検査データの改竄(かいざん)など杜撰(ずさん)な安全管理が問題になっているJR北海道に対し、国土交通省はJR会社法に基づく初の監督命令など3つの行政命令を通知した。

これに合わせ、同社も記者会見で社内調査の結果を明らかにしたが、その内容には改めて慄然とする。

現場の保線部署44のうち7割強の33部署で改竄が確認され、保線担当者の2割近くが「改竄の経験がある」と認めたという。社員の証言から、脱線を予見しながら放置した疑いも浮上している。会社ぐるみの無責任体質と安全意識の低さには驚くばかりだ。

JR北は、改竄に関与した社員5人の解雇を含む計75人の大量処分を発表した。経営陣も、野島誠社長の50%減給の3カ月延長をはじめ、19人全員が不正を防げなかった責任を取って、報酬減額の措置を決めている。

だが、これだけ深刻な事態を招きながら、経営陣がそのまま残ることに、納得しかねる人は少なくないだろう。これで再発防止につながるのか。

安全部門のトップ「安全統括管理者」を解任された常務も、経営陣には残った。調査結果の発表の場にも同席しており、責任の取り方について、世間との感覚の遊離を感じざるを得ない。

野島社長も、自らの辞任を否定し、社員教育の徹底など今後の取り組み課題を掲げたが、保線担当者へのコンプライアンス(法令順守)教育など、内容は抽象的で表面的なものにとどまった。

社員教育の徹底は、平成23年5月に石勝線で起きた特急脱線火災事故の際も打ち出されている。それが実行できないまま2年以上もたつ。改革を口先だけで終わらせてはならない。断行の決意と覚悟を内外に示す上でも、経営の陣容一新は避けて通れない。

国による経営介入は民営化の本旨から抑制的であるべきだが、JR北の立て直しには、新鮮な発想を持つ他業種からの人材起用も積極的に考えたい。国鉄の分割民営化では、JRの発足時に大物財界人が経営トップに就き、民間手法の浸透に貢献した。

一連の行政処分が出たこの機に、再スタートにふさわしい体制の構築が求められている。

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