安重根記念館 中韓連携に強く反論せよ

読売新聞 2014年01月21日

安重根記念館 韓国の反日工作は執拗すぎる

安重根記念館歴史問題で、日本に対する圧力を加えようとする中国と韓国の連携が一段と強まった。憂慮すべき事態である。

中国黒竜江省ハルビン駅に、「安重根義士記念館」が開館した。安重根は、朝鮮独立運動家で、初代韓国統監の伊藤博文を暗殺した人物だ。韓国では、日本支配に抵抗した英雄とされる。

朴槿恵・韓国大統領が昨年6月、習近平・中国国家主席に、暗殺現場のハルビン駅に記念碑の設置を求めた。それに、中国側が記念館の設立で応えたものだ。

朴氏には、日本の歴史問題で、中国と共闘する狙いがあったのだろう。韓国外交省は、開館を歓迎し、安重根が「韓中両国民から尊敬されている」と強調した。

しかし、日本の立場や国民感情を無視して作られた記念館は、到底受け入れがたい。

日本政府はこれまで再三、両国に懸念を伝えていた。開館に際して、韓国と中国に対し、外交ルートで抗議したのは当然だ。

菅官房長官は、安重根について、「我が国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ」とし、この件での中韓連携は「地域の平和と協力の関係の構築に資するものではない」と述べた。

朴氏の意向を受け入れ、記念館を設立した中国も問題である。

多民族国家の中国にとって、安重根を称揚することは、少数民族である朝鮮族の国境を超えた民族意識を刺激しかねない危険をはらんでいる。

それでも、中国が記念館開設に踏み切ったのは、反日をテコに、韓国を外交的に取り込もうという打算が働いたのだろう。日米韓の外交・安全保障上の連帯にくさびを打ち込む狙いがうかがえる。

一方、安重根記念館以外でも、韓国は、歴史認識に関する一方的な主張を強めている。国際機関や第三国で、日本の立場を損ねていることは看過できない。

韓国政府は、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)による世界記憶遺産に、いわゆる元従軍慰安婦らの証言記録を登録するための準備を始めた。

フランスで行われる国際漫画祭では、慰安婦問題をテーマとする作品を展示すると決めた。

米国では、韓国系団体が、教科書に「日本海」に加えて、韓国での呼称「東海」を併記するように求める運動を展開している。

日本政府は、韓国の執拗(しつよう)な外交工作に対抗して、正確な事実関係を丁寧にかつ粘り強く、世界に対して主張していくしかない。

産経新聞 2014年01月21日

安重根記念館 中韓連携に強く反論せよ

明治末期、初代韓国統監だった伊藤博文元首相を暗殺した安重根の記念館が、中国北東部のハルビン駅に開設された。

日本にとってはあくまでも「死刑判決を受けたテロリスト」(菅義偉官房長官)である。外務省の伊原純一アジア大洋州局長が中韓両国の駐日大使に「犯罪者をたたえることは受け入れられない」と抗議したのは当然だ。

中韓は連携して歴史問題で日本を包囲しようとしている。政府は国家の名誉と尊厳をかけ、誤った日本の印象付けが広まらないよう、積極的な対外発信などに努めるべきだ。

朴槿恵韓国大統領は昨年6月の訪中時に、安重根の石碑建立を習近平国家主席に提案した。安重根は韓国国内で英雄視されているが、第三国にも話を持ちかけて記念施設や像を建てるのは度を越えており、容認できない。

しかも、当初の石碑の話から記念館へと格上げされた。中国は韓国の申し出には慎重に対応するだろうといった、日本政府の甘い見通しはなかったか。

安重根が中国にとって「英雄」なのかは疑問だ。あえて韓国の提案に乗り、記念館を日本に対する嫌がらせのカードに用いたと考えざるを得ない。そこまでして反日行動をとる中国の姿勢にこそ、警戒を強めなければなるまい。

中国共産党は自国の主張を相手国や国際社会に浸透させるために世論戦、心理戦、法律戦の三戦を使うという。日本は対日批判の世論戦を仕掛けられている。

佐々江賢一郎駐米大使が最近、安倍晋三首相の靖国神社参拝などに対する中国の批判に反論する形で米紙に寄稿した。「中国は教条的な反日プロパガンダをやめるべきだ。中国と異なり日本は戦後、戦闘で一発も弾を撃っていない」などと語ったのは適切だった。

だが、政府の対応は十分ではない。「中韓の不当な主張には取り合わない」といった消極的態度もみられる。これでは相手の言い分を認めたことになりかねない。執拗(しつよう)な対日批判の異様さを関係国に粘り強く説明する必要がある。

朴大統領は外遊のたびに歴史問題で日本を批判している。北朝鮮の脅威に連携して対処するなど、韓国の外交・安全保障上の国益は日米との緊密な協力にあるはずだ。その基本を離れ、対中連携に偏る外交は見直してほしい。

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