秘密諮問会議 欠陥法の追認はするな

朝日新聞 2014年01月16日

秘密諮問会議 欠陥法の追認はするな

昨年12月、多くの反対を押し切って安倍政権が成立させた特定秘密保護法。年内施行に向けた政府の準備が動き出した。

秘密の指定や解除、秘密を扱う公務員らの適性評価の統一基準について議論する「情報保全諮問会議」が、17日に初会合を開く。政府は、秋までに統一基準を決める予定だ。

私たちは社説で、この法案は廃案にすべきだと主張してきた。以下の理由からだ。

本来は国民のものである情報を、首相ら「行政機関の長」の裁量によっていくらでも特定秘密に指定することができる。秘密の内容を検証する独立した機関はなく、何が秘密に指定されているのかさえわからない。指定期間は最長60年で、それを超える例外も認める。

国の安全を守るため、当面公表できない情報はある。だが、それは不断の検証と将来の公表が前提だ。このまま施行されると、膨大な情報を行政府が思うままに差配できる。それでは国民の判断を誤らせ、やがて民主主義をむしばんでゆくだろう。

こうした危惧は変わっていない。これは欠陥法である。

強い批判を受け、安倍政権が言い出したのが、情報保全諮問会議や保全監視委員会など新たな機関を設けることだ。

諮問会議は7人の有識者からなる。検討するのは基準であって、個別の秘密指定の是非ではない。その点で限界はあるが、官僚らによる保全監視委と違い、政府に直接意見を言えるただひとつの外部機関だ。

議論によって法の欠陥を根本的に改めることは難しい。それでも、秘密が限りなく広がることに一定のブレーキをかけることは重要だ。メンバーにはその役目を自覚してもらいたい。

諮問会議の座長には、読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆の渡辺恒雄氏が就いた。国会で参考人として賛成意見を述べた永野秀雄・法大教授が実務を取り仕切る主査を務める。一方、法案に反対してきた日弁連からも、清水勉弁護士が起用された。

読売新聞は社説で問題点も指摘しつつ、法成立を歓迎したが、渡辺氏は座長就任にあたっては「『言論の自由』や『報道・取材の自由』が、この法律でいささかも抑制されることがないよう法の執行を監視するのが義務だと考えています」との談話を出した。

であれば、そのことば通り、議論をオープンにし、政府の行き過ぎに歯止めをかけるべきだ。政府の方針を追認するだけに終わっては意味がない。

毎日新聞 2014年01月18日

秘密法の諮問会議 早くも問われる透明性

年内の施行が予定される特定秘密保護法で、特定秘密の指定・解除や、公務員に対する適性評価の統一基準について首相に意見を述べる有識者による「情報保全諮問会議」の初会合が17日、開かれた。

昨年12月、不十分な審議のまま、強行採決によって法律は成立した。法が施行されれば、「行政機関の長」の判断で、特定秘密が指定できる。適切な指定かチェックする仕組みは整っておらず、将来的な原則公開も十分に担保されていない。国民の「知る権利」が阻害される恐れが強い。法律には反対であり、廃止か全面的な見直しを改めて求めたい。

安倍晋三首相は法成立後、説明の不十分さを認めた。国民の不安は払拭(ふっしょく)されていない。政府は施行ありきで物事を進めるべきではない。

民主党など野党は、通常国会に法律の廃止法案を提出する方針だ。与党は正々堂々と審議に応じるべきだ。情報公開や公文書管理など置き去りになっている課題もある。廃止法案のたなざらしや、議論せず数の力で否決することは許されない。

諮問会議の座長には、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長兼主筆が就いた。初会合で渡辺氏は「不必要に拡大解釈して言論、報道の自由を抑制することがあってはならない」と語った。諮問会議は、政府の外部から意見を言う権限をもつ唯一の機関だ。個々の特定秘密の中身に踏み込めないが、役割は小さくない。

テロの定義のあいまいさに象徴されるように、この法律は、条文の解釈によって、国民の人権と衝突する危険がある。報道のみならず、広く国民の権利擁護の立場から、にらみを利かすべきだ。

そういった観点からもオープンな議論が不可欠だが、議事録は非公開と決めた。機微な内容が含まれるとの理由だ。議事要旨は公開するというが、その判断は疑問だ。機密性が高かったり、プライバシーにかかわったりする部分は伏せて公開すればいい。議論の透明性が欠ければ、国民の懸念は払拭できない。

政府は法成立直前、保全監視委員会▽情報保全監察室▽独立公文書管理監という政府内のチェック機関設置を唐突に打ち出した。だが、その機能や役割分担の議論はこれからだ。また、新設が検討される国会の監視機関について、欧米の事例を調べる超党派の議員団が現在、視察中だ。

森雅子・特定秘密保護法担当相は17日、日本記者クラブで会見し「(視察を踏まえ)諸外国の制度も参考にしたい」と述べた。だが、本来、法案作成時にすべきことで、順番が逆だ。オープンな議論を踏まえた国民への説明責任が果たせなければ、施行の延期も検討すべきだ。

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