東電新事業計画 今度こそ再建を軌道に乗せよ

朝日新聞 2014年01月17日

東電事業計画 原発再稼働は許されぬ

改めて、言う。

東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)は再稼働すべきでない。

政府が、東電の新たな事業計画を認定した。柏崎刈羽7基のうち4基を14年度中に再稼働させることが前提である。

東電はすでに原子力規制委員会に2基の審査を申請済みで、この2基が7~8月に再稼働できなければ秋までに最大10%の電気料金値上げが必要、との見通しも示した。

再稼働への前のめりぶりと、電気代を人質にとるかのような姿勢に、あきれるほかない。

福島第一原発事故の当事者として、東電が今やるべきは、事故の収束と汚染水対策を急ぎ、廃炉の道筋をつけること。そして、被害者への賠償や被災地の除染に万全を期すことのはずである。

東電の大株主でもある政府の振る舞いはさらに問題だ。原発を推進し、事故を招いた反省を踏まえて、原発依存度を減らす手立てを講じるのが、政府の責任である。

それなのに、将来への見取り図も示さず、よりによって東電の原発再稼働に頼るとは。

そもそも柏崎刈羽は福島第一と同じ沸騰水型であり、規制委の審査には時間がかかる。新潟県の泉田裕彦知事も、東電を強く批判している。今夏の再稼働は非現実的なのに、「再稼働できなければ電気料金値上げ」と打ち出すのでは、まるで脅しではないか。

再建計画には、他にもさまざまな対策が盛り込まれた。

「全ては東電の責任。対策も東電任せ」という政府の姿勢を改める。東電の汚染水・廃炉対策部門を社内で独立させ、税金の投入と合わせて国の関与を強める。除染でも、廃棄物の中間貯蔵施設を国が建設するなど、東電の負担に上限を設ける。

経営改革を急ぐ。将来の電力システム改革をにらみ、発送電分離につながる持ち株会社化・分社化を進める。火力発電所の建設や燃料の調達で他社との連携を深め、人員削減も織り込んで経費を減らす。

これらは、わかる。税金の投入は避けられないし、東電の改革を他の電力会社に生かしていく視点も大切だ。

しかし、原発事故で東電は事実上破綻(はたん)したことを忘れてもらっては困る。政府が専門の機構を設けて東電を支え、新たに税金の直接投入に踏み切るのは、あくまで賠償や除染、廃炉を進めるためであるべきだ。

柏崎刈羽原発の再稼働に依存する事業計画は、手段も目的も取り違えている。

毎日新聞 2014年01月19日

柏崎刈羽稼働計画 問題の根は政府にある

政府が承認した東京電力の総合特別事業計画(再建計画)は問題が大きい。なによりも、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を前提としていることは、到底納得がいかない。

東電は福島第1原発の過酷事故の当事者であり、何十年もかかる事故処理のスタート地点で、汚染水対策につまずいている。事故の本当の原因究明も終わっていない。除染も賠償も自ら担えず、破綻状態を事実上の国有化でしのいでいる。

そんな会社が、再び普通の会社に戻る再建に向け、早期の原発再稼働が不可欠だという。出口のない迷路を堂々巡りしているかのようだ。

計画には、再稼働できない場合に最大10%の電気料金値上げが必要との見方が盛り込まれた。柏崎刈羽原発が規制基準に適合しているか分からないのに、企業経営や家計への負担をちらつかせ、再稼働の正当性を強調していると受け取られても仕方ない。新潟県の泉田裕彦知事が「モラルハザード(倫理欠如)の計画だ。事故が起きても責任をとらなくていいというのはおかしい」と批判したのは当然だろう。

ただ、問題は東電だけにあるわけではない。政府のエネルギー政策が、福島第1原発の過酷事故の教訓もそこそこに、東日本大震災前の原発推進姿勢に逆戻りしていることが根っこにある。

経済産業省の審議会が昨年末にまとめた「エネルギー基本計画案」は、「原発依存度を可能な限り低減させる」といいつつ、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけている。これでは、東電だけでなく、他のエネルギー関連産業も、一般の人々も、本気で原発を減らす方向にかじを切れない。

東電も政府も、原発が再稼働できないことを前提に、国全体のエネルギー政策の中で東電の将来像を描くのが筋ではないか。その上で、電気料金値上げを第一の解決策とするのではなく、いかに燃料費を削減するか、どのように電力消費量を抑えるかに知恵を絞るべきだ。

こうした大方針が示されれば、原発による電気を享受してきた側が、短期的には電気料金値上げを受け入れざるをえない場面もあるだろう。そのうえで発電コストや二酸化炭素排出を抑えるために、高効率の火力発電をどう増やしていくか、といった戦略を描き、短期的な負担を中長期で解消する道を探ればいい。

現在のエネルギー基本計画案のままではこうした戦略も立てられず、「原発か電気料金値上げか」という二者択一しか残らない。東電再建計画の問題は、国の政策の問題を如実に表したものであり、政府は根本的にエネルギー政策を見直すべきだ。

読売新聞 2014年01月16日

東電新事業計画 今度こそ再建を軌道に乗せよ

東京電力福島第一原子力発電所の事故収束と復興加速のため、東電再建策を「絵に描いた餅」にしてはならない。

政府が、東電の経営再建を目指す新たな「総合特別事業計画」を認定した。

2012年5月の当初計画で想定した東電柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働のメドが立たず、収支計画の抜本的な見直しや合理化策の上積みを迫られた。

新計画は、柏崎刈羽原発7基のうち4基を14年度中に再稼働することを前提とした。原発1基の稼働で火力発電の燃料費が1000億円以上減り、1000億円規模の黒字を確保できる見込みだ。

政府が昨年末に、除染関連の費用を一部負担する追加支援策を決めたことも好材料である。

経営が軌道に乗れば、国は保有する東電株を30年代前半までにすべて売却し、売却益を除染費用に充てる方針だ。

ところが、新事業計画は出足からつまずく懸念が拭えない。

新潟県の泉田裕彦知事が柏崎刈羽原発の再稼働について「福島の事故検証が先」などと、否定的な姿勢を崩していないからだ。

原子力規制委員会はあくまで国の規制基準に基づいて、審査を遅滞なく進めなくてはならない。

事業計画の実現には、安全性を確認できた原発の着実な再稼働が不可欠である。

柏崎刈羽原発は首都圏の電力供給を担う重要電源だ。東京都をはじめ電力消費地の首長は、地域経済と住民生活の安定を図るため、原発再稼働への理解を泉田知事らに求める立場であることを、自覚する必要がある。

都知事選の候補予定者が、現実的な代替電源も示さずに脱原発を唱えるなら、あまりに無責任だ。

東電は今後10年の経費節減の目標を、当初計画の3・4兆円から4・8兆円に増額した。希望退職を2000人規模で募り、震災時に50歳以上だった500人の管理職は役職を外して福島専任とし、賠償業務などにあたらせる。

収益力の向上へ、東電のリストラは大切だ。しかし、社員の士気が下がれば肝心の廃炉や賠償などの業務に支障が出かねない。

新計画は16年度に東電が持ち株会社制に移行する方針も示した。事業ごとに別会社にして、責任を明確化する狙いはわかる。

ただ、電力安定供給の回復や汚染水対策など重要課題を抱える時期の分社化は疑問だ。当面は、適材適所の人事配置をしやすい現体制を維持すべきである。

産経新聞 2014年01月17日

東電計画と原発 国も運転再開に責任負え

着実に実行できなければ、計画を立てた意味はない。

政府が、東京電力の再建に向けた新しい総合特別事業計画を認定した。一層の合理化や収益改善策などを盛り込んだ内容だ。福島第1原発事故の賠償や除染を円滑に進め、電力を安定的に供給するには、東電の経営基盤強化は欠かせない。

4月に会長に就く数土文夫JFEホールディングス相談役は「3年間が勝負。信頼を確立しなければならない」と述べた。遅れることなく成果を挙げられるよう経営改革を徹底してもらいたい。

同時に指摘したいのは、計画を認定した以上、国も大きな責任を負うことである。計画が前提とする柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けて、国は東電と一体で地元自治体の理解を促す取り組みを加速させなければならない。

計画は、平成26年度中に柏崎刈羽原発の4基を順次再稼働させることを想定したものだ。再稼働が遅れると、電気料金を最大10%再値上げする可能性も示した。

料金引き上げは、消費税増税が控える家計はもちろん、企業にも打撃だ。企業が国内から海外に拠点を移す産業空洞化が進めば、経済停滞につながる。それを避けるためにも、安全性が確認された原発については、早期に再稼働させねばなるまい。

東電は、柏崎刈羽原発の6、7号機の安全審査を原子力規制委員会に申請した。規制委には、迅速な審査を重ねて求めたい。

再稼働実現のためには、新潟県の泉田裕彦知事の理解も得なければならない。泉田知事は、原発事故の検証抜きで再稼働の議論はできないと繰り返している。東電の広瀬直己社長との16日の会談では計画を批判し、再稼働に慎重な姿勢を変えなかった。

今回の計画を頓挫させないためにも、政府は東電とともに、地道に原発の安全性を訴え続けなければならないことは、当然だ。

国が今後のエネルギー政策の中で原発をどう位置づけるのかも問われよう。政府が閣議決定を目指すエネルギー基本計画をめぐっては、原発の活用を強く打ち出した計画案を修正しようとする動きが与党内で出ている。

だが、再稼働の必要性を立地自治体に訴えるには、原発が重要なベース電源であることを明確にすることが不可欠だ。

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