経団連ベア容認 継続させ好循環の実現を

毎日新聞 2014年01月16日

14年春闘 賃上げの裾野を広げよ

春闘でベースアップ(ベア)がこれだけ焦点になるのは実に久しぶりのことだ。経団連は政労使会議を踏まえて業績好調な加盟企業に賃上げを要請し、今春闘の基本方針にベアの容認を盛り込んだ。定期昇給の見直しすら示唆した昨年の春闘から180度の転換だ。労働者側には願ってもない追い風である。しかし、手放しで喜ぶわけにはいかない。蚊帳の外に置かれている非正規雇用の問題など改善しなければならない課題は山積している。

賃金が増えるといっても、定期昇給は年齢や勤続年数に従って自動的に賃金が上がる「賃金カーブ」など個別賃金の上昇を指す。ベアは賃金カーブを書き換えて従業員全員の賃金を上昇させることだ。経済が右肩上がりの時代の春闘はベアをめぐる攻防が主だったが、低成長とともに労組は守勢に立たされ、ベアどころか定期昇給を守るのが精いっぱいの状況だった。非正規雇用を含めた雇用労働者全体の賃金は1990年代後半から下がり続けてきた。

今春闘で大企業を中心にベアが実施され、それが地方の中小企業へと広がり、非正規雇用労働者の賃上げや待遇改善につながるのであれば大歓迎だ。しかし、現実には業績が改善しているとはいえ、人員削減や業務の統合などの合理化による効果や円安による影響という要素が強く、販売数量が伸びて収益が増えるところにまでは至っていない企業もまだ多い。

ベアの対象となる基本給は業績が悪化しても払い続けなければならず、退職金にも影響する。収益が増えていく見通しがないと、ベアの対象にならない非正規雇用を増やして人件費の総枠の中でコストを調整しようとするだろう。最近の失業率は4.0%程度と低いが、増えているのは非正規雇用で、正社員はむしろ減っている。安倍政権は企業に賃上げを求める一方で雇用の規制緩和を検討しており、非正規雇用がさらに拡大する可能性もある。

雇用の流動性を高め、産業の活性化や労働力の質の向上を図ることは必要だが、一方で若年層を中心にした非正規雇用の低賃金と生活不安の改善は急務だ。消費の拡大につながらないだけでなく、結婚や子育てをあきらめる若者が増えると少子化が進み、社会保障の支え手が先細りしていくばかりだ。

連合の組合員数は最盛期(94年)には782万人だったが、現在は670万人。非正規雇用は2000万人を超え、全雇用者の4割弱を占めるまでになった。正社員のベアだけでなく、非正規雇用も含めて賃上げの裾野を広げることが何よりも必要なのだ。

産経新聞 2014年01月16日

経団連ベア容認 継続させ好循環の実現を

経団連が今春闘に向けて、賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)を6年ぶりに容認する交渉方針を打ち出した。

業績が向上した加盟企業にベアを含む賃上げを促し、安倍晋三首相が強調する「経済の好循環」の実現につなげる狙いである。経済界の前向きな姿勢を歓迎したい。

4月の消費税増税で景気の腰折れが懸念される中での賃上げは、個人消費を下支えする効果も期待できよう。支払い余力がある企業は積極的に取り組んで、日本経済最大の課題であるデフレ脱却に貢献してもらいたい。

経団連がまとめた方針は業績好調な企業について、「ここ数年と異なる手法も選択肢だ」とし、賞与・一時金だけでなく、ベアも認める考えを示した。

政府と経済、労働界は昨年12月に賃上げへの取り組みで合意し、連合は春闘でベアを含め1%以上の賃上げを求める方針だ。個別企業の交渉は今月末にも始まる。

ここ数年の春闘で経営側は、業績好調時は賞与などで還元する姿勢を維持してきた。基本給を一律で上げるベアを実施すると、人件費の増加が固定化し、不況時に経営を圧迫しかねないからだ。

だが、業績に応じて変動するボーナスが増えるだけでは、個人消費の浮揚効果も一時的になりかねない。毎月支払われる給与が着実に増えていけば、先行きも見通せるようになり、住宅のほか、自動車や家具など耐久消費財の購入にもつながりやすい。

円高是正などで輸出企業を中心に業績は大きく改善している。そうした企業は、ベア実施などで賃金水準を引き上げて、個人消費の活性化につなげてほしい。

デフレ脱却を目指すうえで大事なのは、賃上げ機運を一時的なものにしてはならないことだ。そして、企業が来年以降も継続して賃上げしていくためには、安定した収益増が欠かせない。

日本企業の手元資金は今、過去最高水準にある。豊富な資金を賃金配分に加え、新規事業への設備投資などにも振り向けるときだろう。まさに、創意工夫による「攻めの経営」が問われている。

政府の役割も大きい。企業の活躍の場を広げるような規制改革など、実効性のある成長戦略を打ち出さなければならない。自律的な経済成長を目指して、官民が足並みをそろえることが必要だ。

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