榊原経団連 民間主導の再生が責務だ

読売新聞 2014年01月15日

経団連次期会長 産業再生の実現へ責任は重い

財界トップに課せられる責任は重い。

日本経済の主役である企業をしっかり束ね、本格成長の実現に貢献しなければならない。

経団連の米倉弘昌会長の後任に、元経団連副会長で東レ会長の榊原定征氏が内定した。6月に就任する。人選は難航し、経団連の役職を離れたOBから初めての会長起用となる。

米倉会長は、「イノベーション(技術革新)を最も重視する経営者で、次期会長にふさわしい」と述べた。製造業の出身者にこだわった米倉会長の意向が強く働いたと言えよう。

榊原氏は記者団に「日本経済再生に全身全霊で頑張りたい」と語った。守勢に立つ日本産業の活性化へ、先頭に立ってほしい。

東レの社長時代、榊原氏は航空機などに使う炭素繊維の事業を世界トップのシェア(占有率)に押し上げ、新素材のグローバル企業へと再生させた。

ただ、東芝やトヨタ自動車など経団連会長を輩出する常連企業に比べ、東レの企業規模が“小粒”である点は否めない。

すそ野の広い産業界に目配りして、全体の利益を考えた財界運営を心がけるべきだろう。

榊原氏は安倍政権の産業競争力会議で民間議員を務め、技術革新などで積極的に提案する論客としても知られる。経団連の政策提言の充実が求められる。

米倉会長が安倍首相の経済政策を批判し、経団連と政権の関係は当初、ぎくしゃくした。榊原氏は首相とのパイプを生かし、関係改善に努める必要がある。

資源の乏しい日本では、引き続き輸出が成長のエンジンだが、製造業が国内経済に占める比率が低下しているのも事実である。

情報通信やサービスなど、内需型産業の生産性向上が、持続的な成長実現のカギとなる。医療や介護など、少子高齢化時代に即したサービス産業の発展も重要だ。

安倍政権の成長戦略では、既存の産業に恩恵のある規制や税制優遇を見直すことが大きな課題である。経団連は政府と連携し、新たなビジネスの育成に積極的に取り組んでもらいたい。

製造業を中心とした産業振興を担ってきた経団連自身が変わらないと、その存在意義が厳しく問われるに違いない。

榊原氏は、東レ社員に危機感と意識改革の重要性を唱え、経営を推進してきた。今度は財界を変革させるため、リーダーシップを発揮する番である。

産経新聞 2014年01月15日

榊原経団連 民間主導の再生が責務だ

経済界を代表する新しい顔が決まった。経団連の会長に東レの榊原定征会長が6月に就任する。最大の責務は、民間主導の経済再生を牽引(けんいん)することである。

安倍晋三政権下で景気が回復してきたとはいえ、まだ盤石ではない。消費税増税後に正念場を迎える。今こそ民間が底力をみせるときであり、「日本経済を再興するのは国民的課題」と語る榊原氏の手腕にかかる責任は大きい。

鍵を握るアベノミクス「第3の矢」の成長戦略では、規制緩和や税制の改革が欠かせない。特定業界を守る既得権益に切り込む局面も出てくる。榊原氏には、産業構造の変化を見据え、日本企業が真に競争力を高められるよう、改革を先導してもらいたい。

榊原氏の起用は、製造業の経営者にこだわりをみせた米倉弘昌会長の意向を受けたものだ。ものづくりは今も日本経済の屋台骨である。その復権は経済の再生に欠かせない。東レで炭素繊維事業を成長分野に育てた榊原氏の経験は存分に生かせるはずだ。

ただ、製造業の立場ばかりで政府にモノを言うようでは困る。日本経済はIT分野やサービス業など幅広い産業に支えられており、医療や環境など新たな成長分野と期待される産業も多い。これらに目配りし、政策を提言することが大切なのは当然だ。

榊原氏には政府と円滑に対話しながら、懸案解決を働きかける行動力と会員企業をまとめ上げる強い指導力が何よりも求められる。産業界が自ら賃上げできるよう収益増につながる経営改革を主導しなくてはならない。

政治の動きに経済界が翻弄されるべきではなく、言うべきことは言わねばならないが、経済再生のために政治との健全な関係は欠かせない。榊原氏は産業競争力会議の民間議員を務めており、政治との関係を再構築することにも期待したい。

かつて「財界総本山」と言われ、国政との強いパイプを誇った経団連の存在感の低下が指摘されて久しい。経済の国際化が進み、産業構造も多様化する現状では、かつてのような経団連の影響力は望むべくもなく、また旧態依然とした組織のままでいいわけはない。榊原氏には、時代の変化に柔軟に対応し、自ら決定できる財界像を打ち出してもらいたい。

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