安倍晋三首相がアフリカ3カ国を歴訪中だ。
アフリカとは、現地の自立を促す日本流の進出で、「共存共栄」の関係を築いていきたい。
アフリカ進出で先行する中国の労働力も本国から投入するなどして資源を囲い込み、現地に雇用創出や技術移転をもたらさない手法は、「新植民地主義」とそしられてもいる。安倍首相には、中国とは異なる外交に踏み出してもらいたい。
首相は中東のオマーンを経てコートジボワール、モザンビーク、エチオピアの順に訪れている。
5年に1度、日本で開催されるアフリカ開発会議(TICAD)では昨年、アフリカ39カ国の首脳が来日した。日本への期待がいかに大きいかを物語っている。
会議で培った信頼関係を発展させる意味でも、日本の首相としては8年ぶりとなる今回の本格的な現地歴訪を評価したい。
アフリカは今世紀に入り、豊富な天然資源を背景に著しい経済成長をみせている。その地域との関係を強めることは、日本の経済成長のためにも欠かせない。
首相歴訪の大きな狙いのひとつはビジネスにあり、インフラ受注などを見込んで、日本企業約30社のトップが同行している。
ただし、進出は、日本側の経済的利益だけでなく、働く場の確保や技術の向上など現地の利益につながるものであってほしい。
アフリカでは紛争やテロがやまない。恒常的な貧困がその温床ともなっている。
日本の経済進出や開発支援で雇用機会が増えて貧困が削減されれば、現状への不満から暴力に走る若者も少なくなる。社会が安定すれば、進出企業も安心して活動できるという好循環が生まれる。
TICADで表明した3万人の産業人材育成など、人づくりは日本がなし得る大きな支援のひとつだ。首相は歴訪で女性の職業訓練など教育面での協力を表明する。企業進出とセットで、アフリカ諸国の自立に役立てたい。
安倍首相は、エチオピアの首都アディスアベバにあるアフリカ連合(AU)本部で歴訪を締めくくる演説を行う。その本部ビルは、中国が巨額のカネに加えてヒトも自国から持ち込むという「中国方式」で建設したものだ。
首相には演説で、それとは違い相互利益を目指す「日本流」を地域にアピールしてほしい。
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