成人の日 堅実さと柔軟な発想求めたい

毎日新聞 2014年01月13日

成人の日 「いいね」だけでいい?

「成人の日」を迎えた若人たちを祝福したい。昨年中に20歳になった新成人は計121万人。前年より1万人減って過去最低を更新した。総人口に占める割合は4年連続で1%を切った。

就職難は相変わらずで、閉塞(へいそく)感を感じている人もいるだろう。一方で海外への雄飛を思ったり、起業を計画したりと、未来への希望をはぐくんでいる人もいるはずだ。

20歳の若者たちが生まれた1990年代前半はすでにバブル経済が破綻し、就職氷河期が始まっていた。成長とともに携帯電話が普及し、やがてネット社会が到来する。

今や多くの若者にとって、ネットに接することは日常の習慣だろう。しかし、メディアというものには、冷静にうまく付き合うことが求められる。得られる情報がどこまで信用できるか、絶えず点検し、検証することが必要だ。

また、自分の関心のあることにアクセスするだけでなく、さまざまな見方に接してこそ、真実が浮き彫りになるはずだ。興味をひかれたものに「いいね!」を押すだけでは、狭い枠組みで物事を考えることになりかねないのではないか。

和合亮一(わごうりょういち)さんという詩人がいる。福島市在住で県立高校の教諭。東日本大震災発生直後から、ツイッターで詩を発信し続けて注目を集めた。原発事故に苦しみ、切羽詰まった言葉が並ぶ中、2011年4月9日の記述が目をひく。

海辺で見たこともない新種のチョウが群れを成して空を舞っていた。巨大なカレイが捕らえられた。まっすぐに歩くたくさんのカニを見た。そんな放射能にまつわるうわさ話を列挙した後、こんなふうに書く。

<私たちは噂(うわさ)話の中を、追われている、息を殺して嵐の中を、追われている、不条理な日本>(徳間書店「詩の礫(つぶて)」から)

悲惨な事故の直後、日本中を奇妙なうわさ話が飛び交った。限られた情報しか得られない不安は、私たちの多くが経験したことだ。

現代の日本には情報があふれているように見える。でも、受け身で待っていたり、関心のあるものにしか接しなかったりすると、情報の少ない狭い場所に自分を追い込んでしまう。それでは判断を誤りかねない。

視野を広げることが大切だ。東京だけでなく、地方からの視点も頭に入れよう。一方で、思考をグローバルに世界に広げよう。歴史を見つめることも必要だ。現代は過去の積み重ねの結果なのだから。

限られた情報に短絡的に反応していると、思考までやせてくる。逆に、多様な価値に接することは、人生を豊かにするきっかけになる。

読売新聞 2014年01月13日

成人の日 堅実さと柔軟な発想求めたい

きょうは成人の日。121万人の新成人の門出を祝いたい。

大人としての自覚を胸に刻み、力強い一歩を踏み出してほしい。

新成人が生まれた1993年には、55年の保守合同以来続いた自民党政権に代わって、非自民の連立政権が誕生した。皇太子さまと雅子さまのご成婚もあった。

この若者たちが育った時期は、バブル経済が崩壊して、日本経済が低迷を続けた「失われた20年」とほぼ重なる。小学校から高校までは、いわゆる「ゆとり教育」を受け、学力低下の懸念も指摘されてきた。

物心がついた頃にはネットや携帯電話が既に登場しており、情報化時代のスキルを子供のうちから身に着けた世代でもある。

セイコーホールディングス社は毎年、新成人に対してアンケート調査を行っているが、それによると、今年の新成人は「堅実志向型」なのだという。

大切にしたいものとして「お金」、増やしたい時間として「勉強」を挙げた人が最も多かった。そうした堅実さはもちろん大切だが、新成人には、柔軟な発想とチャレンジ精神も求めたい。

例えば、現在21歳の大関綾さんは、高校2年生の時に、起業のために()めていた30万円を資本金として、東京都内にファッションの会社を設立した。「若い時の感性を生かせるうちに、起業したいと考えた」と話す。

社会で活躍するビジネスウーマンのために、誰もが思いつかなかった女性用のネクタイを考案し、大ヒットとなった。男性ネクタイでも、装着しやすいユニークな革製の商品を開発した。

政府も、補助金などによって、若者の起業を支援する体制を整えつつある。大関さんのような若い起業家が、新成人の中からも次々と出てくることを期待したい。

日本の企業は、国内だけでなく海外からも、これまで以上の激しい競争にさらされている。会社員なら、会社を引っ張る気概を持って、自分自身の考えをはっきりと主張していくことが重要だ。

社会人であれ、学生であれ、しっかりと目標を立て、それに向かって自らを磨いてほしい。

新成人が50歳になる頃には、少子高齢化が一層進んで、現役世代1人の負担で高齢者1人の暮らしをまかなう「肩車型」の社会が到来するという。

時代の荒波を乗り越えて、豊かな日本を築き、未来を支えていくのは、若い力である。

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