再処理工場申請 核燃政策の限界認めよ

毎日新聞 2014年01月08日

再処理工場申請 核燃政策の限界認めよ

日本は、使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを再び燃やす核燃料サイクルを国策としてきた。その要となる再処理工場(青森県六ケ所村)などについて、日本原燃が新規制基準に基づく安全審査を原子力規制委員会に申請した。今年10月の工場完成を目指すという。

政府も、今月閣議決定される新たなエネルギー基本計画素案で、核燃料サイクルを「着実に推進する」とし、稼働を後押ししている。

しかし、安全性、経済性、核不拡散、いずれの観点からも核燃料サイクルには問題がある。脱原発依存を進めるなら必要ない。政府は核燃料サイクル政策に幕を引き、再処理工場も稼働させるべきでない。

再処理工場は1993年に着工された。97年に完成予定だったが、トラブルが重なり、完成時期は20回も延期された。当初見込んでいた約7600億円の建設費も約2兆2000億円に膨らんでいる。

大量の放射性物質を扱うため、新規制基準は原発と同レベルの地震・津波対策や過酷事故対策、テロへの備えを義務付けた。原燃は追加対策費を約300億円と試算する。

再処理工場など原子力施設が集中立地する下北半島の沖には「大陸棚外縁断層」(延長85キロ)が南北に走る。原燃などは断層の活動性を否定しているが、規制委は独自に下北半島の地下構造を調査中で、更なる対策を求められる可能性もある。

稼働にこぎつけても、取り出したプルトニウムを燃やすあてがない。

プルトニウムを燃やす高速増殖原型炉「もんじゅ」は、機器の点検漏れが発覚し、規制委から運転再開準備が禁止されたままだ。通常の原発で燃やすプルサーマル計画も、現状では見通せない。

核兵器の材料となるプルトニウムをためこむばかりでは、国際社会の懸念を招く。テロの脅威も増す。

核燃料サイクルの経済性にも疑問がある。原子力委員会の小委員会は一昨年、使用済み燃料の全量直接処分が全量再処理や再処理・直接処分併用よりも安上がりだと評価した。

核燃料サイクルを放棄すると、再処理を前提に使用済み核燃料を受け入れてきた青森県の反発が予想される。当然だ。国が前面に立って、関係自治体や国民に説明を尽くし、解決策を探るしかない。

日本では使用済み核燃料の多くがプールで貯蔵されているが、空冷式の金属容器に入れて保管する「乾式貯蔵」はより安全性が高い。最終処分までのつなぎとなり得る。

核廃棄物を原発立地地域任せにせず、原発の受益者である電力消費地も一定の負担をする必要があるのではないか。そんな議論も深めたい。

読売新聞 2014年01月11日

核燃料サイクル 公正な審査で前に進めたい

日本のエネルギー安全保障上、極めて重要な施設である。科学的かつ公正に、安全確認の作業を進めねばならない。

日本原燃が、使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ヶ所村)と、関連する3施設について、安全審査を原子力規制委員会に申請した。

再処理工場は、核燃料サイクルの中核となる施設である。使用済み核燃料を分解し、燃料として使えるウランやプルトニウムを取り出す巨大な化学プラントだ。

高温高圧になる設備はほとんどなく、運転中に事態が急激に悪化して放射能が大量放出される事故のリスクは原子力発電所よりも低い、と考えられている。

一方で、大量の放射性物質を貯蔵しているため、大規模火災などで放射能の封じ込め機能が損なわれると、被害は甚大になる。

規制委は、こうした再処理工場の特性に十分留意して、安全審査に臨むことが肝要である。

原燃は東日本大震災を踏まえて地震対策を強化し、想定地震の規模を引き上げた。換気設備なども補強する。自然災害やテロへの備えは十分か。規制委として、しっかりと見極めてもらいたい。

エネルギー資源に乏しい日本にとって原発の役割は大きい。今後も一定程度を活用し、電力の安定供給を図らねばならない。

そのためにも、核燃料サイクルは有意義な政策である。使用済み核燃料を直接廃棄するより、ウラン資源の有効利用につながる。放射性廃棄物の量も減らせる。

日本は1960年代から核燃料サイクルの研究を始め、技術の蓄積がある。国際的にも、核兵器を持たない国として唯一、プルトニウム利用を認められている。

こうした実績を軽んじ、民主党政権は、再処理工場の廃止を検討した。核燃料サイクル実現に協力してきた青森県などがこれに強く反発し、継続となった。

安倍首相は昨年5月に参院予算委員会で、「わが国は世界でも高い技術を有しており、世界各国と連携して取り組んでいく」と核燃料サイクルの活用を明言した。

政府は近くまとめるエネルギー基本計画に、核燃料サイクルを含む原子力政策を明確に位置づけ、着実に進める必要がある。

一定数の原発が再稼働しないと、再処理で作った燃料の使い道はない。核兵器の材料にもなり得るプルトニウムをため込めば、国際的にも批判を浴びかねない。

規制委は、大幅に遅れている原発の安全審査を加速すべきだ。

産経新聞 2014年01月14日

核燃再処理工場 理に適った安全審査急げ

日本原燃が、青森県六ケ所村に立地する再処理工場など4施設の安全審査を原子力規制委員会に申請した。

原発で使い終えた燃料からプルトニウムとまだ使えるウランを回収する再処理工場は、日本の原子力政策の基盤をなす核燃料サイクルの中心的な存在だ。

規制委には、効率的で偏りのない審査を期待したい。再処理工場の早期操業開始を通じて、日本のエネルギー安全保障の長期展望を開くことが必要だ。

審査での焦点の一つとして注目されるのが、下北半島の太平洋側沖の海底を南北約80キロにわたって走る大陸棚外縁断層だ。

原燃は、これまでの調査結果に基づいて大陸棚外縁断層は、活断層ではないと説明している。だが、下北半島そのものの構造に関心を持つ研究者の間には活断層と見る向きもあり、規制委も独自の調査を計画している。

陸の断層ならトレンチ(調査用の溝)を掘ることで判定の手がかりが得られるが、海底なのでそうはいかない。審査を長引かせることなく、間違いのない結論に達するためには、検討に当たる専門家を幅広い学問領域からバランスよく選任することが必要だ。

規制委は、原発で実施している活断層調査において、建設当時の評価に関わった経験を持つ専門家を排除しているが、これは改めるべきである。

再処理工場の敷地内に存在する断層の評価についても、改善が望まれる。海外の専門家による調査結果も第三者の見解として尊重すべきであろう。規制委の独立性は大切だが、科学に立脚した検討の場での鎖国状態は不健全だ。

日本の原子力利用は、国策民営の形で進められてきた。その典型例ともいえる再処理工場には、着工から約20年という長い開発努力の歴史がある。民間企業の原燃は、再処理工場の建設に2・2兆円という巨費を投じ、昨年5月に最後の難関となっていたガラス固化体の製造にも成功した。

再処理工場は実質的に完成している。海抜55メートルの高さにあるので津波の心配もない。

再処理工場は、持続可能な原子力発電に不可欠の存在だ。理に適(かな)った安全審査を経ての早期操業開始を期待する。現実離れした議論で審査が長期化することなどはあってはならない。

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