高い目標を掲げるだけで、明るい未来は開けない。肝心なのは実現する具体的手法の明示だが、そこが欠けている。
政府は30日の閣議で、新たな成長戦略の基本方針「輝きのある日本へ」を決定した。
国内総生産(GDP)を2020年度まで実質で年2%、名目は3%を上回るペースで成長させる数値目標を掲げた。
名目GDPは今年度の470兆円から650兆円に増える計算だが、現状はここ6四半期連続のマイナスで、50兆円も減った。名目GDPをしぼませるデフレに再び陥ったこともあり、目標達成のハードルは極めて高い。
成長戦略は公共事業依存でも、小泉路線のような市場原理主義でもない、新需要の創造という「第3の道」を進むとしている。「コンクリートから人へ」などの政権公約に沿った考え方だろう。
具体的には、環境・エネルギーと医療・介護を、日本が強みを持つ2分野として集中的にテコ入れし、100兆円の需要と420万人の雇用を新たに生み出す。
高成長が続くアジアとの取引活性化や、科学技術の支援、雇用下支えの強化なども図る。
方向性に問題はないが、具体策は政府が過去10年に出した十指に余る成長戦略と大差ない。
関係府省が持ち寄った案をまとめたため、新味のないアイデアが並んだのだろう。策定作業は約半月と短く、成長戦略がないという批判をかわす「やっつけ仕事」との印象もぬぐえない。
政府は来年6月までに、この基本方針に肉付けをして成長戦略を完成させ、実現に向けた工程表も示す方針という。
だがこの際、民間からアイデアを広く募って、効果や実現性の高いものに絞り込むなど、抜本的に練り直した方がいい。新産業の育成や技術支援に必要な費用をどう工面するのかも示すべきだ。
消費税率を4年間は上げないという政権公約にこだわれば、安定した財源は得られまい。「経済成長で税収が増えれば賄える」とする“上げ潮”依存は禁物だ。
中長期的な財政再建の道筋も同時に示し、社会保障などの将来不安を和らげる必要もある。
景気の底割れを防ぎ、デフレを解消しないと、どんな立派な成長戦略も絵に描いたモチになる。
政府は来年度予算の公共事業を前年度より2割近く減らし、小中学校の耐震化など急ぐべき事業も削った。これらを復活して、景気回復に役立てるべきだ。
この記事へのコメントはありません。