ロシア連続テロ ソチ五輪の安全確保が急務だ

毎日新聞 2014年01月08日

ソチ五輪とテロ 大会の安全を最優先に

ソチ冬季五輪の開幕を1カ月後にひかえ、ロシアが厳戒態勢を敷いている。ソチから約700キロ北東のボルゴグラードで昨年末、2日続けて自爆テロ事件があり、30人以上が死亡した。プーチン大統領は事件直後の元日に現地入りし、負傷者を見舞い、テロ対策の徹底を指示した。

ソチ五輪は、プーチン政権が威信をかけた国家事業だ。ロシアでの五輪はソ連時代の1980年モスクワ大会以来。この時は前年のソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議して日米など西側諸国が参加をボイコットした。いわば完全な形で五輪がロシアで開かれるのは今回が初めてになる。プーチン氏は2007年、中米グアテマラでの国際オリンピック委員会(IOC)総会に乗り込み、公の場で初めて英語とフランス語で招致演説をして開催権を獲得した。

治安面の懸念は当時から指摘されていた。ソチに近いロシア南部カフカス地方を拠点とするイスラム武装勢力がプーチン政権を敵視し、学校占拠などのテロ事件を起こしていたからだ。その後もモスクワの地下鉄や空港で爆弾テロ事件が相次いだ。

その源流はチェチェン共和国の独立派勢力にさかのぼる。政権は武力と経済的な見返りで独立運動を抑え込んだが、イスラム過激思想に染まった一部の分派勢力が「カフカス首長国」樹立を叫んでテロを続けてきた。ソチ五輪粉砕も目標の一つだ。問題の根本的解決には若者らを過激思想に走らせない経済・社会政策の徹底が必要だが、いかなる理由もテロを正当化できるものではない。

プーチン政権にとって、ソチ五輪は国際社会に「大国ロシア」の台頭を印象づける狙いがある。開会式に安倍晋三首相ら各国首脳を招待したのも、そうした政治的思惑からだ。だが米欧は、ロシアで同性愛を未成年者に「宣伝」することを禁止する法律が制定されたことから、人権問題を理由に相次いで首脳級の開会式への出席見送りを決めた。これに対しプーチン氏は、同性愛者を差別するものではないと反論。昨年12月には、欧米が政治的理由による有罪判決だと批判してきた服役中の元石油会社社長を憲法制定20周年の恩赦として釈放した。何としてもソチ五輪にケチをつけたくないという政権の強い意思が感じられる。

米欧首脳の欠席の背景には、プーチン氏の強権的な政治手法への反発もあるかもしれない。しかし、それはプーチン氏が五輪の政治利用を考えたことの裏返しでもある。政治的思惑は本来、平和とスポーツの祭典である五輪の精神とは相いれないものだ。優先すべきは参加する選手らが安全に競技に打ち込める舞台作りである。

読売新聞 2014年01月07日

ロシア連続テロ ソチ五輪の安全確保が急務だ

ロシア政府は、開幕が1か月後に迫ったソチ冬季五輪の安全確保に万全を期してもらいたい。

黒海沿岸のソチから北東約700キロに位置する大都市ボルゴグラードで先月末、鉄道駅やトロリーバスを狙った自爆テロが2日連続で発生し、計30人以上が死亡した。

ソチに隣接する北カフカス地方にあるダゲスタン共和国でもテロが相次ぎ、数人の死者が出た。

一連の無差別テロは、イスラム過激派の犯行とみられている。中でも、イスラム教徒が多い北カフカスの独立とイスラム国家樹立を主張して、テロによるソチ五輪妨害を表明した武装組織が関与した可能性が指摘されている。

憂慮すべき事態である。犯行目的が何であれ、テロは決して許されない。

ただ、プーチン露大統領の強権的な政治姿勢が、イスラム教徒らの反発を増幅させている側面も否定できない。政権の意に沿わない少数派やメディア、政治勢力を力で抑圧してきたからだ。

米独仏などの首脳が、人権問題を理由に、ソチ五輪開会式への出席を見送ることにしたのは、やむを得ないのではないか。

当面は、世界中のアスリートや政府要人、観客らが集う五輪をテロから守ることが急務である。

ソチ周辺では既に、警察や軍による厳戒態勢が敷かれているが、一層の警戒が必要だ。

モスクワなど他の地域が狙われる可能性もある。ロシア全土でテロ対策を強化してほしい。

プーチン氏はテロ発生後、「テロリストを完全に壊滅させるまで徹底した戦いを続ける」と述べた。不安定な北カフカス近くで五輪を成功させ、地域の安定を内外に誇示する意図もあるようだ。

ロシア当局は昨年、北カフカスなどで過激派260人を殺害したと発表した。さらに激しいテロ掃討作戦が行われるのは確実だ。

だが、武力だけでテロを終息させることは難しく、根本的な問題解決にはつながるまい。

プーチン政権は、北カフカスにあるチェチェン共和国のイスラム武装勢力を軍事力で制圧した。その際、攻撃を逃れた残党がダゲスタンなどで活動を続けている。

地域の長期的安定には、貧しい北カフカスの住民生活を向上させ、テロの温床にならないようにすることが肝要である。

ソチでは今年6月、主要8か国(G8)首脳会議も開かれる。治安の維持に、プーチン政権の威信がかかっていると言えよう。

産経新聞 2014年01月08日

ソチ五輪1カ月 露の真の国力が問われる

ソチ冬季五輪が1カ月後に開幕する。男女ともフィギュアスケートやスキージャンプなど、日本選手の活躍が楽しみな競技も多い。

一方で、テロ対策に不安があり、会場建設の遅れも指摘されている。五輪を安全かつ円滑に運営することは、開催都市と開催国の責務だ。ロシアには、軍事力だけではない「真の国力」を試されていると強く自覚してもらいたい。

昨年末の12月29、30の両日、ソチから北東へ約700キロの都市ボルゴグラードで連続爆弾テロ事件が発生した。鉄道の駅とトロリーバスを標的にした自爆テロにより、34人が犠牲となった。

一連のテロは、イスラム過激派による犯行とみられ、五輪開催に対する妨害との見方もある。

ソチでは7日から、テロ防止を目的とした治安当局の警備態勢が最高水準に引き上げられ、警察官だけでソチの人口の1割近い約3万7千人がロシア全土から動員されるという。

テロは絶対に容認できない卑劣な行為だとはいえ、一方でロシア政府のイスラム勢力に対する強圧的な姿勢や、人権意識、貧困対策の欠如が招いた結果であることも否定できない。弾圧だけで、治安を維持することはできない。

また、ロシアが昨年制定した同性愛宣伝禁止法をめぐる人権問題を背景に、米国やドイツ、フランスの首脳が開会式への欠席を決めた。五輪が国の政策によって揺さぶられている格好だ。

1980年のモスクワ夏季五輪では、前年の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議し、米国、日本など多くの国が大会参加をボイコットした。

34年ぶり2度目の開催となるソチ五輪を成功させることは、ロシアにとっても真に世界の仲間入りを果たす悲願であるはずだ。

テロ対策や人権問題に加え、宿泊施設の一部はいまだに完工していない。プーチン大統領は年始の連休を返上して現地入りし、厳しい表情で警備や最終の準備作業を視察した。この期に及んで、その効果はいかばかりか。

6年後に東京五輪の開催を控える日本にとっても、人ごとではない。治安の態勢を整え、施設を充実させるには、6年は長いようで短い。東京を、日本を選んでよかったと世界に歓迎されるよう、速やかに準備を進めてほしい。

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