首相年頭会見 「好循環」を看板倒れにするな

毎日新聞 2014年01月07日

首相年頭会見 丁寧に政治進める年に

安倍晋三首相が年頭にあたり記者会見を行うなど、2014年の政治が始動した。首相は経済は回復軌道にあるとの認識を強調、悪化している中韓両国との関係修復に向け、首脳会談実現に意欲を示した。

安倍政権が安定感を増していくためには近隣外交の立て直しと、国会で強引な手法を取らず野党との合意形成に努める二つの要素が欠かせない。丁寧な政権運営を求めたい。

「この春こそ景気回復の実感を収入アップという形で国民に届けたい」。会見で首相は春の消費増税を見据え、デフレ脱却に取り組む姿勢を示した。政権の浮揚力は景気動向にかかる。経済重視は理解できる。

だが、昨今の政権運営は本当に首相が優先順位をそこに置いているのか、首をかしげざるを得ない場面も多かった。「成長戦略実行国会」と銘打ったはずのさきの臨時国会で首相は問題の多い特定秘密保護法の成立を強行した。

年末も南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する韓国軍への陸上自衛隊からの弾薬提供や、首相が政権発足1周年にあたり靖国神社を参拝するなど重大な動きがあった。弾薬提供は武器輸出三原則を骨抜きにしかねない判断だが、国民に十分な説明は行われないままだ。靖国参拝は中韓両国の反発に加え、首相の歴史認識が問われ日米関係の土台すら損ないかねない。通常国会を待たず外交・安保をテーマに国会で閉会中審査が行われるべき局面だ。

首相は中韓両国首脳との会談に意欲を示す一方で、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が「十分な準備」が必要と指摘したことについて、前提条件を設けるべきでないとも主張した。関係改善をどう進めるか、日中韓3国が真剣に外交努力を傾注すべき時だ。

気になったのは、首相から政治の進め方に関する発言があまり聞かれなかった点だ。さきの国会で与党が数まかせの強硬手段に訴えた傷は深い。正常な運営に努める姿勢を与党が示さないと、首相が「好循環実現国会」と名付けた次期国会で「異常国会」が繰り返されかねない。

安倍内閣がどんなスケジュールで施策を実現しようとしているか、より具体的なメッセージも聞きたかった。さきの国会の所信表明演説でふれなかった特定秘密保護法をいきなり成立させるような手法では、説明責任にもとるというものだ。

とりわけ「国民的な議論をさらに深めていくべきだ」と首相が改めて強調した憲法改正や憲法解釈変更に具体的にどうのぞむのかは、極めて重い要素だ。腰を据え近隣外交を立て直し、着実に改革の成果を上げるためにも、慎重に対応すべきだ。優先順位を誤ってはならない。

読売新聞 2014年01月07日

首相年頭会見 「好循環」を看板倒れにするな

4月の消費税率引き上げを克服し、経済再生を実現できるか、結果が問われる1年となろう。

安倍首相は、三重県伊勢市で年頭の記者会見を行い、デフレ脱却に最優先で取り組む決意を表明した。「景気回復の実感を収入アップという形で国民に届けたい」と強調した。

消費増税に伴う景気腰折れを防ぎ、デフレから抜け出すには、業績好調な企業が賃上げして個人消費を伸ばし、それを企業の収益増に結びつけるという経済の好循環を実現することが欠かせない。

首相は、通常国会を「好循環実現国会」と位置づけたが、看板倒れにしてはなるまい。

まず、約5・5兆円の経済対策を盛り込んだ2013年度補正予算案と、14年度の大型予算案、税制改正関連法案の早期成立を図る必要がある。

首相はまた、今年半ばの成長戦略改訂を目指し、雇用、人材、農業、医療、介護を中心に規制改革を進める意向も明らかにした。

アベノミクスの第3の矢である成長戦略は物足りない。岩盤のような規制の打破に踏み込み、成長に弾みをつけてもらいたい。

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で自民党がコメ、麦など重要5項目の関税を聖域扱いにするよう要求している点について、首相は「最終的な着地点をどう見いだすか。知恵を出して大局的な判断をする」と語った。

日米の溝が深く、昨年中の合意は見送られた。政府は、事態の打開策を探るべきだ。

首相は、運転停止中の原子力発電所について、「厳格な新安全基準を乗り越えた原発の再稼働を判断していく」と述べた。安全性を確認できた原発については再稼働を進める意向なのだろう。

原発を代替する火力発電の燃料費増で、電気料金が値上がりし、企業活動や家庭に悪影響を及ぼしている。首相は再稼働の必要性について丁寧に説明し、地元の理解を得なければならない。

首相の靖国神社参拝について、中国、韓国は反発を強めている。米国も参拝に「失望」を表明した。これに関し、首相は、中韓両国に対し「私の真意を、直接、誠意をもって説明したい」と述べるにとどめた。

首相は中韓との関係改善を探るとともに、日米同盟が揺らがぬよう手立てを講じるべきだ。

集団的自衛権の憲法解釈変更や憲法改正に向けて、国民的議論を深める意向も表明した。着実に前へ進めていくことが肝要だ。

産経新聞 2014年01月07日

首相会見と靖国 「参拝の真意」米に説明を 揺るがぬ同盟へ総力挙げよ

安倍晋三首相が伊勢神宮参拝後の記者会見で、昨年暮れの靖国神社参拝に反発する中韓両国に対して「私の真意を直接、誠意をもって説明したい」と述べ、首脳会談の開催を呼びかけた。

首相は開催に前提条件を付けず、首脳同士が胸襟を開いて話し合う重要性も強調した。

両国首脳との会談を「地域の平和と安定に極めて重要」と首相が位置付けているのは当然であり、首相が引き続き「対話のドアは開かれている」との姿勢をとっているのも妥当といえよう。

≪慰霊への相互理解必要≫

指摘しておきたいのは、靖国をめぐる中韓両国の反発などの動きに対応する上でも、同盟国である米国との意思疎通を綿密に図っておくことが欠かせないことだ。

安倍政権はさまざまな機会を通じ、靖国参拝の真意について米国への説明を重ね、この問題をいくら中韓が外交カードに使おうとしても、同盟は揺るがないことを内外に示してほしい。

安倍首相の靖国参拝に対し、米国務省と駐日大使館は「失望感」を表明した。これは小泉純一郎首相(当時)が参拝を繰り返した際には示されなかったことだ。

中国が経済的、軍事的により台頭していることを背景に、オバマ政権が北東アジア地域の緊張が増すことを懸念しているものとも受け止められる。

これをとらえ、首相の靖国参拝をめぐり日本が国際的に孤立しているかのような主張もあるが、日米同盟は強固だ。だが、同盟関係にヒビが入っていると誤解されるような状態は望ましくない。

小野寺五典防衛相がヘーゲル米国防長官との電話会談で、首相の靖国参拝について「不戦の誓いが本意だ」などと説明したのは妥当である。

首相の行為は、国の指導者が国のために戦死した人に哀悼の誠をささげるものにほかならない。

国家安全保障会議(NSC)の国家安全保障局長に就任する谷内正太郎氏は今月中の訪米を予定している。そうした機会を通じて、どの国も大切にしている戦死者への慰霊についての相互理解も深めてもらいたい。

同時に、世界の常識といえる行為に対し、干渉を繰り返しているのは常に中韓両国であることも明確に伝えなければならない。

中国の王毅外相は昨年末、米国、韓国、ロシア、ドイツなどの外相と相次いで電話会談し、安倍首相の靖国参拝を議題にした。

また、訪米中の尹炳世韓国外相は靖国問題を念頭に「韓日両国だけでなく、国際社会が憂慮する問題になった」と語った。

中国は欧州各国の同調も引き出し、日本批判の拡大を図っているようだ。

≪辛抱強く中韓の説得を≫

こうした動きへの日本政府の対応は、けっして十分とは言えない。米国政府関係者だけでなく、米国内世論、さらに国際社会に対しても、ことあるごとに日本の立場を示すことが重要である。首相を先頭に、日本外交の総力を挙げて取り組む課題といえる。

北東アジアの平和と繁栄には、日米両国の安全保障協力や、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を含む経済関係の強化が極めて重要である。安倍政権は米国とともに課題に取り組んでいることを改めて確認したい。

一方、韓国の朴槿恵大統領も年頭会見を行い、「両国の協力関係の環境を壊す言動が繰り返され、非常に残念に思う」と、靖国参拝など日本側の動向をあらためて批判した。

朴大統領は日本について「重要な国」とも述べたが、核やミサイルの開発をやめない北朝鮮に対処するためには、日韓が米国と緊密に連携していかなければならないという安全保障上の共通の課題を負っている。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、首相の靖国参拝を「評価しない」とする人が53%で「評価する」(38%)を上回った。半面、中韓両国からの参拝への非難については67%が、米国の「失望感」表明には59%の人がそれぞれ「納得できない」と答えた。

外交面の懸念を払拭するため、首相は対米関係強化と併せ、中韓との首脳会談の機会をつかむ努力を重ねてほしい。中韓両国も考え時ではないか。安倍首相には辛抱強さが求められる。

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